菅直人氏は口頭の厳重注意処分で済む話なのか
フーテン老人世直し録(433)
卯月某日
立憲民主党所属の菅直人元総理が統一地方選挙前半戦を終えた9日、「国民民主党は解散して立憲との再結集に参加するのが望ましい」とツイッターに書き込み批判された問題で、枝野幸男代表は13日に口頭で厳重注意したことを明らかにした。
ツイッターの内容も問題だが、口頭での厳重注意という軽い処分をみて、立憲民主党が政権交代を狙う真の野党でないことがますますはっきりしたとフーテンは思った。この党は自公連立政権から権力を奪うより、自党の勢力拡大に目を奪われ、それが野党陣営を分断することになると理解していない。これこそ自公連立を補完する利敵行為と言うべきだ。
菅直人氏を含め立憲民主党の面々は、統一地方選前半戦の結果を反省していない。県議選などで自民党に過半を超える議席を与え、知事選でも唯一の与野党対決となった北海道で大敗したにもかかわらず、野党第一党としての反省の言葉がない。そして参院選につなげる答えが、国民民主党に解散を迫ることだった。
自民党の二階幹事長が、選挙戦全体では勝利しているものの、保守分裂となり与党推薦知事候補が2人落選した選挙区があることや、大阪ダブル選挙で維新に大敗したことを「大いに反省し、敗因を分析して、参院選に向け一枚岩で取り組んでいきたい」と語ったのと対照的である。こちらは与党の結束を訴えている。
9日の菅氏のツイートは、「統一地方選の前半戦が終了した」と書いた後、与野党の戦いがどうであったかに向かわない。野党の再編がどうなるかだけに向かう。政令市議選などで立憲民主党が国民民主党より議席を増やしたことを言いたいのか「野党再編の道筋がはっきりしてきた」と書く。
そして「小池都知事が結成した希望の党と民進党とが合併した国民民主党は、政治理念が不明確なので解散し、参院選までに個々の議員の判断で立憲との再結集に参加するのが望ましい」と書いたのである。おそらく本人は正直な思いを正直に書いたのだろう。しかしそれは政治家の資質を疑わせるに充分である。
東日本大震災は菅氏にリーダー失格の烙印を押した。その記憶は政治家だけでなく国民も共有している。その菅氏から「解散しろ」と言われて解散する政党があるとは思えないが、自分の思惑を正直に表明すれば、逆の結果になるのが政治の世界で、それを理解できない人物が政治家を務めるべきではないと思う。
フーテンは昔からなぜ菅氏が野党のリーダーの一角を占めているのか不思議だった。例えば2004年の年金未納問題がある。夏に参院選が控えていた通常国会の最重要課題は年金の負担を増やし支給を押さえる年金法改正案の成立で、国民には受け入れ難い法案だった。
当時の小泉政権がどういう手を使うか見ていると、4月末に3人の現職閣僚が国民年金の支払いを未納にしていた事実が報道された。年金は支払わなければ受け取ることもできないので金を騙し取った話ではないが、菅民主党代表は参院選を意識して当時流行していた「だんご3兄弟」になぞらえ「未納3兄弟」を激しく攻撃した。
すると菅氏にも未納のあることが分かる。激しく攻撃した手前、菅氏は代表を辞めざるを得なくなる。未納の政治家はほかにも多数いて、最後は小泉総理も未納であることが分かったが、未納を激しく糾弾する野党とメディアの対応は国民から飽きられ、そうした中で年金法改正案はろくな議論もないまま成立することになった。
フーテンは政権側が国民の目を法案に向けさせないために未納をリークし、それに未熟なメディアや野党が乗せられた結果だと考えた。代表を辞めた菅氏は頭を丸めて四国お遍路の旅に出て、帰京した直後に当時フーテンが運営していたCSチャンネル「国会TV」に出演した。
フーテンが「政権のリークに踊らされたのではないか」と質すと、菅氏はむっとした表情で「メディアがきちんと報道してくれなくては困る」と言った。「野党の指導者がメディアの報道に頼るようでは日本は救われない」とその時フーテンは思った。世界中どこでも権力側の情報で動くのがメディアである。それを知らないのが菅氏だった。
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