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自律型無人戦闘兵器LAWSとスウォーム戦術の実用化の時期

JSF軍事/生き物ライター
アメリカ国防総省「無人システム統合ロードマップ2017-2042」表紙より

 3月25日から29日にかけてスイスのジュネーブで開かれた特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の会合で、人工知能を搭載して自律的な判断で攻撃を行う無人兵器(ドローン)の「自律型致死兵器システム(LAWS)」について規制を行うべく話し合いが行われましたが、アメリカやロシアなど幾つもの大国が規制に反対して話し合いは纏まりませんでした。

 自律型の無人戦闘兵器は人工知能で判断して自動的に攻撃を行います。投入されれば戦場を一変させる脅威的な存在と成り得る上に、人間の判断が介在せずに殺人を行う倫理面が大きな問題となっていますが、そもそも複雑に入り乱れる戦場で敵と味方と民間人を識別して攻撃を行う人工知能の開発は技術的に非常に困難で、近い将来に実用化できるものではありません。

 そこで2018年にアメリカ国防総省が発表した報告書「無人システム統合ロードマップ2017-2042」から、無人兵器の自律行動能力は何時頃を実用化の目途に開発しているのかを見てみましょう。

Pentagon Unmanned Systems Integrated Roadmap 2017-2042 | USNI

アメリカ国防総省「無人システム統合ロードマップ2017-2042」18ページ表3
アメリカ国防総省「無人システム統合ロードマップ2017-2042」18ページ表3

 「高度な自律性(Highly Autonomous)」は「長期的(FAR-TERM)」な計画に分類されて25年後まで記した計画の最後の方に載っています。自律行動できる人工知能についてアメリカ軍自身が直ぐに完成できるようなシステムではなく数十年先になると認識していることが分かります。ここまで長期間の見積もりだと予定通りに開発できるとは限らず、25年後に完成しているかどうかの保証はないでしょう。

 また自律行動能力が必要な「群れ行動(Swarming)」も長期的な計画とされています。実は遠隔操作型の無人戦闘兵器は周波数の帯域の限界で同時投入数はあまり増やすことができなかったので、無人戦闘兵器を大群で投入するためには自律行動能力が必要だったのです。群れ(スウォーム)として投入される自律型無人戦闘兵器はお互いがデータリンクで情報を共有し、目標を捜索・発見し攻撃し続けることができます。

 無人戦闘兵器が自律行動能力とスウォーム行動能力を獲得して、更に人工知能が高度に進化を続けた場合、遠い未来の何時の日か、無人戦闘兵器だけで戦争が行える未来が訪れてしまうのかもしれません。その前に国際的な規制が行われるのか、それとも人類はこの未来を受け入れてしまうのでしょうか。猶予はまだ先の話になります。

103機でスウォーミングを試験する無人機「Perdix(パーディクス)」:米国防総省

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人兵器(ドローン)、ロシア-ウクライナ戦争など、ニュースによく出る最新の軍事的なテーマに付いて兵器を中心に解説を行っています。

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