北朝鮮、軍事パレードで新型潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)公開か
北朝鮮の労働新聞は26日、朝鮮人民革命軍(抗日遊撃隊)創建90年を記念する閲兵式(軍事パレード)の写真を掲載した。北朝鮮が保有する過去最大の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星17」のほか、新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)とみられる兵器の写真も公開した。
●新型SLBMか
今回の軍事パレードでは、固体燃料を使用する既存のSLBMの「北極星4」と「北極星5」と比べ、より大きくなった新型のSLBMとみられるミサイルが公開された。
北朝鮮は2020年10月の軍事パレードで「北極星4」、2021年1月の軍事パレードで「北極星5」と相次いでSLBMを公開した。以下の写真にあるように、その2つの既存のSLBMと比べれば、今回の軍事パレードでは、より大型の新たなSLBMが登場し、トレーラーもそれを搭載できるよう荷台が調整されたとみられる。ミサイルの弾頭部も、より前方に迫り出しているように見える。また、ミサイルを固定するトレーラーのベルトの位置を比べてみても、今回登場した新型SLBMが大型化していることが分かる。
ミサイルのペイントも北極星5と北極星4のものとは違っている。ただし、ミサイルそのものが単なるモックアップ(模型)の可能性も残されている。
北朝鮮は2021年1月発表の「国防発展5ヵ年計画」の中で、原子力潜水艦と水中発射核戦略武器の保有を掲げている。
また、北朝鮮は2021年10月の国防発展展覧会「自衛―2021」で、「北極星5」と「北極星1」とともに、小型で新型のSLBMとみられるミサイルを展示した。
●SLBM発射実験
北朝鮮は直近では2021年10月19日に潜水艦から新型SLBMを発射し、実験に成功したと発表した。韓国軍合同参謀本部によると、このSLBMは北朝鮮東部の咸鏡南道・新浦沖の海上から日本海に向けて発射され、高度は約60キロ、飛行距離は約590キロだった。この時に発射されたSLBMは従来よりも短い射程であり、前述の国防発展展覧会で公開された小型の新型SLBMであったとみられている。
この小型SLBMは4月25日の今回の軍事パレートでも登場した。軍事パレードで公開されるのは初めてだ。外形がロシアのイスカンデル-Mシステムから発射される短距離弾道ミサイル9M723とよく似ている。韓国軍は、このミニSLBMが「北朝鮮版イスカンデル」と呼ばれる地上発射型の短距離弾道ミサイルKN23をSLBMに改良したものとの見方を示している。
一方、日本の防衛省は、北朝鮮が2019年10月2日に「北極星3」と称して発射したSLBMは、通常よりも角度をつけて高く撃ち上げる「ロフテッド軌道」で発射され、最高高度は約900キロ 飛翔距離は約450キロに達したと推定。通常の軌道で発射されたならば、射程が約2000キロに及ぶ可能性があるとみている。そして、「(北朝鮮の)SLBMの開発は、発射の兆候把握をより困難にし、奇襲的な攻撃能力を向上させうるもの」(令和3年版防衛白書)として警戒を強めている。
筆者が東京特派員を務めるイギリスの軍事週刊誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」によると、「北極星4」も「北極星5」もいまだ発射実験が行われていない。
●火星17
労働新聞は、11軸22輪の超大型移動式発射台(TEL)に載せられ、25日の軍事パレードに登場した北朝鮮最大のICBM「火星17」の写真も公開した。
北朝鮮は3月24日に火星17を発射し、実験に成功したと主張している。しかし、米韓当局はこの時に発射されたのは、より小型で旧式の既存のICBMの火星15だったと結論付けている。北朝鮮は同月16日に火星17の発射実験に失敗、体制の動揺を防ぐため、24日の実験で火星17を発射して成功したように偽装したと米韓当局はみている。
●極超音速ミサイル「火星8」
今回の軍事パレードでは、極超音速ミサイル「火星8」も登場した。北朝鮮は昨年9月の「火星8」の発射実験に続き、今年1月5日と11日にも新型の極超音速ミサイルを試験発射したと主張している。
●機動式再突入体(MaRV)搭載の弾道ミサイル
25日の軍事パレードでは、円錐形の機動式再突入体(MaRV)を搭載した弾道ミサイルも登場した。このミサイルは昨年10月の国防発展展覧会で初めて公開され、今年1月5、11両日に2度試験発射された。北朝鮮はこのミサイルを「新型の極超音速ミサイル」と主張しているが、韓国軍はMaRVを搭載した液体燃料使用の弾道ミサイルとの見方を示している。北朝鮮はこのミサイルの具体的な名称を明らかにしていない。
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