バイラクタル・クズルエルマ無人戦闘機が初飛行
12月14日、トルコのバイカル社が開発中のバイラクタル・クズルエルマ無人戦闘機が初飛行を行いました。ジェットエンジンを搭載したステルス戦闘機のような形状を持つ斬新な無人機です。
クズルエルマはトルコ語でMİUS (Muharip İnsansız Uçak Sistemi)という種類の兵器に分類されています。意味は「戦闘無人航空機システム」です。
クズルエルマは最高速度900km/hと超音速は発揮できませんが、従来の滞空型無人機の3倍近い速度を発揮できます。代わりに滞空時間は5時間と約5分の1となっています。長時間滞空する偵察監視ではなく高速を生かした攻撃が用途で、兵装搭載量は1500kgと発表されています。
Baykar Bayraktar Kızılelma
- バイカル(Baykar)・・・会社の名前
- バイラクタル(Bayraktar)・・・無人機ブランドの名前
- クズルエルマ(Kızılelma)・・・機体の名前
バイラクタルとはバイカル社の無人機シリーズのブランド名で、全く異なる種類の機体だろうとバイカル社の無人機には全て付いています。
重量3kg程度の「バイラクタル・ミニ」、重量700kgの「バイラクタルTB2」、重量5500kgの「バイラクタル・アクンジュ」、重量6000kgの「バイラクタル・クズルエルマ」、これら全てにブランド名として付いているので、単にバイラクタルとだけ呼んだらどの機体か分かりません。略す場合は機体名だけにしましょう。
なおバイラクタルとは会社の創業者の名前にちなんでいます。バイカルという会社名も「Bayraktar Kardeşler(バイラクタル・カーデシレー:バイラクタル兄弟たち)」を合体させて縮めた言葉です。するとバイカル・バイラクタルと並べると言葉が一部二重になっていますが、特に気にされてはいないようです。
Kızılelma(クズルエルマ:赤い林檎)の発音と意味
- Kızıl(クズル)・・・赤
- elma(エルマ)・・・林檎
機体名称のクズルエルマのトルコ語の綴りは「Kızılelma」ですが、実はトルコ語には「i」だけでなく「ı」という文字があり、この「ı」は「ウ」に近い発音になります。「Kızılelma」はこの「ı」なのでクズルエルマと発音します。うっかり「i」と見間違えてキジルエルマと発音しそうになるので注意しましょう。
なお同じようにバイカル社の滞空用大型無人機「Akıncı」もアキンジではなくアクンジュと発音します。カタカナ表記もこのようになります。
なおトルコで「クズルエルマ(赤い林檎)」とは歴史的に政治的な隠語で、熟した果実=征服で得られた成果(占領した都市)という、なかなか物騒な意味が込められた言葉です。
クズルエルマの自律戦闘能力は低い? 単純な遠隔操作型?
なお他国でクズルエルマのようなステルス戦闘機型の形状を持つ無人機で他に具体的に進んでいる計画としては、オーストラリアのロイヤルウィングマン無人機計画「MQ-28Aゴーストバット」があります。
MQ-28Aゴーストバットと命名、豪州ロイヤルウィングマン無人機(2022年3月21日)
このオーストラリアのロイヤルウィングマン無人機計画は「完全な自律戦闘型無人機を作るのは難しいので、先ずは自律戦闘型無人機と遠隔操作型無人機の中間の存在を目指そう」という計画です。有人戦闘機からの空中指揮を受けながら半自律戦闘を行う構想です。有人戦闘機の忠実なる僚機、サポート役を担当します。
自律型無人戦闘兵器と群体戦術の実用化の時期(2019年3月31日)
完全な自律戦闘型無人機は人工知能(AI)の進化を待たねばならず、実現はまだ数十年先のことだと見られています。この技術の最先端を行くアメリカですら近い将来にはまだ無理だと認識されています。
するとトルコが米露中など軍事大国に先駆けて完全な自律戦闘型無人機を完成させられるとは思えません。トルコのクズルエルマはオーストラリアのロイヤルウィングマン無人機計画のような有人戦闘機に随伴して空中指揮を受ける構想も発表されていません。ということはクズルエルマの自律戦闘能力は低く、単純な遠隔操作型に近いのではないかと推定します。
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