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暑い夏は「読み鉄」 涼しい屋内での鉄分補給にピッタリの書籍を紹介!(旅行記・エッセイ名作編)

清水要鉄道・旅行ライター
暑い夏に「読み鉄」はいかが?

外に出るだけでも命の危険を感じるような暑さを感じる今日この頃。旅行に行きたいけれども暑すぎて外に出る気になれない…という方も多いことだろう。

そんな方におすすめなのが「読み鉄」だ。読んで字のごとく鉄道に関する書籍を読んで旅を追体験するもので、本さえあればクーラーの効いた部屋から一歩も出ることなく「鉄分」を補給することができる。この記事では、鉄道にあまり詳しくない方でも楽しんでいただけると思う鉄道に関する旅行記・エッセイの名作を紹介していこう。

1.宮脇俊三『最長片道切符の旅』(新潮文庫)

自由は、あり過ぎると扱いに困る。
籠の鳥は外に出されるとすぐ空へ飛び立つのだろうか。

印象的な書き出しで始まる、言わずと知れた名作。読んだことはないけれども題名は聞いたことがあるという方も多いのではなかろうか。全線完乗を達成して、脱サラし、自由を持て余した著者が、日本で買うことのできる最も長い距離の切符で、北海道の広尾駅(廃止)から鹿児島県の枕崎駅まで13319.4キロを34日間で旅した記録だ。簡潔で読みやすいけれども、ユーモアにあふれた著者の文章は、一度読み始めたら読者を引き込んで離さない。もはや隔世の感もある40年以上前の鉄道や日本の風景に思いを馳せながら読んでみるのはいかがだろうか。

(ISBN978-4-10-126802-6)

2.宮脇俊三『時刻表昭和史』

大正15(1926)年12月9日、昭和が始まるわずか16日前に生まれ、昭和という時代と共に生きた著者が、当時の時刻表にも触れながら戦前・戦中・戦後という激動の時代を描いた傑作随筆だ。戦後80年近く経って当時を知る世代が少なくなった今の時代にこそ読んで、自由に鉄道旅行を楽しめる現代の平和の有難さを噛みしめたい。同世代の作家の私小説、北杜夫『楡家の人びと』や吉村昭『東京の戦争』なども合わせて読めば、よりその時代への理解が深まるだろう。

死と隣り合わせの戦時中でもなんとか工夫して旅に出ようとする宮脇少年の姿には、ユーモラスであると同時にどこかかなしい。

角川文庫(ISBN978-4-04-159808-5)

中公文庫(ISBN978-4-12-207382-1)

3.阿川弘之『お早くご乗車ねがいます』(中公文庫)

故郷広島への原爆投下を描いた『春の城』や特攻隊員を描いた『雲の墓標』など、戦争に関する作品で知られる作家・阿川弘之氏は、文壇でも屈指の乗り物好きでもあった。著者なり旅の楽しみ方に、機関士への密着取材、急行「銀河」での車掌体験など、新幹線開業以前の昭和30年代の鉄道や時代の空気を今に伝えてくれる珠玉の随筆集だ。ちなみに前出の宮脇俊三氏が編集者だった頃に手掛けた一冊でもある。

(ISBN978-4-12-205537-7)

4.内田百閒『第一阿房列車』(新潮文庫)

夏目漱石の弟子で、『冥途』で知られる作家・内田百閒は「乗り鉄」の元祖とも言うべき人物だ。庶民には旅行なんてめったにできないものだった戦後すぐの時代に「なんにも用事がないけれど、汽車に乗って大阪へ行って来ようと思う」と鉄道に乗ることを目的に旅に出る百閒先生は、とにかく自由気まま。旅費は借金で、同行者の「ヒマラヤ山系」くんに対しては横柄だし、旅館に対する文句も多い。SNS時代なら間違いなく炎上しているだろう奇人で、一緒に旅をしたら疲れそうだ。半世紀以上隔たった後世で文章を読むくらいの距離感がちょうどいいのかもしれない。百閒は宮脇氏と比べると文章も人間性も癖が強くて好き嫌いは分かれるだろうが、その分刺さる人にはとことん刺さる作家だと思う。

(ISBN978-4-10-135633-4)

以上、「読み鉄」にとっておきの4冊を紹介してみた。いずれも入手は比較的たやすいので、気になる方はお近くの書店やネットなどで購入して、クーラーの効いた屋内で「読み鉄」を楽しんでみてはいかがだろうか。

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鉄道・旅行ライター

駅に降りることが好きな「降り鉄」で、全駅訪問目指して全国の駅を巡る日々。

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