痴漢被害多い大江戸線に女性専用車両を導入へ。若者の声が社会を動かす
17年ぶりに都営地下鉄に女性専用車両導入へ
2005年に都営新宿線に導入されて以来、17年ぶりに、都営地下鉄(都営大江戸線)に女性専用車両が導入される方向となった。
痴漢被害多い大江戸線、女性専用車両を導入へ…都は混雑への影響小さいと判断(読売新聞)
3月22日、東京都議会の予算特別委員会で、公明党の松葉多美子都議会議員の質問に内藤淳交通局長が答えた。
公明党・松葉多美子都議会議員:
女性の活躍推進についてお聞きします。
まずはじめに、公共交通機関での安全対策についてであります。
本定例会の代表質問で内藤交通局長から、都営交通において女性専用車両の導入拡大を検討していくと答弁がありました。
女性専用車両の導入拡大には、他の車両の混雑助長や相互直通運転を行う各社との調整など、誰もが利用する公共交通機関であるがゆえの、様々な課題があることは認識しております。
一方、ますます卑劣化する痴漢被害から女性を守ることは喫緊の課題であります。社会全体で撲滅の機運を高めていくべきであり、公共交通事業者においても、更なる取り組みが必要であると考えます。
その意味でも、女性専用車両の導入拡大は単に移動にあたっての、安心空間を作るだけではなく、痴漢被害の未然防止に向けた訴求力の高い取り組みの一つと言えます。
早期に、女性専用車両を拡大していくためにも、例えば他の鉄道事業者と相互直通運転をしていない、大江戸線から具体的な検討を進めるべきと考えますが、見解を求めます。
内藤淳交通局長:
都営地下鉄では、痴漢行為を撲滅するため、痴漢撲滅キャンペーンの実施、駅係員等によるホーム監視、車内防犯カメラの整備、さらには新宿線への女性専用車両の運行を継続的に実施してきたところでございます。
痴漢は犯罪で、決して許されない行為でありますが、都営地下鉄でも依然として一定の被害の申し出を受けている状況でございます。
こうした中、コロナ禍以降、各路線の混雑率は全体的に低下しており、女性専用車両の導入拡大に伴う他の車両への影響は比較的小さくなると想定されます。
導入拡大に向けて、まずは利用者の規模の最も大きく、痴漢通報件数も相対的に多い大江戸線を対象に、朝ラッシュ時間帯の詳細な利用実態や新宿線への導入で得られた知見ノウハウを踏まえながら、検討してまいります。
多くのお客様のご理解とご協力を得ながら、誰もが安心して利用できる環境づくりを推進してまいります。
公明党・松葉多美子都議会議員:
大江戸線を対象に女性専用車両導入の検討を進める旨の答弁がありました。
1日も早い実現をお願いいたします。
今回の質問に先立って、2月22日の都議会本会議代表質問において、都議会公明党の東村邦浩幹事長の質問に対し、痴漢対策として女性専用車両の導入拡大に向けて検討する旨の答弁がなされていた。
また、令和3年度末に改訂された「東京都男女平等参画推進総合計画」(計画期間:令和4年度から令和8年度まで)にも、痴漢対策に取り組む旨が書かれた。
若者の声が社会を動かす
こうした動きの背景にあるのが、若者による働きかけである。
筆者が代表理事を務める日本若者協議会では、オンラインで署名を集めた上で、2021年9月16日、都議会公明党に、要望書を提出。
女性専用車両の増加や、性被害を受けた時の対応をまとめた資料(学校安全参考資料)を各家庭に配ることなどを求めていた。
都議会公明党に「本気の痴漢対策を求めます!来学期から #NOMORECHIKAN 」の要望書・署名を提出しました(日本若者協議会)
また、「東京都男女平等参画推進総合計画」改訂に向けて、都民ファーストの会や日本共産党都議団とも意見交換を重ね、審議会で痴漢対策を強化するよう発言してもらってきた。
他にも、文部科学省や内閣府、東京都教育委員会などに対しても要望書を提出。
そうした結果、17年ぶりに、都営地下鉄(都営大江戸線)に女性専用車両が導入される方向となった。
近年、「ブラック校則」でも当事者の学生が声を上げ、着実に改善が進むなど、社会の中に若者の声が入ることによって、確実に社会が変わりつつある。
日本では若者の政治参加が進まない大きな理由として、「自分が声を上げても社会が変わると思えない」という政治的有効性感覚の低さが長年指摘されてきたが、若者が声を上げることによって社会が変わる成功体験が積み上がってきており、徐々にその意識も変わりつつある。
関連記事:徐々に広がりつつある「投票」以外の若者の政治参加。政策提言で社会を変える方法(室橋祐貴)
18歳意識調査も前回から上昇
日本財団が2019年9月下旬から10月上旬にかけて行った「18歳意識調査」では、インド、インドネシア、韓国、ベトナム、中国、イギリス、アメリカ、ドイツ、日本のうち、日本が最も低い結果となっていた。
その2年半後、2022年1月26日~2月8日に行われた、日本財団「18歳意識調査」では、最下位であることには変わりないが、「自分の行動で、国や社会を変えられると思う」は、10ポイント近く上昇する結果となった。
同様に、「政治や選挙、社会問題について、家族や友人と議論することがある」も7ポイント上昇。
元々が非常に低かったため、他国と同じ水準に達するまでにはまだ時間がかかるだろうが、着実に成功事例が積み重なっており、徐々に意識が大きく変わっていきそうである。
さらに、子どもにとって最も身近な社会である学校のルール、校則の見直しへの生徒参加が文部科学省・生徒指導提要に明記される方向となっており、今後この意識改革はさらに加速しそうだ。