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「人はどこに?」新型コロナで街が変わった、当たり前の光景が消えていく

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事
週末なのに人の姿がほとんどない中心部 撮影:あぶみあさき

北欧ノルウェーの首都オスロの街を歩いていると、いつもの中心部が驚くほどに、しーんとしていた。

「今日は、日曜日だったっけ?」と、私は思わずスマホで何度か確認してしまった。

うん、14日の土曜日に間違いない。

ノルウェーでは、多くの店で、日曜営業が法律で禁止されている。だから、新型コロナの騒動がなくとも、日曜日は静かなものだ。

日本から友人が遊びに来るとき、到着日がたまたま日曜日だと、「街に、人がほとんどいないよ!?」と驚かれる。

反対に、土曜日はどこのお店も開いているので、首都中心部は賑わっている。

けれど、この日はまるで、日曜日かと思うほど、ひっそりとしていた。

人口530万人の小さな国ノルウェーで、新型コロナの感染者は1100人となっていた(地元紙VGのレポートは、WHOより更新が速い)。

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撮影:あぶみあさき
撮影:あぶみあさき

バスに乗ると、乗客は運転手に近寄れないようになっていた。なんだか異様な光景だ。

もともとカード払いが当たり前の街だが、感染を防ぐために、車内で現金によるチケットの購入は一切不可能になった。

撮影:あぶみあさき
撮影:あぶみあさき

メトロでは、ドアが自動で開くようになっていた。

今までは、降りたい駅では、自分で丸いボタンを押さなければ、ドアは開かなかった。しかし、新型コロナを心配して、市民が改善を求めたのだ。

撮影:あぶみあさき
撮影:あぶみあさき

カール・ヨハン通り周辺には観光スポットがたくさんあり、土曜日は市民や観光客でにぎわう。しかし、この日はひっそりとしていて、人はほとんどいなかった。

通りがあまりにもガランとしているなか、運動好きな市民が、ランニングをする奇妙なシーンもあった。

撮影:あぶみあさき
撮影:あぶみあさき

オスロ中央駅前にも、人の姿がほとんどない。ここでもまた、「日曜日?」と思ってしまった。

撮影:あぶみあさき
撮影:あぶみあさき

中央駅に通じるホールは、いつもは、もっと明るい。政府の方針で通常営業が困難になった飲食店が、ほとんど休業中だった。

まるで誰かが、電気を消すスイッチを押してしまったかのようだった。この場所がこんなにも暗かったのを、かつて見たことがない。夜に忍び込んでしまった気分になった。

食品を調理する大部分店は休業 撮影:あぶみあさき
食品を調理する大部分店は休業 撮影:あぶみあさき
撮影:あぶみあさき
撮影:あぶみあさき

一部の飲食店では、レジで店員と客との間隔をあけて会話し、テイクアウェイのみを受け付けている。

キッチンで調理はせずに、袋詰めにされた商品の販売だけをする店もある。

撮影:あぶみあさき
撮影:あぶみあさき

靴屋などの、食品を売らない店も営業時間が短くなっていた。

撮影:あぶみあさき
撮影:あぶみあさき

人の身体に接触するサービス業は今は営業できない。私はいつもの美容院でシャンプーを買いたかったのだが、ここも閉まっていた。ネットで注文するしかなさそうだ。

お気に入りのカフェもほとんどクローズしている。当分は、コーヒー豆は定期便サービスで郵送してもらうことになりそうだ。

撮影:あぶみあさき
撮影:あぶみあさき

薬局のドアにはたくさんの張り紙が。

アルコール消毒ジェルは完売していること、自宅隔離中の人は店内に入らないで欲しいなど、いくつもの注意がされていた。店内に入ることのできる人の数も規制されていた。

撮影:あぶみあさき
撮影:あぶみあさき

中央駅内では、人と人との距離を保つこと、咳エチケットの方法などをうながす張り紙が、至る所に。

撮影:あぶみあさき
撮影:あぶみあさき

現地の新聞。「状況はこれから悪化するかもしれない」、「多くの人が職を失うかもしれない」ことが見出しとなっている。

撮影:あぶみあさき
撮影:あぶみあさき

夕方6時頃の中心部ナショナルテアートレ駅。いつもは、人がたくさんいるのだが。

私はあえて人がいない光景だけを撮影しているのではなく、本当にこの土曜日は、どこも、このような感じだったのだ。

木曜日や金曜日は、まだ街には人がたくさんいた。新型コロナのため、学校が休みになり、若者の姿がいつもより目立ったほどだ。

撮影:あぶみあさき
撮影:あぶみあさき

車内の張り紙には、できれば徒歩か自転車を利用すること、相手との距離を保つこと、ラッシュアワーの公共交通機関は避け、在宅勤務をすることなどが書かれていた。

撮影:あぶみあさき
撮影:あぶみあさき

帰りの車内は、まるで貸切のようだった。

在住して12年目、こんなに静かなオスロの街は、はじめてだった。いつまで続くのだろう。

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北欧諸国では、新型コロナウイルスの拡大が感染している。

WHOの14日付の発表によると

  • ノルウェー(人口536万人)750人
  • スウェーデン(人口1032万人)775人
  • アイスランド(人口36万人)61人
  • デンマーク(人口582万人)801人
  • フィンランド(人口552万人)109人

※人口は各国の統計局を参照

日本の外務省の海外安全ホームページでは、感染症危険レベルが掲載されており、フィンランド以外の北欧4か国は「レベル1:十分注意してください」に該当(スペインも含む)。

「これらの国では,感染が拡大しており,1万人当たりの感染者数が高い傾向にある」(外務省のページに詳しいグラフがある)。

13日、デンマークのフレデリクセン首相は、4月13日まで国境を封鎖することを発表。

14日、ノルウェーとスウェーデンの外務省は、不要ではない場合を除く、全ての国への渡航中止勧告を出した。

特別な理由がない限り、ノルウェー入国はできない

ノルウェーでは新型コロナの影響により、人員不足に陥り、小規模な航空9か所の一時閉鎖が発表。

ノルウェーのソールバルグ首相は、滞在許可証を持たない外国人の入国は、海路・空路ともに、16日から制限するとした。数日前には、北欧諸国以外からの入国者を断る方針だったが、それがさらに厳しくなった。

毎日変わる政府の対策は、ノルウェー語や英語で現地ニュースを追っていない外国人には伝わっていない。現地の人でさえ、困惑している。

観光客は、ノルウェーに着いた直後に空港で帰国を促されたり、14日間の隔離を選ぶかを問われたり。手違いで入国できてしまったが、現地の人々が不安になり騒ぐなど、混乱が起きている。

ノルウェー人も、滞在許可証がある在住者も、フィンランドとスウェーデンを除く国を訪問した場合は、14日間の自宅隔離となる(症状があるかないかに関わらず)。

自治体にもよるが、幼稚園・保育園から大学まで、教育機関も続々と閉まりはじめている。

大人も在宅勤務をしはじめ、人々の生活は変わり始めた。

Photo&Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信16年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。北欧のAI倫理とガバナンス動向。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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