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ジャニーズ海外進出の扉を開く、Travis Japanが成し遂げた快挙

徳力基彦noteプロデューサー/ブロガー
(出典:America's Got Talent 公式YouTube)

BTSをはじめとしたK-POPが世界で注目を集める一方で、日本のJ-POPはなかなか世界に出ていくのは難しいと言われ続けてきました。

ただ、そんな思い込みを吹き飛ばす快挙をTravis Japanが成し遂げ続けていることをご存じでしょうか?

Travis JapanはジャニーズJr.内の7人組の男性アイドルグループ。

2022年3月に日本での活動を一旦休止し、アメリカに無期限で留学するという、最近のジャニーズのグループとしては非常に珍しい挑戦を選択したことで話題になりました。

参考:Travis Japan 7人全員でLAダンス留学 3月下旬に出発 少年隊以来38年ぶり

ジャニーズ事務所所属グループの海外留学は実に38年ぶりということで、Travis Japanの留学が発表されたときには、一部のファンの間でも混乱があったようですが、その後、着々と海外留学の成果を上げ続けているのです。

「アメリカズ・ゴット・タレント」で審査を通過

その中でも最大の快挙と言えるのが、アメリカのオーディション番組「アメリカズ・ゴット・タレント」に出演し、見事審査を通過したことでしょう。

日本では知らない人もいるかもしれませんが、「アメリカズ・ゴット・タレント」は、視聴率世界1位を獲得したこともある全米屈指の視聴率を誇る大人気番組です。

しかも、その人気の背景にあるのは、審査員による忖度無しの厳しい審査。

本当に素晴らしいスキルを持ったタレントでなければ予選を勝ち抜くのは難しいと言われています。

過去に日本から出場して大きな話題になったゆりやんレトリィバァさんも、審査を通過することはできなかったのです。

参考:ゆりやん米国番組出演の大反響から考える、世界における日本の「お笑い」の可能性

ダンスコンテストの活躍が番組のオファーに

しかも、実際に番組の動画を見て頂くと、Travis Japanがただ審査を通過したわけではなく、観客も審査員も全員を魅了して会場をスタンディングオベーションの輪に包んだことが分かると思います。

パフォーマンスを始める前から既に熱狂的なファンがいるようにも見えますが、これは実はTravis Japanが3月から米国での活動をしていたことが影響している模様。

この「アメリカズ・ゴット・タレント」に出場することができたのも、日本で有名な事務所に所属しているからと言うことではありません。

3月にカリフォルニアで開催されたダンスコンテストに出場し、チーム部門3位に入り、ベストコスチューム賞およびクラウド・フェイバリット賞を受賞したことが、番組担当者からのオファーにつながったそうです。

「アメリカズ・ゴット・タレント」出演後、メンバーの吉澤閑也さんが体調不良により一定期間活動を休止するというニュースもありましたから、全てが順風満帆なわけではありません。

ただ、その後もTravis Japanの勢いは止まらず、米国時間の7月29日に開催された「ワールド・オブ・ダンスチャンピオンシップ 2022」では4位に入ったという報告がされています。

参考:TravisJapan、ダンス大会『WOD』で全米4位を報告 世界大会チーム部門に進出

さらに今日は、世界のチームトップ10を決める大会に出場されるそうですから、ファンにとってはますます楽しみが拡がっていると言えるでしょう。

日本でのキャリアを全て諦めて

SNSを通じて素晴らしいパフォーマンスは国境や言語の壁を越えて拡がる時代にはなっています。

ただ、やはりTravis Japanが日本での活動を休止してまで、アメリカに活動の拠点を移し、本気の米国挑戦をしたことが今回の快挙につながっていると言えるでしょう。

「アメリカズ・ゴット・タレント」で、Travis Japanのメンバーが英語で審査員とのマイクパフォーマンスを繰り広げるシーンも実に印象的です。

特に象徴的なのが、審査員に「夢は何か」と聞かれ「世界一のスターになることです」と答えた後、「その夢のために、日本でのキャリアも家も全て諦めてきた」と話しているところでしょう。

これまでも日本で成功したアーティストが、その成功を足がかりに米国進出に挑戦することは多々ありましたが、Travis Japanの凄みは、日本での活動を休止し本気で米国での活動に注力している点にあると言えます。

そのためにInstagramなどのSNS活用も、K-POPのアーティスト同様に英語を先に母国語を後にするという活用に明確に切り替えているのです。

(出典:Travis Japan公式インスタグラム)
(出典:Travis Japan公式インスタグラム)

上記の投稿にも「ジャニーさんありがとう。見守っててね。」と書かれていますが、ジャニーズのグループの全米進出は、2019年に亡くなったジャニー喜多川氏の悲願であったとも言われます。

参考:ジャニーさんのかなわなかった夢「全米1位」

早速、ジャにのチャンネルにもリモート出演するなど、ジャニーズ事務所全体が盛り上がっていることも伝わってきます。

日本の野球選手はメジャーリーグに通用しないと言われた思い込みを野茂投手やイチロー選手が払拭し、日本のサッカー選手は海外では通用しないと言われた思い込みを三浦知良選手や中田英寿選手の挑戦が払拭していったように。

J-POPが海外に通用しないと言われた思い込みを、今回Travis Japanが払拭してくれたのは間違いありません。

これから他のジャニーズのグループはもちろん、多くの日本のアーティストがさらに海外に挑戦していくことを期待したいと思います。

noteプロデューサー/ブロガー

Yahoo!ニュースでは、日本の「エンタメ」の未来や世界展開を応援すべく、エンタメのデジタルやSNS活用、推し活の進化を感じるニュースを紹介。 普段はnoteで、ビジネスパーソンや企業におけるnoteやSNSの活用についての啓発やサポートを担当。著書に「普通の人のためのSNSの教科書」「デジタルワークスタイル」などがある。

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