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三輪台風 今週末は沖縄県先島諸島に接近して速度が落ちる予報円が非常に大きな台風25号に警戒

饒村曜気象予報士
三輪台風(令和6年(2024年)11月13日15時、台風23号・25号・24号)

三輪台風

 令和6年(2024年)は、台風の発生が遅く、第1号がフィリピン近海で発生したのは、5月26日でした。

 台風の統計がある昭和26年(1951年)以降、台風1号が一番遅く発生したのは、平成10年(1998年)の7月9日で、令和6年(2024年)は、史上7番目の遅さということになります。

 6月に台風の発生はなく、7月も台風発生数が2個と平年に比べて少なかったのですが、8月は平年並みに6個、9月は平年より多い8個も発生し、ほぼ平年並みの発生数となってきました。

 そして、10月は平年並みの3個、11月はすでに平年より多い4個も発生しました(表)。

表 台風の月別発生数・接近数・上陸数(令和6年(2024年)と平年)(接近数は月がまたがる場合があり、月ごとの値の合計と年間は一致しない)
表 台風の月別発生数・接近数・上陸数(令和6年(2024年)と平年)(接近数は月がまたがる場合があり、月ごとの値の合計と年間は一致しない)

 しかも、11月12日は、南シナ海のベトナム付近に台風22号が、同じ南シナ海のルソン島付近に台風23号が、カロリン諸島付近に台風24号が存在している所で台風25号が発生しましたので、台風が4個同時に存在する「四輪台風」になりました。

 四輪台風は、平成29年(2017年)7月23日以来、約7年ぶりです。

 現在は、台風22号がベトナムに上陸して熱帯低気圧に変わりましたので、三輪台風となっています(タイトル画像)。

 天気図上で3個の台風が同時に存在することは、ほぼ1年に1回くらいあり、それほど珍しいことではありませんが、ほとんどが台風発生が多い夏季の現象です。

 資料は少し古くなりますが、以前に、昭和26年(1951年)から昭和52年(1977年)の資料を用いて、台風について調べたことがあります。

 それによると、台風が3個以上同時に存在するのは、7月から9月が多いのですが、11月にも、10~15年に1回は存在しています(図1)。

図1 同時に存在した台風(昭和26~54年(1951~1979年))
図1 同時に存在した台風(昭和26~54年(1951~1979年))

 ただ、4個並ぶとなると珍しくなり、11月に並んだのは、今回が最初です。

 なお、5個並ぶとなると、台風の統計がある昭和26年(1951年)以降では1回しかありません。

 それは、昭和35年(1960年)8月23日15時から翌24日9時までのことで、天気図上に西から台風17号、15号、16号、14号、18号という5個の台風が並びました。

 ちょうどローマオリンピック(最初の東京オリンピック前のオリンピック)開幕直前であったため、マスコミ等は「五輪台風」と名付けています。

北上する11月の台風

 筆者の昔の調査では、11月の台風は、低緯度を西進する台風がほとんどです(図2)。

図2 台風の平均経路(11月)
図2 台風の平均経路(11月)

 ただ、まれには、北上して日本の東を東進するものがありますので油断できません。

 一番遅い上陸台風は、平成2年(1990年)11月22日9時にグアム島の南海上で発生したあと西進しながら発達し、フィリピンの東海上で向きを北東に変え北上した台風28号です。

 11月末ともなれば日本近海の海面水温が低くなり、北からの寒気が南下しやすくなっていますので、北上台風のほとんどは温帯低気圧に変わるか、熱帯低気圧に衰えます。

 しかし、この年は日本近海の海面水温がまだ高く、北からの寒気南下が弱かったため、台風の勢力で、11月30日14時頃に和歌山県白浜町の南に上陸しています(図3)。

図3 最遅上陸台風の経路図(平成2年(1990年)の28号)
図3 最遅上陸台風の経路図(平成2年(1990年)の28号)

 11月に台風が上陸したのは、この1例だけですが、台風が上陸しなくても、日本の南岸を台風が接近して通過するときに、雨雲がかかって大雨になることが時々あります。

 そのような懸念があるのが、現在フィリピンの東海上にある台風25号です。

台風25号の進路予報

 フィリピンの東を発達しながら北西進している台風25号は、11月14日9時には非常に強い台風に発達する見込みです。

 中心気圧950ヘクトパスカル、最大風速45メートル、最大瞬間風速60メートルに発達した台風25号は、進路を次第に北よりに変え、今週末には沖縄県先島諸島に接近する見込みです(図4)。

図4 台風25号の進路予報と海面水温(11月13日21時)
図4 台風25号の進路予報と海面水温(11月13日21時)

 先島諸島に接近する時は、台風の勢力は少し弱まりますが、速度が落ちる見込みです。

 このため、台風による雨や風が長時間続くことになりますので、総雨量が大きくなり、大災害発生の懸念があります。

 ただ、台風25号の進路予報は難しく、大きな予報円となっています。また、進路によっては、ルソン島や台湾による衰弱の度合いが変わりますので、強度予報も難しくなっています。

 この難しさの要因に、台風25号の後を追うように発達しながら西進している台風24号の影響があります(図5)。

図5 台風24号の進路予報と海面水温(11月13日21時)
図5 台風24号の進路予報と海面水温(11月13日21時)

 マリアナ諸島にある台風24号は、フィリピンの東で非常に強い勢力になり、ルソン島を横断して南シナ海に入る予想となっていますが、台風25号より速い速度で西進していますので、台風25号との距離はどんどん近くなる見込みです。

 11月17日には、2つの台風の距離は、藤原の効果によって複雑な動きをするとされる1000キロ以下となりますので、予報が変わる可能性があります。

 最新の台風25号や24号の情報入手に努め、警戒してください。

タイトル画像の出典:ウェザーマップ提供資料に筆者加筆。

図1の出典:饒村曜(昭和61年(1986年))、台風物語、日本気象協会。

図2の出典:饒村曜・宮沢清治(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計、研究時報、気象庁。

図3の出典:気象庁ホームページに筆者加筆。

図4、図5の出典:ウェザーマップ提供。

表の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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