特捜部のしょぼい捜査を大々的に取り上げるメディアの愚
フーテン老人世直し録(484)
極月某日
クリスマスの日に東京地検特捜部に逮捕された秋元司衆議院議員の「IR疑惑」についてメディアは連日大々的に報道している。小沢一郎衆議院議員の秘書を務めた石川知裕衆議院議員の逮捕(政治資金規正法違反容疑)以来およそ10年ぶりの現職議員逮捕、あるいは容疑が収賄であることから鈴木宗男元衆議院議員(現参議院議員)以来およそ17年ぶりの本格政界捜査と報道する。
メディアは東京地検特捜部が何か凄い捜査をやっているかのような印象を国民に振りまいているが、ロッキード事件で東京地検特捜部を取材した経験のあるフーテンにはそうは思えない。なぜこんなしょぼい捜査で大騒ぎさせるのか、本当の狙いは何かという気になる。
メディアの中には「IR疑獄」と表現し、秋元議員逮捕はほんの入り口で、事件は横にも縦にも広がると捜査の行方に期待を抱かせるのもあるが、もし東京地検特捜部が「IR疑獄」の摘発に乗り出すのなら、こんなしょぼい捜査はやらない。
しょぼいと言うのは秋元議員が「IR構想」を担う中核にいたことは間違いないが、所詮は副大臣でしかなく決定権を持つ人間ではないからだ。決定権はもっと上にあり、その上に進言できる立場にあったというに過ぎない。
「IR」事業参入を目的に副大臣に接触する業者がいるとすれば、おそらく本命ではなくその周辺の業者と言うことになる。今回問題となっている中国の「500ドットコム」という会社はその程度のものだと思う。フーテンには特捜部が「IR」の中心ではなく周辺の小さな事件を捜査しているだけに見える。
秋元議員に同行して「500ドットコム」を訪問した自民党議員2人の事務所が家宅捜索を受け、秋元議員とパチンコ業者の関係に捜査の矛先が向かうのも、横への広がりや縦への広がりを狙ったとは思えず、議員心理を揺さぶり、秋元議員に対する「悪」の印象付けを狙った嫌がらせの感が強い。
安倍政権の掲げる成長戦略としての「IR構想」のど真ん中にいるのはトランプ大統領のお友達であるラスベガス・サンズなど米国のカジノ業者である。トランプ大統領に気に入られるため安倍総理は「IR」に飛びついたが、旗振り役を担ったのは菅官房長官だった。
沖縄問題に力を入れている菅官房長官は、一時は「IR」を沖縄に作る事を考えたようだが、県知事選で野党候補の玉城デニー氏に敗れ、その可能性は遠のいた。すると次に菅官房長官は北海道に作ることを考える。自民党内の反対を押し切って、今年4月の北海道知事選挙に夕張市長を擁立して当選させたのはそういう意味だとフーテンは見ていた。
今回の事件で秋元議員と「500ドットコム」の接点として再三登場するのが沖縄と北海道であることは、この事件の背後に菅官房長官の存在があることを特捜部は印象づけている。それでは捜査は官房長官や総理を巻き込むところにまで行くかと言えばそうはならないと思う。
この記事は有料です。
「田中良紹のフーテン老人世直し録」のバックナンバーをお申し込みください。
「田中良紹のフーテン老人世直し録」のバックナンバー 2019年12月
税込550円(記事6本)
2019年12月号の有料記事一覧
※すでに購入済みの方はログインしてください。