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18歳未満は出入り禁止! ラーメン店と客のトラブルはなぜ続くのか?

山路力也フードジャーナリスト
「18歳未満入店お断り」のラーメン店がある。

人気ラーメン店での客とのトラブル

オープン前から多くの人が訪れる人気店『あなたの心を鷲掴み』(福岡県八女市)。
オープン前から多くの人が訪れる人気店『あなたの心を鷲掴み』(福岡県八女市)。

 ラーメン店における客とのトラブルが絶えない。福岡県八女市にある人気店『あなたの心を鷲掴み』の店主、三浦隆寛さんは自身のSNSで客との間に起こったトラブルについて時折発信しているが、その大半は入店待ちの行列に対するトラブルで、SNS上ではその対応に賛否が分かれている。

毎日毎日、入店お断りする人がいます。私達は、暴言吐かれたり・文句を言われてまでラーメンを提供するつもりは一切ありません。代表待ち・割り込みを認める気も一切ありません。お店はお客様に選んでいただけるよう最善を尽くしています。お店にも選ぶ権利があります。(あなたの心を鷲掴み@三浦の一言より)

 『あなたの心を鷲掴み』では一人で他の人の分も並ぶ「代表待ち」が禁止されているが、それでも代表待ちをする客が後を絶たない。客にルールを説明すると怒鳴られたり文句を言われてしまう。店主の三浦さんと三浦さんの母親、妹の3人で営業されており、三浦さんは厨房にいるためそのクレームを受け止めるのは母親や妹だ。だから三浦さんは家族を守るためにルール違反の客に厳しい対応を取らざるを得なかった。

「18歳未満入店お断り」の理由とは

『あなたの心を鷲掴み』(福岡県八女市)のラーメンは超濃厚なスープが自慢。
『あなたの心を鷲掴み』(福岡県八女市)のラーメンは超濃厚なスープが自慢。

 「代表待ち」そのものに是非はない。確かに自分の前に1人しかいないと思っていたのに、後から5人も6人も来たら「割り込み」のように感じてしまう客もいるのは事実だ。しかしながら、行列を作りにくい立地の店では代表待ちを推奨している場合もあり、その店の置かれている状況によって変わる。要は店側が最適であろうと考えた結果が、その店のルールとなっている。

 『あなたの心を鷲掴み』で代表待ちする客の多くは子供のいるファミリー客だった。そしてその大半は「子供を並ばせたくない」という理由で代表待ちしており、注意をすると暴言などを吐かれることが少なくなかった。三浦さん自身は家族連れの客にも来て貰いたい思いがあったが、暴言を吐かれる自分の母親や妹を守るため、苦肉の策として「18歳未満入店お断り」の札を掲げることになったのだ。

 周辺には行列する飲食店がほとんどなく、ある意味「行列慣れ」していない客が多い地域にある人気ラーメン店。中には「なぜラーメンを食べるのに並ぶ必要があるのか」と言う客もいたという。客側の戸惑いも分からないことはないが、それとルールを守らなかったり、ましてや店の人に暴言などを吐くことは別問題だ。

迷惑駐車や喫煙マナーなどのトラブルも

ラーメン店における迷惑駐車問題も切実だ。
ラーメン店における迷惑駐車問題も切実だ。

 ラーメン店における迷惑駐車問題も切実だ。ラーメン店を利用するために路上に違法駐車したり、近隣のコンビニや飲食店の駐車スペースを無断で使用したり、時には通行や出入りの妨げになるような停め方をする。その結果、周辺の店舗や住民から店に対してクレームが来て、営業の妨げになるという流れだ。

 また店の前や周辺における喫煙マナーもトラブルの元となる。そもそも都内では路上など大半の場所は禁煙になっているが、入店待ちや食べ終わった後などに店の前で煙草を吸い、その吸い殻を店の前に捨てていくような客も少なくない。火事の危険性はもちろんのこと、受動喫煙の問題や環境美化の観点からも問題がある。

 言うまでもなく、これらのトラブルに対して店側の落ち度や責任は一切ない。違法駐車をしたり煙草のポイ捨てをした人間に全ての責任がある。社会生活を営む上で最低限のモラルやマナーが備わっていれば、このようなトラブルは生じない。常識のない人間の行為に対して、店側が責任を感じたり心を痛める必要なないのだ。

「想像力の欠如」がトラブルの元になる

基本は「他人に迷惑をかけない」ということ。
基本は「他人に迷惑をかけない」ということ。

 もちろん中には店ごとのルールに対して、それを知らない客と店側のトラブルなどもあるが、それは店側の注意喚起が足りなかったり、貼り紙などを見落とした客の落ち度などが原因で、どちらが良い悪いという問題でもない。例えば使用後のティッシュをどこに片付けるかに関しては、ゴミ箱に捨てて欲しいという店もあれば、卓上にそのまま置いておいて欲しいという店もある。

 他にも店内でスマホなどを見ながら食べるのを禁止している店もあれば、漫画などが置いてあって長居がOKの店もある。店内禁煙の店もあれば喫煙可の店もある。前述したように18歳未満お断りの店もあれば、子連れ大歓迎の店もある。店が決めた独自のルールに関しては、守りたくない人はそういう店を利用しなければ良いだけのことだ。

 SNSなどを発信源として可視化されてきた、ラーメン店などの飲食店と客とのトラブル。しかしながら、そのほとんどは飲食店特有のことではなく、「他人に迷惑をかけない」「自己中心的な行動を取らない」など、社会生活をする上で必須なモラルやマナーを守っていないことから生じていることは間違いない。

 現代社会においては、自己中心的な行動を取っている人が一定数いるということが、ラーメン店でのトラブル事例から見えてくる。自分が取った行動が周囲に迷惑をかけてはいないか、相手の立場に立った行動が取れているか。その想像力を持てなければ、ラーメン店を利用するのはおろか、社会生活も営む資格はない。自戒の意味も込めて、もっと思いやりの持てる社会になることを願う。

※写真は筆者によるものです。

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フードジャーナリスト

フードジャーナリスト/ラーメン評論家/かき氷評論家 著書『トーキョーノスタルジックラーメン』『ラーメンマップ千葉』他/連載『シティ情報Fukuoka』/テレビ『郷愁の街角ラーメン』(BS-TBS)『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日)『ABEMA Prime』(ABEMA TV)他/オンラインサロン『山路力也の飲食店戦略ゼミ』(DMM.com)/音声メディア『美味しいラジオ』(Voicy)/ウェブ『トーキョーラーメン会議』『千葉拉麺通信』『福岡ラーメン通信』他/飲食店プロデュース・コンサルティング/「作り手の顔が見える料理」を愛し「その料理が美味しい理由」を考えながら様々な媒体で活動中。

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