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台風になるかもしれない熱帯低気圧周辺の暖湿気流入で熱中症になりやすい暑さと大気不安定による局地的豪雨

饒村曜気象予報士
熱中症予防対策(提供:イメージマート)

太平洋高気圧の張り出しではない暑さ

 令和6年(2024年)8月5日は、福岡県・久留米で39.5度、大分県・日田で39.3度、愛知県・名古屋と奈良県・風屋で39.0度を観測し、4地点が39度超えの殺人的な暑さでした。

 また、最高気温が35度以上の猛暑日を観測したのが223地点(気温を観測している全国914地点の約24パーセント)、最高気温が30度以上の真夏日は668地点(約73パーセント)、最高気温が25度以上の夏日は805地点(約88パーセント)でした(図1)。

図1 全国の猛暑日、真夏日、夏日の観測地点数の推移(8月6日以降は予想)
図1 全国の猛暑日、真夏日、夏日の観測地点数の推移(8月6日以降は予想)

 猛暑日、真夏日、夏日とも今年最多ではありませんが、厳しい暑さの所がほとんどであったということにはかわりがありません。

 7月29日に栃木県・佐野で観測史上3番目となる41.0度を観測したあとも、各地で40度近い気温を観測していますが、暑さの中心は東日本の太平洋側から西日本に移っています(表)。

表 日最高気温の全国順位(1位と2位:同じ値の場合は、新しく観測されたものを上位にした)
表 日最高気温の全国順位(1位と2位:同じ値の場合は、新しく観測されたものを上位にした)

 ただ、この西日本から東日本の暑さは、多くの年の盛夏の時のように、強い太平洋高気圧に覆われての暑さではありません。

 日本の南海上は広い範囲で気圧が低くなっており、その中にある2つの熱帯低気圧(熱低)をまわるように南から暑くて湿った空気が流入しているところに、高気圧に覆われ、晴れて強い日射が降り注いだことによる暑さです。

 そして、熱帯低気圧の動きが遅いために、このような気圧配置がしばらく続く見込みです(図2)。

図2 地上天気図と衛星画像(8月5日21時)
図2 地上天気図と衛星画像(8月5日21時)

 ということは、しばらくは暑くて湿った空気の流入が続く見込みです。

暑くて湿った空気の流入

 暑くて湿った空気が大気下層に流入すると、気温の数値以上に熱中症にかかりやすくなります。

 気象庁と環境省が共同で、全国59地域(都府県毎、北海道と鹿児島県・沖縄県は細分)を対象に、前日夕方と当日朝の1日2回、「熱中症警戒アラート」を発表しています。

 8月6日の前日予報では、西日本を中心に全国26地域(約44パーセント)に対して「熱中症警戒アラート」が発表されています(図3)。

図3 熱中症警戒アラートの発表状況(8月6日の前日発表)
図3 熱中症警戒アラートの発表状況(8月6日の前日発表)

 今年は、記録的な高温となった昨年を、4割程度上回るペースで熱中症警戒アラートが発表されています(図4)。

図4 熱中症警戒アラートの発表回数(令和4年・令和5年と令和6年の比較)
図4 熱中症警戒アラートの発表回数(令和4年・令和5年と令和6年の比較)

 観測史上一番暑かったのは、昨年、令和5年(2023年)ですが、今年は、それ以上に熱中症になりやすい暑さが続いているのです。

 今年から熱中症特別警戒アラートの運用が始まり、発表時には徹底的な熱中症対策をとることが必要となります。

 現在運用中の熱中症警戒アラート(対象地域内のどこかで暑さ指数33以上)と違い、熱中症警戒特別アラートは都道府県単位で、前日の14時に都道府県内全ての暑さ指数が35以上と予測される場合に発表されます。

 この発表基準は、これまでに経験したことがない暑さで、記録的な猛暑となった昨年も発表基準に達していません。地球温暖化等で予想される今後の暑さに対する備えです。

 現在までの暑さでは、熱中症特別警戒アラートが発表されませんが、発表に至らないとはいえ、熱中症になりやすい危険な暑さにはかわりがありません。

 熱中症特別警戒アラートで求められる徹底的な熱中症対策に準じた対策が必要です。

 また、熱中症になりやすい湿度の高い暑さになると同時に、大気が不安定となって積乱雲が発達しやすくなっています。夜間も含めて熱中症に警戒すると同時に、天気の急変や落雷、突風、急な強い雨に注意してください。

 大気が不安定なことによる積乱雲発達は局地的ですので、すぐ近くで落雷や局地的豪雨があっても気がつかないことがあります。ネット等を活用し、最新の気象情報の入手に努めてください。

熱帯低気圧の動き

 沖縄の南にある熱帯低気圧はゆっくりと西へ向かい、小笠原の南にある熱帯低気圧はゆっくり北へ向かう予想となっています(図5)。

図5 予想天気図(8月7日9時の予想)
図5 予想天気図(8月7日9時の予想)

 筆者が、昔調べた8月の台風の統計では、沖縄の南にある台風は、沖縄県先島諸島付近を通って台湾に向かうものと、沖縄本島付近を通って東シナ海を北上するものがあります(図6のAからB、または、AからE)。

図6 台風の8月の平均経路図と熱帯低気圧の進路予想
図6 台風の8月の平均経路図と熱帯低気圧の進路予想

 また、小笠原の南にある台風は西進して西日本に接近するものと、関東の東海上を北上するものがあります(図6のCからE、または、CからD)。

 気象庁では、熱帯低気圧が24時間以内に台風に発達すると予想しているときは、「発達する熱帯低気圧に関する情報」を発表します。現在、この情報は発表されていませんので、2つの熱帯低気圧がすぐに台風に発達する可能性は低いと思われます。

 ただ、台風に発達した場合は、日本に大きな影響を与える可能性が高いので、その動向に注意が必要です。

図1、表の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図2の出典:ウェザーマップ提供。

図3の出典:環境省ホームページ。

図4の出典:環境省ホームページをもとに筆者作成。

図5の出典:気象庁ホームページ。

図6の出典:「饒村曜・宮沢清治(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計、研究時報、気象庁」に筆者加筆。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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