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自粛8週目 規制緩和進む北欧ノルウェー、街の様子は今

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事
社交的距離を保ちながら日差しを楽しむ市民 撮影:あぶみあさき

ノルウェーで最初の感染者が発表されたのは2月26日。それからは毎日、感染者数が増加し続けた。

首都オスロの街の変化を、写真を見ながら振り返ってみる。

4月17日(金)。オスロ中央駅前。すでに街に人の姿は増えていた 撮影:あぶみあさき
4月17日(金)。オスロ中央駅前。すでに街に人の姿は増えていた 撮影:あぶみあさき

ノルウェー政府は3月12日から、国境管理の厳格化、住所登録されている自治体以外での余暇施設での宿泊禁止などの規制を開始。

入国者・帰国者・感染者は14日間の自宅隔離となり、違反した場合は罰金または最高6ヶ月の懲役刑に処せられる。

1~2メートルの社交的距離をお願いするスーパー 撮影:あぶみあさき
1~2メートルの社交的距離をお願いするスーパー 撮影:あぶみあさき
消毒液は至る所に用意されている。スーパーの入り口で。日本ほど混雑しないので、店内で入場規制はない 撮影:あぶみあさき
消毒液は至る所に用意されている。スーパーの入り口で。日本ほど混雑しないので、店内で入場規制はない 撮影:あぶみあさき

そのほかの規制として、

  • 幼稚園・保育園から大学までの全ての教育機関は閉鎖
  • 文化事業・スポーツ事業・組織化されたスポーツ活動は屋内外を問わず禁止
  • 互いの距離を1m以上あけることが不可能な場合の施設は営業停止。飲食店では、基本的には「食品を提供する」かどうかが判断基準。食品提供がある場合は営業可能。バーやパブなどの食品提供がない飲食店は営業停止
  • ビュッフェ形式の食品提供は禁止
  • ジム・スイミングプールなどの施設は閉鎖
  • 美容院・スキンケア・マッサージ・ボディーケア・タトゥー・ピアスなどの施術を行う施設は閉鎖

公共交通機関は通常通り運行された。

4月18日(土)。もともとノルウェーは多くの場所で日曜営業が禁止されているので、土曜日に快晴という条件が加わると人が増える。通りではお店が食品の販売をしていた 撮影:あぶみあさき
4月18日(土)。もともとノルウェーは多くの場所で日曜営業が禁止されているので、土曜日に快晴という条件が加わると人が増える。通りではお店が食品の販売をしていた 撮影:あぶみあさき

「外出禁止令」は出されておらず、可能であれば外出は避け、在宅勤務をするように政府は要請。

要請なので、毎日それでも会社に通勤する人もいれば、外を出歩く人もいる。

「オスロでは人が外出しすぎている」と議論になることも 4月18日のグリーネルロッカ地区 撮影:あぶみあさき
「オスロでは人が外出しすぎている」と議論になることも 4月18日のグリーネルロッカ地区 撮影:あぶみあさき

「街から人が消えた」という印象を受けるかどうかは、その人の住む場所や移動エリアにもよるだろう。

住んでいる場所によっては、「みんな家にいるんだな」と静かになった光景に驚くかもしれない。

4月18日 撮影:あぶみあさき
4月18日 撮影:あぶみあさき

首都オスロの中心部によっては、驚くほどに人が密集している場所もある。

マスクをしている人はほとんどいない 4月18日 撮影:あぶみあさき
マスクをしている人はほとんどいない 4月18日 撮影:あぶみあさき

レストランやカフェなどは、臨時休業する店もあれば、テイクアウェイのみで営業を続ける店もある。

天気がいい日ほど、人は外出したくなる 4月23日(木)オスロ中央駅前 撮影:あぶみあさき
天気がいい日ほど、人は外出したくなる 4月23日(木)オスロ中央駅前 撮影:あぶみあさき

4月7日、ソールバルグ首相は記者会見を開き、ウイルス感染拡大がコントロール下に入ったため、社会的機能を少しずつ再開していくと発表。

北欧は酒に関する法律がもともと厳しい。料理に使うためのお酒も国営酒屋で買わなければいけない。店内では入場制限があり、お店前には1メートルの社交的距離をとりながら、市民が列に並んでいた 4月23日 撮影:あぶみあさき
北欧は酒に関する法律がもともと厳しい。料理に使うためのお酒も国営酒屋で買わなければいけない。店内では入場制限があり、お店前には1メートルの社交的距離をとりながら、市民が列に並んでいた 4月23日 撮影:あぶみあさき

段階的な規制緩和の一例(感染拡大防止対策が守られている場合):4月20日から幼稚園・保育園の再開、27日から美容院・学童保育・小学校4年生までを対象に再開

スターバックスはまだ臨時休業中 4月23日 撮影:あぶみあさき
スターバックスはまだ臨時休業中 4月23日 撮影:あぶみあさき

4月30日、政府は5月7日から50人までのイベントであれば開催可能と発表(責任者となるイベントの開催者がいること、人同士が1メートルの社交的距離をとることが条件)。

少ない観客とはなるが、劇場、映画館などは再開できることになるので、文化業界からは歓迎の声があがった。

ムンク美術館があるトイエン地区の公園。人が密集しているようにも見えるが、政府が決めた5人までの集会・社交的距離を守っている人が多い 4月23日 撮影:あぶみあさき
ムンク美術館があるトイエン地区の公園。人が密集しているようにも見えるが、政府が決めた5人までの集会・社交的距離を守っている人が多い 4月23日 撮影:あぶみあさき

9月1日まで500人以上が集まるイベントは禁止されているので、夏の音楽祭やスポーツ行事は中止となっている。

郵便局前の行列(店内の入場制限のためで、列に並ぶ人たちの社交的距離は守られている)。ノルウェーでは郵便物は自宅まで配送されないことがほとんどなので、市民は郵便局まで取りにいく 4月30日(木) 撮影:あぶみあさき
郵便局前の行列(店内の入場制限のためで、列に並ぶ人たちの社交的距離は守られている)。ノルウェーでは郵便物は自宅まで配送されないことがほとんどなので、市民は郵便局まで取りにいく 4月30日(木) 撮影:あぶみあさき

臨時休業を決めていた店も、続々と再開。

私は郵便局を併設する近所のスーパーまで荷物を毎回取りに行く。どこのスーパーでも、買い物かごの手持ち部分が頻繁に消毒されている光景は見かけない。かごを使うことにためらいはあるが、支払い後にレジにある消毒液を必ず使うようにしている 4月30日 撮影:あぶみあさき
私は郵便局を併設する近所のスーパーまで荷物を毎回取りに行く。どこのスーパーでも、買い物かごの手持ち部分が頻繁に消毒されている光景は見かけない。かごを使うことにためらいはあるが、支払い後にレジにある消毒液を必ず使うようにしている 4月30日 撮影:あぶみあさき

まだ多くの市民が在宅勤務をしているが、通勤を始めている人もいる。街に人が戻ってきたので、再開するカフェも増えてきた。

ヨールストゥーエン地区にあるパン屋。2メートルの社交的距離をお願いする文字が看板に、「店内には2人まで」という文字が床にも書かれている 4月30日 撮影:あぶみあさき
ヨールストゥーエン地区にあるパン屋。2メートルの社交的距離をお願いする文字が看板に、「店内には2人まで」という文字が床にも書かれている 4月30日 撮影:あぶみあさき

街に人の姿が戻る

政府の規制が始まり、市民の自粛が始まって8週目を迎えている。どんどん規制緩和されていることから、営業再開する店、街を出歩く人は明らかに増えてきている。

中心部にある大通り、カール・ヨハン通り 5月2日(土) 撮影:あぶみあさき
中心部にある大通り、カール・ヨハン通り 5月2日(土) 撮影:あぶみあさき
買い物袋を手にしている人が多く、閉まっていたお店が再開していることが一目でわかる 撮影:あぶみあさき
買い物袋を手にしている人が多く、閉まっていたお店が再開していることが一目でわかる 撮影:あぶみあさき
中央駅前の広場で日差しを楽しむ人々 撮影:あぶみあさき
中央駅前の広場で日差しを楽しむ人々 撮影:あぶみあさき
営業再開するお店が増える。社交的距離は保ちながら、新しいノーマルの中で暮らしが再開 撮影:あぶみあさき
営業再開するお店が増える。社交的距離は保ちながら、新しいノーマルの中で暮らしが再開 撮影:あぶみあさき
薬局にはずっと売り切れていた消毒液が入荷されていて、驚いた。思わず買ってしまう 撮影:あぶみあさき
薬局にはずっと売り切れていた消毒液が入荷されていて、驚いた。思わず買ってしまう 撮影:あぶみあさき

首相や保健大臣が「ウイルスはコントロール下にある」と発表してから、市民の動きも経済も活発化している。

しかし、第二波がくる原因になりかねないため、政府は新しい規制を設けることも検討中だ。

子どもたちが楽しそうに遊ぶ中央駅前 撮影:あぶみあさき
子どもたちが楽しそうに遊ぶ中央駅前 撮影:あぶみあさき

Photo&Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信16年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。北欧のAI倫理とガバナンス動向。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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