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久保建英。「フィジカル面の改善」より重要なチェックポイント。目指すはチャナティップ

杉山茂樹スポーツライター
(写真:岸本勉/PICSPORT)

 フィジカル。サッカー界で最近、頻繁に使用されている外来語を挙げるならば、この言葉が一番ではないか。とりわけ好んで使用しているのはテレビに出てくる解説者。指導者講習会等で普通に使われているのだろう。実況アナ氏も、それにつられるように一緒になってフィジカルを使う。影響力の強い人が発すれば、流行が広がるのは当然だ。ネットの記事でも頻繁に見かける。見出しやタイトルにまで使われる。フィジカルを見聞きしない日はないと言っても大袈裟ではない。

 その大半は、本来の形容詞としてではなく、「フィジカルが弱い」など、名詞として使われている。もはやそれが普通になりすぎて、校閲も黙認しているのだろうか。それはともかく、その使用率が上がれば上がるほど、フィジカルっていったい何と疑念が沸く。使い勝手のいい便利な言葉かもしれないが、何でもかんでもフィジカルの一言で片付けるなと言いたくなる瞬間に、たびたび遭遇する。

 もしフィジカルが存在しなければ、特に名詞として使用される機会が封印されれば、どんな日本語に置き換えられるだろうか。体格、体力、走力、瞬発力、スピード、跳躍力、身体能力、運動能力、肉体能力、パワー、敏捷性、俊敏性、持久力、筋力、体幹、推進力、スプリント能力、強度、バネ……。フィジカル面には、数多の要素がある。

「フィジカル面で成長する必要がある」とは、先日、ヘタフェのホセ・ボルダラス監督がスペインの通信社の記者に答えたとされる久保建英評だ。しかし、掲載されたコメントにはフィジカル面としか出ていなかった。それ以上の言及はなかった。

 スペイン人はそれで理解できるのかもしれないが、日本人にとってフィジカルは、抽象的で曖昧、かつ物足りなく感じる言葉だ。サッカーファン、とりわけ久保ファンならばなおさらだろう。雑な返答なのか、親切心溢れるアドバイスなのか、それさえも分からない。とても重要な設問に、ヘタフェの監督は大雑把に答えているという感じだ。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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