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安芸から宜野座へ!―その2・原口選手が育成では初の沖縄キャンプ《阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
安芸キャンプ、雨の日のブルペンにて。受け終わって笑顔の原口選手。

きのう24日に終了した安芸キャンプ。その最終日の練習には参加せず、ルーキーの高山選手と板山選手、そして原口選手は沖縄へ移動しました。その前に少し話せた原口選手は、緊張しているかと聞いたら「常に気持ちが悪いです。胃が痛くなりそう」と言っていたんですが、沖縄のキャンプ宿舎へ到着した様子を見たところ、引き締まったいい顔でしたね。キャンプ自体は1クールのみで5日間。でも1軍滞在の“延長”は十分に可能です。

以前の記事でもご紹介しましたが22日、試合内容を振り返っていた掛布監督から、おもむろに「もうすぐキャンプが終わるけど、“一番がんばったで賞”は板山だろう。あと原口だな、野手部門は。ピッチャーは守屋、青柳か。田面も頑張った」という、2日前倒しで安芸キャンプMVPの発表がありました。

そんな3人のうち、ルーキー・高山選手と板山選手の“山山コンビ”については<その1>で、掛布監督の談話とともに書いています。こちらでご覧ください。<安芸から宜野座へ!―その1・ルーキーの高山選手と板山選手>

きょうは<その2>、原口選手編です。

マスクとヒットで、めんそーれ!

その前に、きょう25日の練習試合・日本ハム戦(宜野座)で原口文仁選手は、小宮山選手に代わって守備から出場しました。合流して早々にマスクをかぶり、7回は高宮投手、8回は高橋投手、9回は二神投手と、なんと3イニングをパーフェクトのナイスリード!その中には今成選手や横田選手の素晴らしい守備もあります。一方、打つ方は7回裏の初打席、1死一塁で日本ハム・瀬川投手に対して三ゴロ。本来はこれで終わりのところですが、申し合わせにより行われた9回裏に回ってきました。

これは23日、安芸キャンプ最後のロングティーバッティングです。
これは23日、安芸キャンプ最後のロングティーバッティングです。

屋宜投手から今成選手と高山選手(安芸と同じ?ピッチャー強襲の内野安打)の連打で一、二塁として、横田選手がセンターへ2点タイムリー二塁打。無死二塁で原口選手は三遊間を抜く左前打を放って一、三塁とチャンスを広げ、代打・緒方選手が左前タイムリー。5連打でなおも無死一、二塁。中谷選手は遊ゴロで1死一、三塁となり、続く北條選手が大きな中犠飛。原口選手は楽々ホームイン!という経過です。

さっそく感想を聞いています。走攻守で貢献したので、それぞれコメントしてくれました。まず守備。「思ったよりも普通に入っていけたので、よかったです!高橋さんは試合中に挨拶して、いきなりゲームで捕ったのでドキドキでした」。そうですよねえ。中日から来た高橋聡文投手の球はまだ受けたことがなかったでしょう。でもしっかり構えたところに投げてくれて、さすがでした。

次は打撃。「やってきた通りのスイングができているので継続していきます!」。サードゴロもよかったですもんね。最後に走塁。「得点できたのでよかったです!北條が大きいのを打ってくれたので、僕でも大丈夫でしたね(笑)」とのこと。僕でも(笑)。はい、余裕の生還で何よりです。

相手の日本ハムには帝京の先輩・杉谷拳士選手、後輩・松本剛選手がいて、ちょうどマスクをかぶっているとき打席に立ちました。1軍の交流戦でまた会えるように、と誓い合ったかもしれません。我々も楽しみです。それと、新聞によれば28日の紅白戦で秋山投手が投げるとか?久しぶりの同級生バッテリーも期待してしまいますねえ。

安芸キャンプでの成績

1日に『安芸1号』を放った原口選手。シート打撃ながら監督に促されて一周。
1日に『安芸1号』を放った原口選手。シート打撃ながら監督に促されて一周。
やはりシート打撃ですが、坂選手にもHRを祝福?されました。
やはりシート打撃ですが、坂選手にもHRを祝福?されました。
俊介選手ともタッチ。ちなみに左側の赤い手袋は…そう一二三選手です。
俊介選手ともタッチ。ちなみに左側の赤い手袋は…そう一二三選手です。

それでは、安芸キャンプでの原口選手の話を。まず実戦の成績です。実戦形式として1日に行われたシートバッティングでは、田面投手から左中間二塁打、小嶋投手から左前打、石崎投手から左本塁打と気を吐きました。初実戦だった11日のハンファ戦では、狩野選手の代打で出た6回に初球を打って、左中間フェンス直撃の二塁打!次は遊ゴロ併殺打で2打数1安打です。

続いて14日のJR四国戦は4番キャッチャーでフル出場。3打数ノーヒットながら1年半ぶりの実戦マスクでした。スタメンマスクとなると、実に2年4ヶ月ぶりのことだったんですね。第4クール・21日のハンファ戦は4回に鶴岡選手の代走で出て、そのままマスクをかぶっています。打撃成績は1三振と1四球。そして22日の高知戦は、狩野選手に代わって3回から出場し、まず代打の3回は右飛、2打席目が5回2死三塁で左翼線へのタイムリー二塁打、7回は右飛。

これらの詳細や本人のコメント等は、こちらからどうぞ。

<初日のシート打撃 原口選手が第1号を含む3打数3安打!>

<1年半ぶりの「キャッチャー・原口」>

<最後の練習試合は完封勝ち そして山山コンビと原口が沖縄へ!>

3ケタの選手が初めて沖縄へ

23日の練習後、正式に“昇格”を伝えられたという原口選手。でも実は23日のスポーツ紙に、もう決まったという旨の記事が出ており、実家から電話があったと苦笑いしていました。ぬか喜びにならなくて何よりです。ご両親は本当に喜んでいらしゃるでしょうね。妹さんも「がんばってもらって支配下に戻れたら」と期待を込めます。

資料を見た限りでは、育成で入団した選手や育成契約となった選手が“宜野座キャンプ”に参加するのは初めてでしょう。1軍が合流後の第2次安芸キャンプから、そのまま残留したりオープン戦に呼ばれたり、もちろん秋季キャンプにも何人か参加していますが、沖縄へ行くチャンスはなかなかありません。昨年の秋季練習(甲子園)で金本監督の目を引き、この安芸では初日から力強い打撃を披露。再び支配下へ、そして初の1軍出場へと道が見えてきました。

いつも通り遅くまで練習をし、しかも翌24日の午前には高知を離れ(伊丹経由で)那覇へ入るため荷作りもあって、取材に応じてくれたのは最後の方でした。まず感想を聞かれ「緊張しますね」とひとこと。そうそう、掛布監督も「固くなるから」と心配していたんですよ。力が入ってしまうんでしょうね。「緊張せずにというのは難しいですが、元気を出してやりたいと思います」

キャンプの荷物を積みタクシーに乗った原口選手。撮影用に窓を開けてくれました!
キャンプの荷物を積みタクシーに乗った原口選手。撮影用に窓を開けてくれました!

このキャンプで結果を出せたのでは?「いや~まだまだですよ。もっともっとアピールしていかないといけないので、頑張ります」。この前日に、掛布監督からの『一番がんばったで賞』に名前が挙がった時も「『もっとがんばりま賞』ですよ」と謙遜していました。これ以上どう頑張るんだ?というくらい頑張っていることは周知の事実です。本人は絶対に否定しますけどね。

向上心をもってギラギラと

沖縄での抱負を聞かれると「キャッチャーをやっているところを生で見てもらわないと。それに1軍のピッチャーのボールは捕っていなかったので、元気を出してどんどん(投手陣と)しゃべっていかないと。打つ方でもアピールしないと、その先もないと思うので。全部ですね」と答えています。今から飛び込む1軍キャンプは「テレビで見ているとギラギラした感じ」という印象。よって「途中で行く僕たちも負けないようにギラギラしていきたい」そうです。

安芸での3週間は自信になった?「それは…。やってきたことを続けられるように」。さすが、記者の質問につられて大きなことは言わない原口選手でしょう?。やってきたことには、“腰と肩をレベルに強く振る”、また夜間練習の素振りで言われた“左足全体で着地する”など、掛布監督の教えもあります。「今も意識して、継続してやっています。沖縄でもいろいろ言ってもらえると思うので、また向上心を持ってやっていきたい」

昨秋に金本監督から言われたこと、そして掛布監督のアドバイスなどで効果が出ている点は?「バッティング練習で、大きいのがはるかに出るようになりました。それをゲームで出せるように」。つまり飛距離の伸びた当たりが増えている、ということですね。豪快にフェンスを直撃する当たりや、さらにその上を越えていくホームランも遠慮なく打ってきてください。小虎ファンの皆さんは期待していますよ。

「準備とケアは当たり前のこと」

原口選手は長らく腰痛に苦しみ、そのため4年目の2013年からは育成契約となりました。キャッチャーでの出場機会は減ったものの、腰の心配がなくなってきた矢先の2014年秋のフェニックス・リーグで、帰塁する際に右肩を痛めてしまったのです。だから安芸キャンプでも別メニューで過ごす姿が記憶にあり、ことしのように最初から最後まで本隊にいてフルメニューをこなせたのが、まず嬉しい。

真剣な表情でコーチの話を聞く“キャッチャー”原口選手。
真剣な表情でコーチの話を聞く“キャッチャー”原口選手。

本人も「やっと、って感じですね」と言います。年明けから「腰も肩もまったく問題ない」と。それゆえにベストパフォーマンスができるわけで、この届いた吉報はもう最高のタイミング!と思ったのですが、もしかすると精一杯の努力をしているからこそ、もたらされたチャンスだと思えます。休日でも体のケアに訪れる姿勢を褒められた原口選手は「準備とケアは野球をやっていく以上、続けていかなければいけないこと。普通のことです。当たり前のこと」と言い切りました。

生真面目な性格ですからねえ。その真面目さは取材でも出ます。体のケアについて「何かやっていることはありますか?たとえば朝ぶろに入るとか」という質問で「僕は朝風呂には入らないタイプです。湯冷めして逆によくないから」と真剣に答えました。たとえば、だからね、原口くん。で、朝のルーティンとしては「ケガをしてから、朝ストレッチは続けている」そうです。

ことしはキャッチャーミットのみ!

ことし7年目、背番号『52』を手放してから4年目。いま迎えた大きなチャンスを、キャッチャーとして勝ち取りたい原口選手。「沖縄にファーストミットは持っていかない」との記事を見たんですが、それは少し違いますね。安芸キャンプへ行く時の荷物にも、他のグラブは入れていません。キャッチャーミットだけを携えてキャンプインしたのです。練習試合で一塁を守った時のファーストミットは借り物でした。

これは3日の特守の様子ですが、沖縄へ行く前日も山田コーチ(左)と特守。
これは3日の特守の様子ですが、沖縄へ行く前日も山田コーチ(左)と特守。
ヒットの原口選手を称える筒井コーチ(右)。みんな応援しています!
ヒットの原口選手を称える筒井コーチ(右)。みんな応援しています!

23日、安芸キャンプ最後の練習は山田バッテリーコーチとの特守で締めくくっています。「やりたいことも、確認したいことあったから」。この時はもう沖縄行きを伝えられていたそうです。山田コーチは「よかったよねえ。頑張ってこいよと言いました。向こうでもキャッチャー?もちろん!」とのこと。また原口選手の入団時からを知る筒井打撃コーチも「ほんと嬉しいですよ。ふみだけに余計嬉しい。ずっと見てたからね。一生懸命やってきたのを」と自分のことのように喜んでいます。

そして1月の自主トレを一緒にやろうと声をかけた俊介選手にも聞きました。俊介選手のおかげですね。縁起のいい自主トレだったのかも。「いえいえ、それ以前から誰よりも真面目に、一所懸命やっていた子やから。僕は関係ないですよ。あの時も熱心にやってたもんね。だから僕も嬉しいです!すごく」。他の先輩方も「よかったなあグッチ」「ふみ頑張ってこいよ」と。あたたかいエールを力に変えて、望むすべてを沖縄でつかんできてください!

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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