岸信介の遺産を破壊する安倍総理
フーテン老人世直し録(108)
神無月某日
かつて世界で最も理想的と言われた日本の年功序列賃金が見直される運命にある。安倍総理は政労使会議で「年功序列賃金の見直し」に言及し、来年の春闘ではそれが焦点の一つになりそうだ。またパナソニックやソニー、日立などの企業ではすでに取り組みが始まっており、年功序列賃金に対して「年齢差別」との批判も出てきた。
これは戦後の日本が驚異的な経済成長を成し遂げ、なおかつ世界で最も格差の少ない国家を作り上げたやり方を全面的に改め、アメリカに代表されるアングロ・サクソン的価値観の国づくりへの転換を意味する。安倍総理がその旗振り役なら、祖父の岸信介氏らが創りだした日本型資本主義を孫が破壊する話になる。
冷戦を終結させ、最初で最後のソ連大統領となったミハイル・ゴルバチョフ氏は、かつて日本を「世界で唯一成功した社会主義国家」と呼んだ。経済を自由市場に任せるのではなく、政府が計画的な産業政策によって民間企業を誘導し、貧富の格差のない平等社会を創りだしたからである
それを可能にしたのは「年功序列賃金」「終身雇用制」「企業別労働組合」という日本特有の制度にあった。中でも年功序列賃金は社会主義のレベルを越え、共産主義のレベルにまで達する理想の制度として評価された。
この記事は有料です。
「田中良紹のフーテン老人世直し録」のバックナンバーをお申し込みください。
「田中良紹のフーテン老人世直し録」のバックナンバー 2014年10月
税込550円(記事6本)
※すでに購入済みの方はログインしてください。