舛添辞任が大政局になってきた背景に権力の暗闘を感ずる
フーテン老人世直し録(229)
水無月某日
フーテンが「泡のような政治家の泡のような金の話」と書いた舛添要一東京都知事の進退問題が参議院選挙と絡んで大政局の様相を帯びてきた。舛添氏の動きは安倍政権内部の力関係にも影響を与える可能性がある。
安倍政権にとって選挙へのマイナス影響を避けるには、アメとムチを使って舛添氏を辞任に追い込む必要がある。表ではムチを使うが裏ではアメも用意する。一方、舛添氏は解散権をちらつかせながらアメの値段をつり上げる。だから簡単に応じない。しかしぎりぎりになってもし舛添氏が辞任を申し出れば、アメが舛添氏の思い通りになったことを意味する。
しかしこれは裏の話であるから決して表には出てこない。だから政治を見るときに国民は目の前の動きだけで判断するのではなく、過去からの流れを見て、また長いレンジで政治を観察する必要がある。
前にも書いたが舛添氏の公私混同疑惑は驚くような話ではない。他の政治家も多かれ少なかれやっている「よくある話」である。舛添氏は政界の先輩たちを見習って同じことをやったに過ぎない。金額的にはむしろいじましいレベルである。
ただ舛添氏が他の政治家と違うのは、学者であるからやり方を研究し尽くし、他の政治家が後ろめたさを抱きながらやることを、自信をもってやったことである。
かつて竹中平蔵という経済学者が住所を海外において節税していることが暴露された。しかし本人は全く悪びれない。経済学者の中には合法的に税金を払わない手法を研究する人間が少なくなく、彼らにとってはむしろ自慢なのだ。
それと同じで政治学者舛添要一は、政治家になったとたんに政治資金規正法を研究し、何が違法で何が合法かを知ったうえで、政治資金を私的なことに使う手法を磨いてきた。だから悪いとは思っていない。したがって暴露されても頭を下げない。
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