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WBCによせて~野球の「ガチ応援オタク」の未婚率が女性だけ異常に高いのはなぜ?

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:イメージマート)

祝!WBCベスト4進出

WBCが大きな盛り上がりを見せている。

大活躍する「侍JAPAN」をスタジアムだけではなく、パブリックビューイングや自宅のテレビの前で応援する人も多い事だろう。一次リーグのテレビの視聴率は全試合高視聴率であったこともニュースで伝えられている。

別に野球の記事を書きたいわけではない。独身研究家なので、これだけ多くの人が熱狂する野球好きの人たちの未婚率はどれくらいだろうと思ったので。

とはいえ、野球好きの人たちの調査などしていない。

そこで、以前、オタク種類別の未婚率の記事を出した際の調査を元に、「野球やサッカーのプロスポーツチームを応援するオタク」のデータを収集していたので、それを活用して算出してみたい。

野球だけではなくサッカーの応援オタクも含まれているが、そこはご了承いただきたい。

オタク種別未婚率の記事はこちら

男女で違うオタク種類別の未婚率~結婚しやすいオタクと結婚しにくいオタク

ガチ応援勢の未婚率

ちなみに、上の記事を読んでいただければわかるが、女性未婚率の高いオタク趣味の上位ベスト3は、1位「アイドル」、2位「野球・サッカーチームの応援」、3位「アニメ」なのである。なんと「野球・サッカーチームの応援」オタク女子の未婚率は2番目に高い。

とはいっても、今回のWBCを応援する女性が未婚率高いということの因果にはならない。上記はあくまで「野球・サッカーチームの応援」のガチオタクを自認する対象だけだからだ。

当然、サッカーのW杯でもそうだが、こうしたスポーツイベントにおいてはその時だけ盛り上がる「にわかファン」というものも存在する。「野球・サッカーチームの応援」をしに、スタジアムなどに行った経験はあっても、応援オタクというほどではないという人たちである。

今回、そのガチ応援オタクとにわかファンと全体とで未婚率に違いがあるかを見ていこう。

結果は以下の通りである。20-50代全体を合算した場合の未婚率で比較している(注意:生涯未婚率とは違う)。

通常、未婚率は男>女となるものなのだが、「野球応援ガチオタク」に関して言えば男女逆転している。しかも、相当女性の割合が高い。全体の全国値に比べても高いのだ。

男性に関しては、ガチオタクもにわかファンも全国平均もほぼ変わらないが、女性に関してだけは、ガチオタクが抜きんでて未婚率が高い上に、にわかファンの未婚率は逆にかなり低いのである。

年代別未婚率の比較

さらに、年代別に見ていこう。

男性は、30-40代で多少ガチオタクの未婚率が高いが、それでも全国値とほぼ変わらないし、にわかファンはむしろ全国値よりも少しだけ未婚率が低い。

対して、女性の方は、まずガチオタクであれ、にわかファンであれ、30-40代の未婚率は全国値よりも多いことがわかる。特に、ガチオタク女性に関していえば、40-50代での未婚率が男性全体よりも高い。これは非常に興味深い結果である。

思うに、今回のWBCにおいても大谷翔平選手をはじめとしてスーパースター選手が集結している。プロ野球選手になるだけでもすごいことなのに、その中から選ばれて日本代表という人たちである。チームを応援するという面もありながら、誰か特定の選手を推している人たちも多い事だろう。

特定の選手を応援して、その選手が活躍してくれればこんなに嬉しいこともないだろう。しかし、これは「アイドル」オタクの面々にも言えることだが、そうした一般人より抜きんでたレベルの人たちにいつも注目するあまり、自分の周りにいる人たちが魅力的に見えない、または眼中になくなるという傾向もあるのではないか。もっというなら、一般の男たちは「物足りない」と思ってしまうのかもしれない。そんなスーパースターと比較されて勝てる一般男性などそうそういない。

そもそも「推し活」をしている人全体に言えることだが、その活動をしている最中は、それ以外に関心を失うということもあるだろう。オタクとはそういうものだからだ。

それ自体を全然否定しないし、むしろそれがオタクとしての幸福なのだが、何事ものめりこみすぎると現実生活に支障をきたす。「推し活」のし過ぎで、金を浪費したという話もよく聞く話だが、あまりに、こうした応援オタクにハマることは自分の時間を膨大に費やしていることも間違いない。楽しい時間は一瞬に過ぎるので気付けないのだが…。

結婚の年齢制限

もちろん、中にはそもそも恋愛や結婚に興味のない層も一定数いるので、それは自由にしたらいいと思うが、もし心のどこかに「いずれは結婚したい」という気持ちがあるのなら、「楽しい、うれしい」の世界に行きっぱなしになるのではなく、祭りと日常を区別していくことも必要だろう。

不都合な現実を言えば、統計上、年齢による結婚可能割合が決まっている。例外はあるにしろ、大体35歳をすぎれば結婚可能性は3割に落ち、40歳以上になると1割に落ちる。一方で25-29歳では70%以上に可能性は高まる。結婚したいのであれば25-29歳がねらい目であることは間違いのない事実である。

「結婚したい時に縁はなし」結婚には見えざる年齢制限がある

写真:イメージマート

そういう意味では、そこまで没入せず、にわかファンの女性の未婚率が、40代以降急激に下がるのも納得できる。祭りは祭りとして楽しみながらも、30代までに現実の結婚のチケットも同時にちゃっかり手に入れているのだろう。そして、いつの間にか、応援する相手が自分の子どもたちになっているのだろう。

但し、単純に、40代以降の女性は既婚者の「にわかファン」が異常に増えただけの計算上のマジックであり、未婚者の結婚する・しないは全く関係ないという話もあることも付け加えておく。

いずれにせよ、対象が誰であれ、何であれ、応援したい相手がいるということはしあわせなことである。

頑張れ、侍JAPAN!

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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