優秀層学生の囲い込み合戦も激化。外資系特化・学生参加無料で選考対策…「選抜型就活コミュニティ」急増中
前回の記事では、すでにインターンが就活の一部となってしまっている現状について取り上げた。
就活の一部と化したインターン。早期内々定者の半数がインターン経由とのデータも
それに賛否両論ある事は間違いないが、当事者となる大学生として今気になっているのはそのインターンに参加する上で必要となる「選考」についてではないだろうか。
今回は、近年1つのブームになりつつある「選抜型就活コミュニティ」について取り上げたいと思う。
一般的にはまだまだ認知度が低い存在だが、外資系企業など一部の難関企業を狙う学生の中では徐々に無視できない存在になってきている。
【インターンにも本選考並の対策が必要?】
「インターンはまだ本採用ではないのだから、選考もそこまで難しくないのでは?」
そう甘く考えて撃沈していく学生は毎年後を絶たない。
インターンだからといっても、選考が簡単だとは限らない。
もちろん簡単な書類選考だけで参加できるインターンもあるし、希望者は原則参加できるというインターンもある。
しかしインターンの時点で面接やグループディスカッションが課せられる企業もあり、特に内定直結型のインターンでは選考も激戦だ。
むしろ夏のインターンでほぼ勝負(内定)が決まるという企業もあり、一部の情報感度が高い学生は早期から入念な情報収集と対策を行っている。
【選抜型就活コミュニティとは?】
その「一部の情報感度の高い学生」の間で最近重要視されているのが、選抜型の就活コミュニティだ。
万人を対象にした就活支援サービスとは異なり、選抜を突破した会員にのみ就活支援を行うコミュニティが近年「選抜型就活コミュニティ」と呼ばれている。
主に外資系コンサルティングファームや外資系金融機関への内定のために運営されていることが多く、企業によっては内定者の半数以上が選抜型コミュニティ出身という事例も出てきているようだ。
サービス内容は運営主体によってそれぞれ異なるが、主にエントリーシートの書き方の指導や添削、模擬面接などの面接対策の実施、グループディスカッションやインターン中についてのアドバイスを行っていることが多い。また企業とタイアップしてのセミナーを開催している事もある。
「就活塾のようだ」と思われるかもしれないが営利の就活塾とは異なり、基本的には無料で就活生に講義を行っている。(会場代・資料代など実費がかかるケースあり)
一例として有名なのが、社会人が非営利で運営している「YC塾」だ。
コミュニティに参加するためには塾による選考(グループディスカッションなど)を突破する必要があり、基本的には東大、京大、東工一橋、早慶の学生のみ選考に応募できることになっているという。
受け入れ学生の人数は19卒実績で年7名程度と少ないものの、優秀な人材ばかりだと評判だ。
Morgan Stanley、Merrill Lynch、JP Morgan、Goldman Sachs、McKinsey & Company、BCG、Bain & Company、P&Gなどの難関外資系企業に内定するための指導が行われ、実際にこれらの企業群から内定を獲得している。
YC塾以外では学生団体が運営するShare-Projectも有名であり、10年以上の歴史を誇る。
こちらは金融業界に特化した就活コミュニティとなっている。
(Share-Projectの運営メンバーは東大・早慶の学生が多いが、イベントは大学に関係なく参加できるため今回紹介する選抜型コミュニティとは毛色が異なっている。)
【TOP層向け就活サイトが、続々と「選抜型コミュニティ運営」に参入?】
こうした事例を参考にしたのか、東大・早慶などの上位大学を対象にした就活サイトが続々と「選抜型コミュニティ」の運営に参入し始めている。
優秀な学生を囲い込むことで就活サイト運営会社にもメリットがあるからだ。
逆に言えば、そこまでしなければ優秀な学生を囲い込むことが難しくなっているとも言える。
コミュニティ参加にはやはり選考通過が必要になるが、サービスは基本的に無料。
企業がスポンサーになっている事もあるようだが、基本的に参加学生が受講料を支払うことはない。
受け入れ人数は20〜30名程度というケースが多いようだ。
優秀層の学生を囲い込んでおけば、難関企業の選考に関する情報が入ってくると同時に、参加学生に自社の広告塔になってもらう事もできる。また内定者となった参加者は、翌年の「講師」役を務めることも可能だ。
「優秀層向け」の就活サイトにとってはそれがビジネスの生命線となるため、影響力のある優秀な学生の取り込みに各社血眼になっているのだ。
【横のつながりができるのもポイント】
選抜型コミュニティを運営するslogan社の自社調査によると、戦略系コンサルティングファームのターゲット企業における内定者シェアは40~60%程度、外資系金融機関投資銀行部門においては50〜80%程度を占めているという。
それらの内定者が同サービスだけを利用していたとは限らないが、それらの企業を志望している学生にとっては無視できない存在になってきている。
こうしたコミュニティ型サービスの強みは、ただ就活に関する講義を受けられるだけでなく「コミュニティ」で横のつながりができるという事だ。
横のつながりを得た一部の学生は選考に関する最新の情報もリアルタイムに共有し、「面接ではこんなことを聞かれた」「今年の筆記試験はこういう問題だった」といった合否に直結する情報も交換している。
こうした情報はネット上に出てくることも少なく、一昔前は学生個人のつながりで情報を得ることしか出来なかった。
しかし就活サイト運営会社が主導してコミュニティ形成を行った結果、そこに参加できるかどうかで有利不利が大きく左右される状況になってきている。
【知らなかった学生はどうするべきか?】
今この記事を読んでいる学生の大半は「そんなものがあるなんて知らなかった」と思っているはずだ。
まず、知らなかった学生の方が世の中の大多数であることは間違いないので、そこは安心してもらいたい。
ごく一部の外資系企業志望でなければ、現段階で動いていなくとも就活に支障はない。
しかし、それだけの情報格差がある事も知っていただきたい。
大多数の学生が「最近インターンについての話題が多いな」と薄々感じ始めた段階で、一部の学生はすでに選考の情報を集め、対策を開始し、具体的な行動を起こしているのだ。
そして大多数の学生が「そろそろ就活の時期だ」と思った頃、それらの学生はとっくに内定を取って就活を終えている。
情報格差というものは、自らアクションを起こさなければ埋まらない。
「そういった動きがある」「そういった行動を起こしている学生がいる」と知ることがまず第一歩。
その上で、自分はどう動くべきかを考えてみてもらいたい。
「自分には関係ない」と思えるならそれはそれで間違っていない。