吊橋が名物！目の前に大井川を望む小さな無人駅 大井川鐡道本線 塩郷駅（静岡県榛原郡川根本町）
「箱根八里は馬でも越すが、越すに越されぬ大井川」と歌われ、東海道屈指の難所とされた大井川。江戸時代には防衛上の都合から橋が一本も架けられず、渡船も禁止されていたため、東岸の駿河国志太郡と西岸の遠江国榛原郡を文字通り隔てる存在だった。流域での電源開発を目的として建設された大井川鐡道（本線）は4本の橋を大井川に架けたが、他の多くの川と比べると両岸を結ぶ橋は今なお少なく、地域を隔てる存在に変わりはない。そんな大井川の雄大さを特に感じられる駅が塩郷駅だ。
塩郷駅は大井川と県道77号川根寸又峡線に挟まれた立地で、駅前には交通量の多い県道が通っている。駅前に人家はあまり多くないが、観光名所として知られる久野脇橋（塩郷の吊橋）があるため、観光客目当ての飲食店が川を挟んで三軒立地している。列車を使って吊橋を訪れる観光客は多くないようで、令和元年度の一日平均乗車人員はわずか6人だった。
ホームからは目の前に雄大な大井川を望むことができる。どこまでも続きそうな深い山間を流れる大河。雨が降っていたこの日、山には雲がかかり水墨画のような風景だった。
ホーム上にはブロック造りの小さな待合室がある。入口には蜘蛛の巣が張られ、訪れる人の少なさを思わせた。令和4（2022）年9月24日の台風15号で被災して以来、塩郷駅を含む区間では一年以上に渡って列車の運行が休止されている。
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