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剛力彩芽さんと前澤氏が一直線といわれる「事実婚」とはどういう関係なのか

竹内豊行政書士
剛力彩芽さんと前澤氏が「事実婚」に一直線だそうです。(写真:アフロ)

剛力彩芽さんと前澤友作氏が、今後「事実婚」に邁進するだろうというコメントが報じられました。

前澤氏とは昨年11月に破局が報じられたが、今年4月に復縁が伝えられた。個人事務所の設立にも同氏のバックアップがあったとされる。結果的に、オスカーは剛力に振り回されっぱなしのまま、退社されてしまった。

「独立後、剛力は自由になり、2人は公私にわたって関係を深めていくでしょう。ただ、前澤さん自身はかねて結婚に否定的なため、事実婚になるでしょうね」(知人)

出典:偽りのオスカー円満退社 剛力彩芽&前澤氏「事実婚」へ一直線

そこで今回は、お二人の関係がそうなるかもしれないという事実婚について見てみたいと思います。

「事実婚」とは

1980年代後半から、自分たちの主体的な意思で婚姻届を出さない共同生活を選択するカップルが社会的に広がり始めました。代表的な理由は次のようなものがあります。

  • 夫婦別姓の実践
  • 家意識や嫁扱いへの抵抗
  • 戸籍を通じて家族関係を把握・管理されることへの疑問
  • 婚姻制度の中にある男女差別や婚外子差別への反対
  • 結婚観が民法の規定する婚姻関係に合わない  など

このような理由で当事者が主体的に婚姻届を出さないことを選択して共同生活をするカップルの関係を事実婚と称します。

「法律上の夫婦」ではない

さて、民法の規定では、婚姻は、婚姻届を役所に届け出ることによって成立すると規定しています(民法739条1項)

民法739条(婚姻の届出)

1.婚姻は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。

2.前項の届出は、当事者双方及び成年の証人2人以上が署名した書面で、又はこれらの者から口頭で、しなければならない。

したがって、事実婚は、婚姻届を出さない共同生活のため、外形上は夫婦でも、「法律上の夫婦」ではありません。

そして、近代的な法制度では、家族の基礎となる婚姻を法の規制と保護の対象とし、婚姻外の関係については、法的規制もしない代わりに法的保護もしないという立場をとます。

「法律上の夫婦」に認められて「事実婚の夫婦」には認められないもの

法律上の夫婦は保護されるが、事実婚を選択したパートナーには認められないことの一つに相続権があります。

婚姻関係の夫婦は、お互い「配偶者」として2分の1の法定相続分があります。婚姻関係にあれば、婚姻関係が破綻して「仮面夫婦」であろうが長期間別居をしてようが相続権はあります。実際に、婚姻関係が破綻していても、配偶者の相続が発生すること(つまり、配偶者の死亡)を期待して離婚しない人もいます。

一方、事実婚を選択したパートナーは、いくら仲良く暮らしていても相続権はありません。したがって、パートナーが死亡した場合、遺産を受け取る権利はありません。つまり、法定相続分はゼロです。

改正相続法でも蚊帳の外

平成30(2018年)年7月6日に、改正相続法(「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」)が成立し、同年7月13日に公布され、令和元年(2019年)7月1日に、施行されました。この相続法改正は実に約40年振りです。

この改正相続法によって、残された配偶者(夫が先に死亡した妻を想定)の保護を目的に「配偶者短期居住権」「配偶者居住権」が設けられました。

また、結婚20年以上の夫婦なら、配偶者が生前贈与や遺言で譲り受けた住居は「遺産とみなさない」という意思表示があったとして、遺産分割の計算対象から除外するなど、婚姻20年以上の夫婦に優遇策を設けました。

さらに、相続の不公平感の是正を目的として、「相続人以外の者の貢献を考慮するための方策」として、たとえば、義父を介護してきた「息子の妻」などが相続人に金銭を請求できる制度を設けました。

しかし、上記のいずれの保護対象者も法的に夫婦関係にある者としており、事実婚のパートナーはすべての保護規定も対象外です。

「事実婚」と「遺言」はセットで

このように、婚姻関係にある夫婦と比べて事実婚を選択したパートナーは法的保護がどうしても脆弱です。その法的保護の脆弱性を補い、パートナーを守る盾になるのが「遺言」です。

遺言は法律で決められた法定相続分を修正できる機能があります(民法902条1項)

民法902条1項(遺言による相続分の指定)

被相続人は、前二条(筆者注:「900条 法定相続分」「901条 代襲相続人の相続分」)の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。

しかも、今回の改正相続法では、自筆証書遺言に添付する「財産目録」をパソコンで作成できるようにするなど、自筆証書遺言の方式が緩和され、遺言が作成しやすくなりました。

事実婚を選択したら、「婚姻届」は書かなくても、「遺言」は書いて交換することをお勧めします。

パートナーと別れてしまったら

出会いがあれば別れがあるのが世の常です。「パートナーに財産を残す」という内容の遺言書を残したのに、残念ながら別れてしまってもご安心ください。遺言はいつでも撤回(将来に向かって無効にすること)ができます(民法1022条)

民法1022条(遺言の撤回)

遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。

具体的には、「〇〇へ遺贈するとした遺言はすべて撤回する。」としたうえで新たな遺言を作成するのがいいでしょう。

今後は、「ライフスタイルの自己決定権」を基に、事実婚を選択するカップルが一層増えることが予測されます。それに備えて、相続法をはじめ、事実婚を選択した方への法的保護の整備が求められます。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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