「痴漢撲滅パッケージ」の令和4年度策定が「女性版骨太の方針2022」に! #NoMoreChikan
2022年6月3日、女性政策に関する政府の重点方針をまとめた「女性活躍・男女共同参画の重点方針2022(女性版骨太の方針2022)」が決定された。
その中に、これまで軽視され、本格的な対策が取られてこなかった、「痴漢対策」が盛り込まれた。
令和3年度には、内閣府による痴漢被害に関する実態調査も行われ、近日中に結果が公表予定となっている。
2021年夏頃から、日本若者協議会では、オンラインで署名を集め(約3万人に賛同頂いている)、内閣府や文部科学省、主要国政政党、そして東京都議会の各会派などに対して、要望(文末)などをおこなってきたが、令和4年度の重点方針に「痴漢撲滅」が入ることになった。
関連記事:痴漢被害多い大江戸線に女性専用車両を導入へ。若者の声が社会を動かす(室橋祐貴)
5月25日には、「痴漢対策」をテーマに、公明党と日本若者協議会で政策要望懇談会を開催し、関連府省庁も交えながら、今後の対策について議論が行われたが、そこでも、内閣府の林伴子・男女共同参画局長から、「(痴漢は)日本の恥であり、なんとしても痴漢撲滅したい」という決意表明があった。
また6月2日の内閣委員会、厚生労働委員会連合審査会では、公明党の竹谷とし子参議院議員が痴漢対策について質問し、「被害に遭いやすい高校生、大学生の声をしっかり聞いた上で、関係省庁と連携して、痴漢を含め、性犯罪、性暴力のない社会の実現に向け取り組んでまいります」と政府が答弁している。
これまで非常に多くの女子生徒が被害に遭いながらも、長年軽視され続け、本格的な対策が取られてこなかった痴漢問題。
しかし実際は、トラウマで電車に乗れなくなったり、精神的な苦痛から学校を休む生徒もいるなど、重い性暴力だ。
都内にある私立・岩倉高校の1年生と2年生の生徒への調査(2022年1月実施)では、コロナ禍で乗客が少なかった時期にも関わらず、女子生徒の26.5%、4人に1人の生徒が痴漢被害に遭っていたことがわかっている。
これを機に、痴漢を撲滅し、痴漢被害ゼロの国に生まれ変わることを期待したい。
痴漢対策に関して公明党と政策要望懇談会を開催しました(日本若者協議会)
一般社団法人日本若者協議会
本気の痴漢対策を求めます!来学期から #NoMoreChikan 要望書
私たちは日本若者協議会のジェンダー政策委員です。日本若者協議会は若い世代の声を政治に届け、若者政策の実現を促す団体です。日本若者協議会のジェンダー委員として私たちはジェンダー問題を解決するために活動しています。その一環として痴漢問題の解決に取り組んでいます。「仕方ない」と言われてきた痴漢を本気で問題解決し、来学期に学校に通う時には痴漢なんてない世の中にしたい!そう考えています。
痴漢は日常に存在する最も身近な性犯罪です。法務省の平成31年度調査における性的事件(過去5年間)被害内容別被害者数を見ると、「痴漢」が最も多い結果となっており、セコム株式会社が行った調査においても女性の犯罪被害のTOP1は「痴漢」となっています。「#WeToo Japan」の調査では、電車や道路などの公共空間で「体を触られる」「体を押し付けられる」などの経験を持つ女性が7割、さらに痴漢被害は若年世代の被害が多い傾向にあります。また、都内にある私立・岩倉高校の1年生と2年生の生徒への調査(2022年1月実施)によると、コロナ禍にも関わらず、女子生徒の26.5%、4人に1人の生徒が痴漢被害に遭っていたことがわかりました。その上、被害に遭った生徒の40%が「誰にも相談しなかった」と回答しています。こうした実態を踏まえると、政府の統計などの被害件数はごく一部であり、実際はもっと多くの被害者がいるものと考えられます。
しかし、このように被害を受けている人、特に若い女性が多いのにも関わらず、具体的な対策があまり行われていません。泣き寝入りをしている被害者が多数いる中、この問題は「仕方ない」の一言で済まされるものではありません。そこで、私たちは以下の具体的対応を求めます。
<体験談>
大学生 女性
私は痴漢にあったことがなかったので今まで痴漢はそこまで問題ではないと思っていました。しかし、高校一年生の時におよそクラスの女子の半分が痴漢被害に遭っていたことを知り、痴漢被害は頻繁に起きていることを知りました。明日の被害者は私かもしれないと思い、インターネットで痴漢の対策などについて調べましたが、具体的な対策としては「痴漢バッジ」しか見つかりませんでした。痴漢は自分の友達の半分も経験したことがある性犯罪なのにも関わらず、具体的な対策がポスターやバッジしかないことに大きな怒りを感じました。もっとできることはあるはずです。安心した交通移動は私たちの守られるべき権利です。
高校生 女性
中学生や高校生が教員に被害を訴えても真剣に対応してくれないことも多くあります。私の友達は、被害にあったことを「恥ずかしいことだ」と考えてしまい、ふざけながらでしか被害を申告できませんでした。しかしそのような態度を取らざるを得ない心情を察せずに「下品なことを言わないの」と男性教員にたしなめられ、対応してもらえていませんでした。その友人もそばにいた私も、今後痴漢被害にあったとしても学校に報告しても意味がない、むしろ恥をかいて終わりだと言う認識になったし、実際にそう思っている女子中学生・高校生は少なくないと思います。制服を着ているというだけで痴漢の被害に遭うことが多い上に、警察での取り調べや教員の対応、周囲の人の態度によってさらに傷つくこともあるのです。
高校生 女性
私が痴漢に遭ったのは駅構内のエスカレーターでした。制服のスカート内を盗撮されているのに気づき、逃げ出す犯人を追いかけましたが、成人男性の足の速さには到底敵いませんでした。悔しさと犯人への怒り、「そして声を上げなくては」という使命感から交番に向かいましたが、私の被害は終わっていませんでした。男性警察官には渋い顔をされながら当時の制服姿を撮影された後、被害現場に連れていかされ被害時と同じ場所に立っている光景を撮影したい、と言われました。男性に、制服で、エスカレーターで、撮影されたことが被害であるのに全く同じことを再びさせられ、トラウマを覚えました。1人で警察官といるということも不安であるのに、公共での写真撮影、周りからの目と蘇る痴漢の瞬間は恐怖以外のなにものでもありませんでした。痴漢被害への証言や警察の事情聴取を変える必要があると強く思います。
<求める具体的な対策>
(1)痴漢事件の実態調査を行う
現在痴漢についての十分な実態調査が行われていません。そのため、痴漢についての実態調査を行うことを求めます。
(2)痴漢報告後のプロセスを見直す
痴漢を報告した後のプロセスは被害者の時間や労力が費やされます。それに加え、被害者が被害現場で写真に写らないといけなかったり、取り調べで被害者の信用性を問われたりするなど、痴漢報告後のプロセスは二次被害となっている部分があります。そのため、痴漢報告後のプロセスを見直すとともに一般人にプロセスを公開することを求めます。
(3)ワンストップ支援センターの増設と周知を行う
日本の各都道府県には性暴力や性犯罪について電話相談ができるワンストップ支援センターがありますが、この施設は十分認知されていないため、ワンストップ支援センターの周知に力を入れてほしいです。また、国連の規定では人口5万人あたり一箇所の性犯罪・性暴力被害者支援センターを必要としていますが、日本ではセンターの数が足りていません。そのため、ワンストップ支援センターの数を増やすことを求めます。
(4)痴漢事件の迷惑防止条例での取り締まりを見直す
痴漢被害は各都道府県の迷惑防止条例または強制わいせつ罪によって取り締まられていますが、二つの境界が曖昧なのに加え迷惑防止条例は各都道府県によって異なるため、取り締まりや統計が統一していません。他にも迷惑防止条例で取り締まる場合の罰則が軽く、迷惑防止条例で取り締まられる場合は加害者が性犯罪再発防止プログラムを受講できないことが問題としてあげられます。そのため、執行猶予を含む罰金刑の段階で加害者に治療命令を出すなど、迷惑防止条例での対応を見直すことを求めます。また、実際は被害者にトラウマを残すなど重い性犯罪であるにもかかわらず、メディアに娯楽として消費されてきた背景から、「痴漢」という名称が軽い印象を与えるため、現在盗撮が「撮影罪」として新たに創設することを検討されているように、痴漢を「電車内性犯罪」に変えることを求めます。
(5)性犯罪についての充実した教育を行う
痴漢の被害にあった人からは「何をすればいいのかわからなかった」という声が多くあげられます。加害者を生まないためにも、被害者を生まないためにも、性犯罪の教育が必要です。痴漢にあったらどうすればいいか、痴漢を目撃したらどうすればいいかなど、痴漢を含めた性犯罪の教育を教育現場で行うことを求めます。
(6)学校での痴漢ルールを作成する
通学中に痴漢の被害に遭ったことによって学校に遅刻した場合、被害者が遅刻や欠席扱いになるかどうかは各学校の判断によって異なります。また、教師に痴漢の相談をしたら不適切な発言が返ってきた体験をした被害者もいました。そのため、痴漢被害が理由での遅刻・欠席の免除や痴漢について相談できる場所を用意するなど、学校での痴漢に対するルールを作成することを求めます。
(7)痴漢の加害者が早期に長期で再発防止プログラムを受けられるようにする
痴漢は再犯率が多く、加害者は痴漢依存症のケースが多いため、再犯防止プログラムを早い段階から長期で受ける必要があります。しかし現状は、痴漢の加害者の多くは捕まっても再犯防止プログラムを受けずに痴漢を繰り返しています。実刑となった加害者が早期に長期で性犯罪再発防止指導R3をしっかりと受けられるようにすることを求めます。
(8)女性専用車両を増やす
女性専用車両に乗らないと安心して目的地まで行けない女性が多数いる中、女性専用車両の数が少なく、一握りの車線にしか設置されていません。女性の安心した交通移動のために女性専用列車の増設を求めます。また防犯カメラの増設も求めます。現在一部鉄道会社等でアプリの開発が進んでいますが、電車内で被害にあった際に、被害者がスマホで通報したら「*両目から痴漢被害の通報がありました」といったアナウンスを車内で行うようして欲しいです。
(9)省庁横断型の連絡協議会の設置
痴漢の問題は法務省、警察庁、国土交通省、文部科学省など様々な省庁に担当部署がまたがっており、また民間の鉄道会社などとの連携も欠かせません。そのため、関係省庁や民間企業などが連携し、痴漢による性暴力をなくすための取り組みを進める連絡協議会の設置を求めます。
(10)性被害を受けた時の対応をまとめた資料(学校安全参考資料)を各家庭に配る
現状、痴漢被害を受けた時に、友人、母親等に話をして「私の代わりにたくさん怒ってくれて救われた」「一緒に警察に行ってくれた」という肯定的な経験になっている人は少なく、その多くが「どうすることもできないから忘れろ」「よくあることだから諦めろ」と言われたり、「触れられるうちが華」「尻ぐらいいいだろ」「その程度で騒ぐな」など軽視、矮小化されたり、嘲笑されたりしています。こうした現状を踏まえると、家族の理解を深める必要や、家庭で相談しやすくする施策が必要です。しかし、文科省が作成している「文部科学省×学校安全」というサイトや「生命の安全教育」教材には、電車やバス内の痴漢犯罪に関する具体的な対応策等については掲載されていません。そのため、性被害を受けた時にどうすればいいのかをまとめた資料を上記サイトや教材に掲載した上で、学校を通じて各家庭に配布することを求めます。