台風14号が先島諸島付近から東シナ海を北上 動きが遅くなって西日本には危険な停滞前線
台風14号の北上
非常に強い台風14号は、9月12日の昼頃に沖縄県先島諸島を通過し、東シナ海を北上中です。
台風14号の外側の等圧線は、台湾の地形の影響を受けて変形しており、先島諸島では台風が通過しても西風には変わらず、南風が続いています(タイトル画像参照)。
この台風14号は、14日にかけて東シナ海を北上し、16日にかけて上海の東海上で動きが急に遅くなる見込みです(図1)。
台風の予報は最新のものをお使いください。
台風が発達する目安となる海面水温は27度ですが、上海の東海上の海面水温がこの27度です。
このため、台風14号は、上海の東海上で勢力を少し落とし、17日にかけて対馬近海へ進み、温帯低気圧に変わりながら西日本へ接近する可能性があります。
ただ、勢力を少し落としというのは台風の風の強さについての話です。
台風の雨については、全く別の話です。
台風14号の北側の雨雲
現在、台風14号の北側には雨雲の塊があります。
この雨雲の塊は、もともとは台風14号の東側にあったものですが、台風14号より早く北西進して台風14号の北側にきたものです(図2)。
このことは、台風の前面に日本の南海上から多量の水蒸気が運ばれていることを意味しています。
安心感を与えそうな言葉の削除
今から22年前、平成11年(1999年)8月13日に紀伊半島の南海上に発生した「弱い熱帯低気圧(当時の表現)」は、動きが遅かったために東北地方から九州地方のところどころで集中豪雨を起こしました。
特に「弱い熱帯低気圧」が上陸した関東地方では、総雨量が300ミリから400ミリに達しています。
この時、神奈川県足柄上郡山北町の玄倉川では、8月14日に増水した中洲でキャンプをしていた13人が取り残されています。
その模様はテレビ中継されており、次第に水位があがって避難しようとする人々が流され、全員が死亡するという一部始終の衝撃の映像は、遺族感情を考慮して、すぐにお蔵入りとなっています。
被害者側の無謀な野営や幾度も行われた退去勧告の無視が事故の原因とされていますが、気象庁が「弱い熱帯低気圧」というと、「弱い」という言葉で安心感をあたえてしまうなどの批判もでています。
このため、気象庁では、玄倉川の水難事故の翌年、平成12年(2000年)6月1日から、「弱い熱帯低気圧」を「熱帯低気圧」に改めています。
また、同時に、台風の大きさ表現では「大型」「超大型」の時のみ台風情報等で表現をし、「ごく小さい」「小型」「中型」の時は台風情報等で表現しないとしています。
さらに、台風の強さの表現では「強い」「非常に強い」「猛烈な」の時のみ台風情報等で表現をし、「弱い」「並みの強さ」の時には、台風情報等で表現しないとしています。
つまり、玄倉川水難事故をきっかけにして、台風情報から安心感を与えそうな言葉が削除されました。
安心感を与えそうな言葉は削除されても、危険な時は危険な時です。
西日本にある停滞前線に向かって、暖かく湿った空気の流れ込む程度によっては、17日頃にかけて西日本では大雨となるおそれがあります(図3)。
今後36時間の予想降水量は、九州南部で200ミリを超え、その後、さらに増える見込みです(図4)。
台風と前線は危険な組み合わせですので、最新情報の入手に努め、警戒してください。
タイトル画像、図1、図2、図4の出典:ウェザーマップ提供。
図3の出典:気象庁ホームページ。