Yahoo!ニュース

ゆりやん米国番組出演の大反響から考える、世界における日本の「お笑い」の可能性

徳力基彦noteプロデューサー/ブロガー
昨年3月にも、記者発表会で英語のスピーチが途中から日本語になるというネタを披露(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 お笑い芸人のゆりやんレトリィバァさんが、米国のオーディション番組「アメリカズ・ゴット・タレント」に出演した映像がネット上に公開され、日本でも大きな話題になっています。

参考:世界よ、これがゆりやんだ! 米オーディション番組で“笑い”勝ち取った姿に称賛の声「度胸があって素晴らしい」

 冒頭のYouTubeの動画は、再生回数は100万回超え、さらにツイッター上に公開された動画は既に600万再生を超え、コメント欄に投稿されている字幕バージョンも30万再生を超えています。

 番組における反響の大きさは、とにかく動画を見て頂ければと思いますが。

 オーディションこそ通過できなかったものの、見事な英語のトークと、ゆりやんさんらしい独特なダンスで会場を沸かせ、審査員の一人はスタンディングオベーションで称えるほど。

 最後の納得いかないくだりとか最高です。

 同じ日本人として誇らしい気持ちにすらなる出演シーンでした。

 

 日本では、アメリカズ・ゴット・タレントはそれほど有名ではないかもしれませんが、2006年から放送が開始され、10年以上の歴史があり賞金はなんと100万ドル(約1億円)という超人気番組。

 2013年に、日本人ダンサーの蛯名健一さんがアジア人として初優勝して、情熱大陸などでも取り上げられていますから、この映像をご存じの方は多いのではないかと思います。

 

お笑いは海外展開が難しい?

 日本のお笑い界にとって、言語が異なる欧米などの海外は非常にハードルが高いと考えている方は多いと思います。

 私自身は、日本テレビの番組「電波少年」を毎週のように見ていた人間ですので、アメリカにお笑いで挑戦というと、2000年に電波少年でダウンタウンの松本人志さんが「アメリカ人を笑わしに行こう」という企画に挑戦されていたのを思い出してしまう世代ですが。

参考:松本人志がアメリカに「笑い」で挑んだ! 『電波少年』の伝説企画

 その後、この企画が継続せず、類似の企画が出てこなかったあたりに、日本のお笑い界にとっての海外進出の難しさを感じたのを覚えています。

 上記の記事にもあるように、国際派日本人俳優といえば渡辺謙さん、国際派日本人ミュージシャンといえば坂本龍一さん、国際派日本人映画監督といえばビートたけしさん、など、様々な分野に世界で活躍する日本人はいますが、国際派お笑い芸人といわれて名前が挙がる人はまだいない気はします。

 ただ、今回のゆりやんさん出演の大反響から改めて感じるのは、やはり日本のお笑いも海外で通用する可能性が十分あるという点です。

 

海外進出は日本でトップになってからという時代の終わり

 日本人が、海外進出というと、まず日本で成功してから海外に出て行こう、と考えがちです。

 スポーツでも、野球では野茂選手やイチロー選手、サッカーでは三浦カズ選手や中田選手が、日本でトッププレイヤーとしての地位を確立してからヨーロッパリーグへの挑戦をしたように。

 ビジネスでも、日本企業が日本市場のトッププレイヤーになってから海外進出を検討するように。

 まずは日本で成功して、それからその実績をもとに海外市場でも勝負してみる、と考えるのが普通だと思います。

 ただ、最近はスポーツやビジネスでも、いきなり10歳でバルセロナと契約した久保建英選手のように、最初から海外に挑戦する日本人選手や日本企業がでてきているように、お笑いにおいても日本のお笑い芸人が、もっと早い段階で海外挑戦するというケースが増えてきても良いのではないか、というのが今回のゆりやんさんが見せてくれている可能性だと思います。

 もちろん、ゆりやんさんは、そもそも日本でも第47回NHK上方漫才コンテストや第1回女芸人No.1決定戦 THE Wでの優勝経験がある実力者でもありますから、米国でもウケて当然、という見方もできると思います。

 それでも、いわゆる松本人志さんやビートたけしさんのような、日本のお笑い界のトップに君臨しているわけではありません。

 逆に、若いからこそ、こういった海外への挑戦に積極的に挑むことができるということもできるかもしれません。

お笑いも徐々に海外での成功事例が積み上がりはじめている

 また、日本のお笑いが国境を越えたのは、今回が初めてではありません。

 2016年には、古坂大魔王さんがプロデュースするピコ太郎の動画「PPAP」が再生回数1億回を超えて、世界中でブレイクしたのが記憶に新しい人も多いと思います。

参考:ピコ太郎に学べ SNS主導の逆輸入型ブーム 

 また、日本のインスタの女王として有名な渡辺直美さんも、2016年には初のワールドツアーを成功させ、今年の4月から本格的にNY生活をスタートさせ、日本と海外の仕事を半分にすることを宣言して話題になりました。

参考:渡辺直美、本格的にNY生活スタート「日本と海外のお仕事を半分に」新たな挑戦にエール相次ぐ

 当然、ベテラン勢も黙っているわけではなく、松本人志さんがプロデュースしてAmazonプライムで配信されているバラエティー番組「ドキュメンタル」は、翻訳されて200カ国以上で配信され人気を博し、メキシコ版まで制作される流れになっています。

参考:優勝賞金100万ペソ、メキシコ芸人10名が激突する「ドキュメンタル」来週配信

 そう、実は松本さんは、20年近く前の「アメリカ人を笑わしに行こう」の続きに挑戦し続けているんですよね。

 今年世界で話題になった日本人といえばなんと言っても、Netflixで番組が大ブレイクした、こんまりさんだと思いますが。

参考:こんまりメソッドの世界的大ブレイクから考える日本のコンテンツの未来

 NetflixやAmazonプライムのような動画配信サービスの世界的な普及と、YouTubeやTwitterのようなソーシャルメディアの普及によって、コンテンツが簡単に国境を越えて世界から注目される時代が到来しているわけです。

 

 もちろん、お笑いにおいて、言語の壁というのは間違いなく高い壁ではありますが。

 ゆりやんさんの堂々たるやり取りを見ていると、日本のお笑い芸人が世界をまたにかけて注目される日は、遠くないような気がするのは私だけではないはずです。

noteプロデューサー/ブロガー

Yahoo!ニュースでは、日本の「エンタメ」の未来や世界展開を応援すべく、エンタメのデジタルやSNS活用、推し活の進化を感じるニュースを紹介。 普段はnoteで、ビジネスパーソンや企業におけるnoteやSNSの活用についての啓発やサポートを担当。著書に「普通の人のためのSNSの教科書」「デジタルワークスタイル」などがある。

徳力基彦の最近の記事