日米首脳会談はいよいよ国民に見えない水面下の本物の交渉に入った
フーテン老人世直し録(281)
如月某日
10日に行われた日米首脳会談は想定通りの内容になった。安全保障では米国が沖輪の尖閣諸島を対日防衛義務を定めた日米安保条約第5条の適用範囲であると確認し、経済では麻生副総理兼財務大臣とペンス副大統領の間で経済関係強化のための枠組み作りを進めていくというものである。
尖閣への安保条約第5条の適用は、前回のブログにも書いたが米国にとっては痛くもかゆくもない。米国の基本原則は他国の領土問題に関わって自国の利益を損ねることは決してしないところにある。
米国は中国にびくつく日本から「言ってくれ」とせがまれるから言うだけで、そのために米国民の税金を使うことや米国民の血を流すことはしない。反面、適用すると言えば日本国民の税金が米国経済を強化するために使われ、米国経済にプラスになることが約束されるので言う。
これほど割の良い話はない。さらにそれを言えば日本人は米国の利益が日本の利益になると考えてくれるのだから大歓迎である。安倍総理をフロリダの別荘に招待するぐらいは安いものでお釣りが余るほどの話になる。
このところ移民問題で司法との関係を批判されてきたトランプ大統領は、日米首脳会談後は終始ご満悦の表情で会見に臨み、日米の協力関係を大いに持ち上げる一方、首脳会談の内容を具体的には言わず、これからフロリダの別荘で安倍総理と長い時間を一緒に過ごすことで「交渉を行う」と会見を締めくくった。
フーテンはここからが本当の首脳会談、トランプの言うディール(取り引き)が始まるとみている。おそらくビジネスマンとしてのトランプはこれまでもゴルフをやりながら数々のディールを行ってきたはずだ。ゴルフ場はトランプにとってディールのホームグラウンドなのである。
そこに安倍総理は引き込まれた。本人は祖父の岸信介がアイゼンハワー大統領とゴルフをやって信頼関係を築いた事を真似したいのだろうが、アイゼンハワーとトランプでは人間性に「月とスッポン」の差がある。第二次大戦の将軍で組織を束ねてきた人物と不動産業というヤクザな世界を生きてきた人間が同じであるはずはない。
しかも岸信介は吉田茂の敷いた「対米従属路線」を変更し、米軍を日本本土から撤退させて自主独立を勝ち取るために安保改定を行おうとした政治家である。社会党の加藤シズエらの提案を受け入れ、米国の前にまずアジア諸国との信頼関係を築き、それをバックに米国との交渉に臨んだ。その意味で米国大統領との信頼関係を構築する必要はあった。
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