【本当に塩分は足りてる!?】ドクターランナーとして、この暑さの中で運動する人にひとつだけ伝えたいこと
夏のランニングの際は、水分補給と塩分摂取が必須になります。バランスよく補うためスポーツドリンクや経口補水液を利用できればよいのですが、水やお茶しかない場合、塩タブレットや塩飴を利用することが多いと思います。ですが塩タブレットや塩飴を摂取していても、塩分不足でふらつきや吐き気を生じる方を見かけます。塩タブレットや塩飴では、塩分が足りないのでしょうか?
塩タブレット・塩飴を過信しないで
自分も以前、塩タブレットを多用していました。走りながらだと摂取しにくいので、夏の練習では2-3個、フルマラソンのレース中では3-4個程度が限界でした。ですがそれでは、塩分の補給としては不十分なようです。主要なスポーツドリンク、経口補水液、塩タブレット・塩飴の塩分量を比較してみましょう。
前回の記事で書いた通り、夏場の運動時はしっかり塩分をとることが必要なのですが、それを塩飴だけでとなるとだいぶ厳しいことがわかります。暑熱の中の運動中では、1時間に1Lの水分を摂取することが推奨されています。ミネラルウォーターを摂取しながら、経口補水液なみの塩分濃度とするためには、1時間に1Lの水と約30個の塩飴や塩タブレットが必要なのです。ですがゆっくり溶ける塩飴や塩タブレットは急いで補給・大量摂取することが難しく、それに頼るとどうしても塩分不足になりやすくなります。
先週公開した「夏のランニングでは水分・塩分をどのくらい摂ればいいの?」の記事の中の、フルマラソンを走ったときの汗中の電解質のグラフに当てはめると、例えば水200ml+一般的な塩飴1個を電解質濃度で示すとこの程度です。暑さやトレーニング強度・時間や体質によっては、もちろんこれで大丈夫な人もいます。ですが長時間の暑熱環境で運動強度の高い練習をする、つまり持続的にたくさんの塩分と水分が失われる場合、塩飴や塩サプリでは足りない可能性が大なのです。塩飴や塩サプリは、スポーツドリンクや経口補水液に加えて、補助的に用いるようにしてください。
塩タブレットや塩飴ではなく、すすめたいもの
「これはしょっぱくなくて美味しい!」と感じる塩飴の多くは、塩分が少な目です。運動をして大量に発汗するようなときは、これでは不足します。そんなときは、普段はしょっぱくてとても食べられないと感じるような食品も有効です。
梅肉・練り梅はチューブで売っていて、簡単に手に入ります。ランニング中に摂取するときは、手の甲にニューっと絞り出して使用します。3cmほど絞り出すと約4gくらいなので、塩分が0.9g程度含まれています。水300mlにこの練り梅をあわせると、経口補水液の塩分濃度となります。また酸っぱいものが苦手な方は、塩昆布もおすすめです。少し多めの一つまみが4gで、塩分は0.9g程度です。同じように水300ml+塩昆布一つまみで経口補水液の塩分濃度となります。夏のランニングの際は、塩飴よりも摂取しやすいので利用してみてください。「1時間に1Lの水と梅肉または塩昆布を3回補給する」そんな補給戦略を、運動の強度や気候、自分の体質によりアレンジしてみてください。