コロナ禍でまた有名店が閉店! タカノフルーツバーがすごかった4つの理由
タカノフルーツバーが閉店
タカノフルーツバーが2021年3月31日に閉店すると2月1日に発表され、大きな話題となっています。
J-CASTニュースによれば、SNSでは「信じられない」「最後に行っておかなければ」といった投稿があり、閉店を惜しむ声で溢れているということです。
この記事は、Yahoo!ニュースでもトピックスに取り上げられて反響を呼び、コメントも2000以上が投稿されています。
タカノフルーツバーはフルーツのブッフェ店
タカノフルーツバーはどういった店なのでしょうか。
1885年に創業したフルーツ専門店の新宿高野が直営するフルーツバーで、新宿高野本店の5階に1987年オープンしました。
オープン当初からブッフェが行われており、フルーツを含めたデザートや料理を終日にかけてブッフェスタイルで楽しめます。とても人気が高く、テレビや雑誌でもよく紹介されていました。
ブッフェの老舗なので、東京近郊に在住していれば一度は訪れたことがあるという人は多いのではないかと思います。
閉店に至った理由
歴史と人気があるタカノフルーツバーはなぜ閉店することになったのでしょうか。
広報マネージャーを務める久保直子氏は次のように話します。
「1年ほど前から、バイキング業態の見直しを検討していた。オペレーションのあり方やフルーツを中心としたメニューの変更を考えており、閉店するという結論に至った」
新型コロナウイルスの感染拡大により、新しい生活様式も求められ、ブッフェレストランは大きな転換を強いられることになりました。そこで熟慮した結果、ブッフェのオペレーションを変更したり、やめたりしたところも少なくありません。
新宿高野は今後、併設するカフェのタカノフルーツパーラーに、より注力していくということです。
長い歴史があるだけに閉店するのは寂しい気持ちがしますが、ここで改めてタカノフルーツバーが与えた大きな影響について振り返ってみましょう。
男性だけの入店は不可能
タカノフルーツバーはオープン時からしばらくの間、男性だけでは入店できなかったことでも注目されました。女性だけが入店できるのではなく、男性だけでは入店できないというのがポイントです。
面白いシステムなので、テレビや雑誌では、おいしいフルーツが食べられることに加えて、男性が女性を誘うよいきっかけになると紹介されてきました。食べ慣れていない高級フレンチや、プライベートエリアが確立された個室風レストランではなく、フルーツが中心のブッフェであれば、なおさら気軽に誘いやすいことでしょう。
男性だけで訪れると、併設されたタカノフルーツパーラーはどうかと案内されて、そこでフルーツが盛りだくさんのパフェやサンドイッチを食べて満足して帰ったという話も耳にしたことがあります。
こういった特徴的なシステムも、時代とともに新しくなりました。2013年からは17時以降に、2018年6月1日からは終日にかけて、男性だけでも利用できるようになったのです。
ブッフェの利用条件でいえば、2人以上で入店したり、1ドリンクをオーダーしたり、サラダバーのみではなくメインディッシュも注文したりと、様々な条件を課されることがあります。
ジェンダーフリーが叫ばれている今の時代においては、男女別に料金が異なることはまだあっても、女性がいなければ入店できないというブッフェはほぼなくなってきたといえるでしょう。
そういった意味でも、タカノフルーツバーは貴重なブッフェの一時代を築いたといえます。
終日実施
今でこそ、ブッフェ専門のレストラン、つまり、終日にかけてブッフェを行うレストランは一般的になってきましたが、2000年以前ではまだ珍しかったです。
当時ではランチのみにブッフェ、ティータイムにだけブッフェ、もしくは、週末にだけブッフェというような営業形態が多く見かけられました。ホテルであれば、オペレーションの関係で朝食にだけブッフェを行うところは今でも多いでしょう。
2000年代半ばに入るとブッフェレストランが増えていきます。ただ、毎日終日にかけてブッフェを行っていると内容も単調になりがちなので、数ヶ月や季節毎にフェアを行ってメリハリをつけるようになりました。
タカノフルーツバーは、2000年当初には既に2ヶ月毎にメニューを新しくしていたので、ここでも他に先駆けていたことになります。
終日ブッフェを行う店として、他のブッフェレストランに影響を与えたことは間違いありません。
フルーツ中心
フルーツの名店である新宿高野が直営しているので、注目はやはりフルーツ。ブッフェでは料理やケーキが中心となることがほとんどなので、おいしいフルーツが食べられるのは大きな魅力です。
他にもフルーツをウリとするブッフェを行っている店もありますが、毎日終日にかけて行っているわけではありません。したがって、タカノフルーツバーはまさにフルーツ好きにとってパラダイスであったといってもよいでしょう。
先に述べたように、同じフロアのすぐ隣にはタカノフルーツパーラーがあります。賑やかに自由に食べたいのであればタカノフルーツバー、落ち着いて一品一品を食べたいのであればタカノフルーツパーラーということで棲み分けていました。
どちらの店舗にもフルーツ好きが訪れるので、相乗効果になっています。タカノフルーツパーラーに訪れた人はタカノフルーツバーの盛況ぶりやブッフェ台の充実さに驚かされ、タカノフルーツバーに訪れた人はタカノフルーツパーラーの美しいパフェやフルーツのプレートに目を奪われるのです。
大行列店
ブッフェでも人気店はたくさんありますが、タカノフルーツバーは昔から大行列ができていました。予約もできますが、当日分の席を求めて、多くの人が並ぶという状況。5階のアプローチだけでは収まりきれず、階段を下って4階、3階へと列が続く光景は見慣れたものです。
新宿高野本店はJRの新宿駅から徒歩1分というアクセス抜群の目抜き通りに位置しています。1972年から1985年までは新宿高野ビル前が日本で最も地価の高い区画となっており、2020年1月1日時点でも7位というほど。
新宿へ訪れて、洋服を買ったり、電化製品を探したり、映画を観たり、もしくは、ただ街をぶらぶら歩いたりします。そして、お腹が空いてきたので、あの有名なタカノフルーツバーでフルーツのブッフェを楽しみたいとふと思いつき、足を運んでみると大行列ができている。しかし、他にあてもなく、せっかくだから食べたいので、頑張って列に加わったという経験を持つ人もいるのではないでしょうか。
新宿という世界で最も乗降客数が多い大繁華街で、タカノフルーツバーの活気は街によく合っていたと思います。
無理のない範囲で訪れてほしい
タカノフルーツバーは残念ながら2021年3月31日をもって閉店しますが、紹介してきたように、ブッフェレストランとして34年もの間、確固たる存在感を示してきました。
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、飲食店は非常に大きな被害を受けていることは周知の事実です。
ブッフェは、感染拡大初期のダイヤモンド・プリンセス号のイメージもあって、飲食店の業態の中でも特に厳しい状況。
日本のブッフェ文化は他の国と比べても驚くほど質が高く、多様性を極めています。どのブッフェレストランも国が発表した新しい生活様式に対応しているので、感染リスクはそう高くないはずです。
緊急事態宣言が10都府県で3月7日まで延長され、自粛期間は続きますが、ブッフェをはじめとした飲食店に無理のない範囲で訪れ、思い入れのある店を支持してもらえたら嬉しいと思います。