大粒のぶどうによる窒息を予防する その4 〜保育現場の状況〜
2020年9月7日、東京都八王子市の私立幼稚園で、4歳男児が給食で出されたぶどう(ピオーネ)をのどに詰まらせて死亡した。前回の記事で、教育・保育の場の食事についての国の指針やガイドライン、支援ガイドには、食事による窒息についての記載は一切ないと指摘した。そこで、保育現場の状況はどうなっているのかが気になった。
現場での対応は
孫が通っている保育園から、今月23日付けで「保育園での食材の提供に関して」という通知が1枚配布された。それを見ると、「これまで給食でのブドウ及び下記食材の提供を行っていましたが、平成28年厚生労働省より公表されました、『教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン』(以下、ガイドライン)に則り、今後、給食で提供を行う食材に関して変更を行うこととしました」という説明文と、ガイドラインの21ページに挙げられている「給食での使用を避ける食材」が挙げられ、「今後提供をしないもの」とされていた。
この通知を読むと、最近まで、子どもたちにぶどうが提供されていたということがわかる。
知っている保育所、幼稚園に聞いてみた
私が園医として関わっている保育所や幼稚園の4か所に電話して、現状を聞いてみた。「教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン」を知っているかどうか聞いてみたところ、「知らない」と答えたところもあった。今回の窒息死が起こった直後に、市からガイドラインが送られてきたところもあった。子どもたちに大粒のぶどうを出している園はなかった。ミニトマトは、切って与えているところがあった。
月に一回のお弁当の時や遠足では、ミニトマトは1/2、あるいは1/4に切るよう保護者に指示している園もあった。豆まき行事では、豆をそのまま使って豆まきをしているところと、豆の代わりに新聞紙を使用して豆まきをしているところがあった。
実態の把握が必要
ガイドラインの23ページには、「家庭へのよびかけ」として、以下のように記載されている。
国は、窒息の危険性がある食べ物が教育・保育の場で提供されている実態を把握し、それをもとにわかりやすいガイドラインを作成して、全国の教育・保育施設に周知徹底する必要がある。