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ぴよりんの先輩「シャチボン」。伝説のスイーツが11年ぶりに復活した理由とは?

大竹敏之名古屋ネタライター
不揃いなのもかわいい?インパクト抜群のキャラスイーツはSNS時代でより輝くか?

ぴよりんの先輩スイーツ。後輩の人気に頼らず一本立ち目指す

名古屋のシンボル・金のシャチホコをかたどったシュークリーム「シャチボン」。2000年に発売され、JR名古屋駅構内のカフェなどで販売されてきましたが、2011年2月に「休養宣言」し、販売休止となりました。

このご当地スイーツが何と11年ぶりに復活することに。2022年6月8日にJR名古屋駅構内の「カフェデンマルク」で発売となりました。

シャチボンを販売するのはジェイアール東海フードサービス。そう。今、大ブレイク中のぴよりんの製造販売元です。ぴよりんはもともとシャチボンが販売休止になった後、「新たな名古屋名物を」と開発され、2011年7月にデビューしました。シャチボンはいわば大ヒット商品・ぴよりんの先輩スイーツなのです。

(関連記事:「販売数は10年で26倍!名古屋発スイーツ『ぴよりん』人気急上昇の理由」2021年6月30日)

ということは、ぴよりんの人気にあやかってシャチボンも復活することになったのでしょうか? 

ぴよりんとは関係なく、シャチボン自体の魅力が復活の理由です!

こうきっぱり言い切るのはジェイアール東海フードサービス・事業部ベーカリー課の三原貴志さん。「ぴよりんとコラボすれば一時的に話題になるかもしれませんが、シャチボンが長く愛される存在になるために、現状はまったく考えていません」と当初から一本立ちした売り出し方に徹するといいます。

お客様からの“シャチボンをまた食べたい”という声が、復活の何よりの要因です。そして、私たちの間でも何年も前からもう一度つくりたい、という思いがあったのです」(三原さん)

新生・シャチボンのロゴデザイン。金色(シュー皮)・黒(チョコレートの目玉)・赤(イチゴの舌)の3色を使い、ちょっとレトロな書体でファニーなキャラクターを表現
新生・シャチボンのロゴデザイン。金色(シュー皮)・黒(チョコレートの目玉)・赤(イチゴの舌)の3色を使い、ちょっとレトロな書体でファニーなキャラクターを表現

復活の最大の課題だった製造の難しさ

そもそもシャチボンが11年前に販売休止になったのは、決して不人気だったからではありませんでした。

皮のパーツが多く、しかも手焼きのため非常に手間がかかるんです。さらに販売していた喫茶店が閉店することになってしまったので、やむなく“休養宣言”することになりました」(三原さん)

思えばあくまで「休養」とうたっていたのは、“いつの日かまた…!”という思いがこの時点で既にあったからだとも考えられます。

しかし、復活までに11年かかったのは、やはり販売中から悩みの種だった製造の難しさがネックとなったからでした。

「外部のケーキ屋さんに委託製造していたのですが、そのお店が閉店してしまったんです。製造の他、特殊な形のため配送も簡単ではない。とにかくいろんな現場へ行って熱意を伝えて回りました。そんな折、かつてのシャチボンの製造責任者であるシェフと再会できたことが大きなきっかけに。理想の姿に近づけるために自分たちでも何度も試作をし、開発を進めました」(三原さん)

ジェイアール東海フードサービスの三原貴志さん。「シャチボンが不在の間、金鯱の歴史などをあらためて勉強しました。歴史も愛着もある金鯱を、味の面でも慣れ親しまれる存在にしたいと思っています」
ジェイアール東海フードサービスの三原貴志さん。「シャチボンが不在の間、金鯱の歴史などをあらためて勉強しました。歴史も愛着もある金鯱を、味の面でも慣れ親しまれる存在にしたいと思っています」

フォルムはそのまま、おいしさは進化。ラッキーシャチボンも(?)

新生・シャチボンづくりのコンセプトは「基本に忠実に」。かつてのシャチボンのファンの声を受けての復活なので、ルックスも味わいも以前通りに再現することが基本路線となりました。

とはいえ当時のレシピは残っていないため、スタッフらの舌の記憶と照らし合わせながら商品開発は進みました。その結果、三原さんは「以前よりも間違いなくおいしくなっています!」と胸を張ります。

「基本的な方向性は以前の通りなのですが、材料もよくなっているのでそれに合わせて完成度も向上しています。クリームはよりなめらかで香りもよくなり、皮もしっとり焼き上がっています。尾びれの先までクリームを詰めているのも変更点です」

筆者もひと足先に実食。皮は確かに以前と比べて柔らかな印象。クリームはバニラのフレーバーがしっかりと感じられ、クリームはカスタードと生クリームの2種類、さらに目玉のチョコ、舌のイチゴがアクセントになって味の変化を楽しめます。ボリュームもあり食べ応えも十分です。

さらにはもうひとつ、遊び心あふれるお楽しみも。表情が通常とは異なる「ラッキーシャチボン」を時々まぎれ込ませる計画なのだとか。どんなラッキーな顔つきで、どれくらいの頻度で登場するかはシークレットだそうなので、是非自分の目で見つけてください。

まず尾びれを取って食べるのがオーソドックス(?)。どこから食べるか?でもSNSが盛り上がりそう。テイクアウト594円、イートイン605円
まず尾びれを取って食べるのがオーソドックス(?)。どこから食べるか?でもSNSが盛り上がりそう。テイクアウト594円、イートイン605円

時代がシャチボンに追いついた?キャラの強さはSNS時代にマッチ

かつての販売店だった「カフェアローム」で店長を務めていた三原さんは、シャチボンの存在感は今の時代にこそマッチしているといいます。

イートインのお客様は必ず『かわいい!』『どこから食べよう?』と声を上げて召し上がっていて、黙って食べる方はいませんでした。今はスマホ、SNSがありますから、見てかわいい、食べておいしいシャチボンは、皆様で広く楽しさを共有していただけるはずです!」

取扱店はベーカリーカフェJR名古屋駅うまいもん通り広小路口の「カフェデンマルク」。ぴよりんショップのすぐ南側にある。行く行くは「シャチボンショップ」(?)を持ちたいという野望も・・・?
取扱店はベーカリーカフェJR名古屋駅うまいもん通り広小路口の「カフェデンマルク」。ぴよりんショップのすぐ南側にある。行く行くは「シャチボンショップ」(?)を持ちたいという野望も・・・?

見た目のインパクト、面白さ、かわいらしさはすべて“映え”要素として今どきのスイーツには欠かせないもの。シャチボンはそのすべてを合わせ持ち、11年の休養中に時代がシャチボンに追いついたともいえます(!?)。

最近の名古屋では、ぴよりんを筆頭に、カエルまんじゅうケロトッツォ、そしてSNSで話題沸騰している鯱もなかなど、キャラクター性のあるお菓子が人気を博しています。これもやはりSNSで発信する際、親しみを感じてもらいやすいからでしょう。名古屋のシンボルをモチーフとし、少々キャラが濃い目のシャチボン。名古屋のスイーツシーンでどんな存在感を発揮してくれるか楽しみです。

(写真撮影/すべて筆者)

名古屋ネタライター

名古屋在住のフリーライター。名古屋メシと中日ドラゴンズをこよなく愛する。最新刊は『間違いだらけの名古屋めし』。2017年発行の『なごやじまん』は、当サイトに寄稿した「なぜ週刊ポスト『名古屋ぎらい』特集は組まれたのか?」をきっかけに書籍化したもの。著書は他に『サンデージャーナルのデータで解析!名古屋・愛知』『名古屋の酒場』『名古屋の喫茶店 完全版』『名古屋めし』『名古屋メン』『名古屋の商店街』『東海の和菓子名店』等がある。コンクリート造型師、浅野祥雲の研究をライフワークとし、“日本唯一の浅野祥雲研究家”を自称。作品の修復活動も主宰する。『コンクリート魂 浅野祥雲大全』はその研究の集大成的1冊。

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