超実践教育機関「タイモブ」の華麗なる挑戦…国を超え、世代を超え、コロナ禍を超えて(2)
[タイモブの法人格は]
(鈴木) 非常に面白く、ユニークですね。いや、ユニークというよりも、今後の組織や働き方の一つの方向性や可能性を提示している先駆的な動きですね。ギグワーク(注1)する人々(ギグワーカー)のグループが、個人の生活やスキル・能力をプロジェクト毎に組み合わせを変えながら、個々人によってもまた組織的にも最大、最高のパフォーマンスを生み出すという、今後そしてある意味で未来の組織形態を示しているような気がします。今後は、業態や業務にもよりますが、タイガーモブ(タイモブ)のような組織が益々増えていくように思いますね。
話は少し変わりますが、タイモブは、株式会社ですが、社会的、教育的活動をしています。非営利の組織形態ではないので、いわゆる狭い意味での「教育」の枠を超えて活動できているように思います。その意味では、株式会社だからこそ、そのような活動ができているともいえます。法人形態として、株式会社を選択した理由はありますか。
(菊地) 創業時から今まで、タイガーモブにしか提供できない価値を、より広く、より多くの方に届けていきたいという想いがあります。そのために、組織としての機動力を上げ、長期にわたって持続的に事業を行い、かつ大きく育てていくために、株式会社がマッチしていると判断しました。
どんな事業も、社会の中にあり、社会と繋がっています。非営利でも営利でも、目の前の顧客に向き合って価値を提供していく、関わるすべての方にとって価値になるような事業をする。それを積み重ねていく先に社会への貢献もあるのだと考えています。
「教育」を軸にしながらも、枠を超えた活動ができるのは、社会貢献という言葉を広くとらえて、「次世代リーダーの創出」に繋がることに、手段にこだわらず向き合っているからかもしれません。
[タイモブ事業の対象者・参加者は]
(鈴木) なるほど。話を戻しますが、タイモブの活動についてもう少し教えてください。これまでは大学生や社会人がタイモブの活動や事業のメインの対象だったと思いますが、1年以上前には中学生なども参加されてきたかと思いますが、最近の活動の参加者はどのようなっているのですか。
(菊地) これまでは大学生や社会人がメインで、高校生が少し増えてきたというユーザー属性でしたが、最近では更に広がり、小学生から社会人はシニアまで、多種多様なバックグラウンドの方々にご参加いただいています。
基本的にはどの実践機会も年齢制限はございませんが、特に小中高生向けに、次のような事業も始めています。
まず「Hello World」という事業で、これは、小学生向けに、世界と繋がり世界を探求する世界講座を毎月実施しています。
次が、「世界お仕事アドベンチャー」です。これは、小、中学生向けのオンライン仕事体験として、リアルな世界の課題に取り組むプログラムです。
さらに、高校生向けには、オンライン海外研修や世界一周講座を個人、教育機関向けに実施しています。
1年前には中学3年生の方々にデジタル社会の最先端を体験する「深セン未来合宿」にご参加いただきましたが、最近ではちょうど今週(6月22日の週)から、中学1年生(12歳)の2名が、世界お仕事アドベンチャー隊員として、「カンボジアでいかに日本食を広めるか?」と、「鳥取の動物公園をいかにオンライン化するか?」というプロジェクトをスタートしています。
小中高生向け事業についてお話ししましたが、今の時代は年齢に関係なく、地球規模に情報を取りにいくことができ、地球規模で挑戦できる時代だと考えています。
[タイモブの新しい事業や活動]
(鈴木) ありがとうございます。小学生から社会人まで参加。凄いですね。年齢は関係ない時代になってきているとはいえ、少なくとも日本にある組織で幅広い年齢層をここまでカバーしているところは皆無だと思います。その意味でも、タイモブは非常に興味深い組織だと思います。
さて、このコロナ禍の時期には、これまでのメインの事業であるインターンシップ事業などが、国境封鎖などで活動できなくなってしまっています。それは非常に残念です。多くの企業や組織がそのような中、活動を停止したり、大きく変更を迫られています。タイモブさんも大変だと思いますが、ある意味以前以上に活発に動かれている。それらの新しい事業や活動等について教えてください。
(菊地) いつも見てくださっていてありがとうございます。
新型コロナウイルスによる影響により、皆さまには3月より全ての海外インターンシップ、短期海外研修プログラムの渡航を控えていただき、同時に海外に滞在中の方々には可能な限り速やかに日本にご帰国いただくようお願いをさせていただいていました。
今まで行ってきていた実践機会の提供が難しい状況となり、改めて、「私たち(タイモブ)のすべきことは何か」ということを全社員で立ち返る機会を何度も持ちました。結果、やはり私たちは「次世代リーダーの創出」を止めてはいけないし、せっかく挑戦をしようとしている方々の道を閉ざしてはならない、機会を創り続けるべきだという結論に至りました。
新型コロナウイルスにより全てがリセットされた状態で、正解はないのだから、とにかく実践し続け、アジャイル(注2)していくことで解を見つけていこうと考えました。
そこで、次のような事業や活動をしています。
まず「オンライン海外インターン、海外プロボノ」事業です。これは、世界の最先端の課題に挑む起業家や非営利組織のリーダーと共に課題に取り組み、自らの経験や専門性を磨きながら、社会に変化を産み出す機会を提供するものです。オンラインでの事業なので、例えば、明日からでも南アフリカのwebマケーティング担当になれたり、インドの社会課題に取り組む企業にアサインするようなことができるのです。
次が、「実践型オンラインサロン」です。これは、問題意識を共にする仲間と学び、議論し、アクションを起こすオンラインサロンです。参加者それぞれがアイデアをアウトプットし、自分の好きなことや興味を追求したり、日常に落とし込むことで、社会に実装していくことを目指すものです。
それから、「短期プログラム」です。短期間で世界各地のリアルな事例を、その当事者から学び、アウトプットまで行う短期集中の合宿型プログラムです。各プログラムには、経験豊富なメンター・ファシリテーターが伴走し、フィードバックを行うことによってアウトプットの質を高めていくプログラムです。
最後が、「オンラインイベント」です。これは、世界中で活躍する、各分野のフロントランナーとインタラクティブに繋がり、参加者同士のディスカッションや気付きの共有を通して、実践のきっかけを提供するオンラインイベントを開催しています。
これらの事業や活動などを通じて、自宅から世界へ繋がる機会、自宅から世界に挑戦する機会を提供しています。オンラインだからこそ、地球規模で挑戦できる機会が得られるわけです。
―次回に続く―
(注1)ギグワーク(GW)とは、「単発の仕事」を選択し、自らのサービスを提供する働き手のこと。つまり、「ギグエコノミー」という経済形態を支える働き手のこと。欧米が発祥といわれる。空き時間を活用し、会社などの組織に拘束されない自由な働き方である。
(注2)アジャイルとは、「機敏な」「すばしっこい」という意味の英語表現のこと。「『俊敏な』『すばやい』という意味の英単語で、要求仕様の変更などに対して、機敏かつ柔軟に対応するためのソフトウェア開発手法。従来は、要求仕様を満たす詳細な設計を行ったうえで、プログラミング開発や試験工程に移行するウォーターフォールモデルと呼ばれる手法が主流だったが、この方法では、開発途中での仕様変更や修正が困難で、技術革新や企業環境の変化に即応することが難しくなった。アジャイルでは、仕様や設計の変更があることを前提に開発を進めていき、徐々にすり合わせや検証を重ねていくというアプローチをとる。」(出典 ASCII.jpデジタル用語辞典)
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・「超実践教育機関「タイモブ」の華麗なる挑戦…国を超え、世代を超え、コロナ禍を超えて(3、了)」
[対談者略歴等]
〇菊地恵理子:タイガーモブ株式会社 代表取締役CEO
関西学院大学総合政策学部在学中に1年間休学し、蘇州大学に語学留学の後、上海のインターンシップではホテル業を経験する。大学卒業後に入社した株式会社ジョブウェブでは4年間勤務。新卒採用の営業職に従事したのち、「タイガーモブ」の前身となる海外事業部を立ち上げる。ジョブウェブ退職後、「タイガーモブ」を設立し、急成長するアジア新興国を中心に、アフリカ、南米、中東等世界各国での海外インターンシップの機会を提供。世界42か国での多種多様で実践的なビジネスインターンシップを通して、時代を牽引するリーダーを輩出している。
第16回女性起業家大賞・スタートアップ部門特別賞、イノベーションにあふれた女性経営者を表彰する「EY Winning Women 2018」では、ファイナリスト5名に入る。また、内閣府主催のシンポジウム「つなぐ、架け橋~アジア・太平洋で活躍する女性起業家たち~」にて、アジア等で活躍する女性起業家として選出された。
2016年4月設立で、次のような事業を行う教育実践機関。
・海外インターンシップ、コミュニティサイト”タイモブ”の運営
・小学生/中学生/高校生/大学生/社会人向け海外インターンシップ・海外研修の企画・実施
・企業向け社員研修の企画、実施
・集客支援
・グローバル人材採用支援
●タイガーモブ の名前の由来
「虎のように、勢いよく未来に向かって突き進め」という意味を込めています。
Be A Tiger!!