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いざ!デザートブッフェは撮る時代へ

東龍グルメジャーナリスト
ヒルトンのデザートブッフェ

デザートブッフェの先駆け

日本でブッフェを始めたのは、「【バイキングの日】ブッフェはバイキングではないのか?」でもご紹介したように、バイキングという言葉を生み出した帝国ホテルです。

では、日本におけるデザートブッフェの嚆矢となったのはどこでしょうか。

それは、「「オトナカワイイ」デザートブッフェの時代へ」の記事中でも触れたように、ヒルトン東京です。

デザートブッフェの革命

ヒルトン東京「クリスマスデザートブッフェ」
ヒルトン東京「クリスマスデザートブッフェ」

ヒルトンは1919年の創業から数えて、もうすぐ100年を迎える老舗ホテルであり、日本へは1964年に上陸しました。今でこそ日本にはザ・リッツ・カールトン、ハイアット、ウェスティン、インターコンチネンタルなど様々なブランドの外資系ホテルがありますが、ヒルトンは日本へ初めて上陸した外資系ホテルホテルだったのです。

このヒルトンは1984年に永田町から西新宿へと移り、ヒルトン東京と名前を変更しました。その頃に他のホテルに先駆けてデザートブッフェを始めており、それ以来ずっと人気を博しています。

ヒルトン東京は単にデザートブッフェの発祥であるだけではありません。チョコレートが噴水のように流れる5段150センチのチョコレートファウンテンを流行させたり、冷たい板の上で客が好みのアイスクリームを作るコールドストーンを広めたり、さらには、物語性や世界観を与えることによってデザートブッフェを次のステージへと昇華させたりしました。デザートブッフェの老舗でありながら、それに甘んじず、常に進化を繰り返してきたのです。

そして、さらにこの進化に新たな歴史を加えることになりました。

それは、撮るデザートブッフェです。

スイーツ・エクスペリエンスの向上

ヒルトン東京ベイ「ストロベリーとチョコレートのデュエット」
ヒルトン東京ベイ「ストロベリーとチョコレートのデュエット」

ヒルトンは6月始めのメディア向け発表会で、ヒルトンの強みであるデザートブッフェに力を入れ、戦略的に推し進めていくことを発表しました。デザートブッフェにおけるスイーツ・エクスペリエンスを高めること、つまり、デザートブッフェを通して素晴らしい体験ができるようにするとし、これを実現するために、見た目のインパクトにこだわり、記録に残したくなるようなブッフェテーブルを目指すと宣言したのです。

ヒルトンの公式リリースには以下のように記載されています。

「#ヒルトンスイーツ」について

ヒルトン・ワールドワイドが国内に展開する 11 軒のホテルズ&リゾーツが参加。ランチとディナーの間を彩るスイーツタイムに、これまで提供してきた「美味しいスイーツ」「非日常的で贅沢な時間」に加え、「わくわくするようなビジュアルインパクト」や「友達に自慢したくなるフォトジェニックなブッフェテーブル」を更に強化した新たなスイーツ・エクスペリエンスです。各ホテルのシェフの得意分野から生まれたオリジナリティ溢れるスイーツや、季節の食材をテーマとしたスイーツ、ファンタジーの世界へ誘うストーリー性のあるスイーツなど、いつでもどこでもヒルトンのホテルに行けば、年間を通して様々な最高のスイーツ・エクスペリエンスに出逢えるというコンセプトで始動した「#ヒルトンスイーツ」の新たな取組みは下記のとおりです。

「#ヒルトンスイーツ」参加ホテルのスイーツプロモーション内容をワンストップでチェック、その場で予約ができる「#ヒルトンスイーツ」専用ウェブサイトを開設。(6 月 1 日正式公開予定)

「#ヒルトンスイーツ」のインスタグラムを開設。(6 月 1 日正式公開予定)

「#ヒルトンスイーツ」フォトワークショップ:「#ヒルトンスイーツ」参加ホテルにソーシャルメディア写真撮影の講師を招き、「インスタグラムやフェイスブックで友達にシェアしたくなるようなスマホ画像の撮り方」のワークショップを開催。

デザートブッフェの情報は「#ヒルトンスイーツ」というハッシュタグで統一して拡散され易くし、さらには、写真撮影のワークショップを開催してより美しく記録に残せるようにします。

今日ではデザートブッフェの人気が高まって、多くのホテルが力を入れていることは周知の事実です。しかし、グループを挙げてデザートブッフェに取り組み、見た目や写真にこだわると宣言したホテルはまだありません。

「#ヒルトンスーツ」の旗下に、ヒルトンはどのようにデザートブッフェに取り組んでいるのでしょうか。

ワークショップ

ヒルトン小田原「ストロベリー&チョコレートデザートブッフェ」
ヒルトン小田原「ストロベリー&チョコレートデザートブッフェ」

写真撮影のワークショップは、以下の通り行われます。「#ヒルトンスイーツ」のプロモーション自体には全てのヒルトンが参加していますが、ワークショップは可能なホテルが参加しています。

  • ヒルトン東京お台場

6/1~8/31 「真夏に雪が降る!?不思議なデザートブッフェ~Summer Snow~」

フォトワークショップは6/15開催

  • ヒルトン小田原リゾート&スパ

6/4~8/28 「サマーフォレスト・デザートブッフェ」

フォトワークショップは6/26開催

  • ヒルトン大阪

5/16~7/31 風薫る「アーリーサマー デザートブッフェ」

フォトワークショップは6/19予定

  • ヒルトン名古屋

5/13~8/28(金土日祝のみ) 笑顔を呼ぶ魔法のデザートブッフェ「チーズ・マジック!」

写真撮影用小道具を用意するフォトイベントを期間中毎日開催

  • ヒルトン東京ベイ

6/4~26(土日祝のみ) Happy Rainy Day

フォトワークショップは7/22開催

このワークショップでは、「エアロプレイン」運営者かつフォトグラファーである中山記男氏が講師を務めます。

写真とSNS

ヒルトン東京「恋するプリンセス」
ヒルトン東京「恋するプリンセス」

撮影した写真は、それぞれの客が自身の記録として残すだけではなく、SNSに拡散されることも期待されます。

「ウェスティンホテル東京<スイーツブッフェの魔術師>はいかにチーズデザートブッフェを流行させるのか?」でも触れたように、商材写真にこだわった結果、インターネット上で転載が増えたり、SNSで拡散力が増したりし、爆発的なヒットにつながったフェアもあります。また、6月5日の朝日新聞の記事でもSNSによる口コミについて述べられています。

写真のクオリティが高まることによって、SNSでの拡散力は強まり、集客にもつながるでしょう。

実はヒルトンは早くからSNSに力を入れており、例えばヒルトン東京では、Facebookページの「いいね」が5万人を超えていたり、Twitterのフォロワー数が5000人を超えていたりと、ホテルの中では最も多い方です。こういったことを鑑みると、ヒルトンがSNSでの拡散の鍵となる写真に力を入れることは当然の流れだと思えます。

また今後の展開についても、色々なことが考えられるでしょう。例えば、デザートブッフェの開始直後には、まだ誰も手を付けていない完璧なブッフェ台を記録に残そうと、写真を撮影する客がたくさんいます。開始直後の数分間を写真撮影の時間として設ければ、客はますますフォトジェニックな写真を撮影することができ、その結果SNSへの投稿や拡散を促すことができるはずです。

それぞれのヒルトン

ヒルトン東京お台場「真夏に雪が降る!? 不思議なデザートブッフェ」
ヒルトン東京お台場「真夏に雪が降る!? 不思議なデザートブッフェ」

今度は、東京周辺のヒルトンのデザートブッフェについて見てみましょう。

ヒルトン東京「マーブルラウンジ」では、2016年5月23日から8月27日にかけて「アリスからの招待状デザートフェア」が行われており、壮大な装飾とユニークなスイーツやネーミングから、アリスの世界観を十分に表現しています。

2015年5月19日から7月31日にマリー・アントワネットを連想させるゴージャスな「恋するプリンセス」、2015年12月26日から5 月22日には人気のストロベリーフェアをさらに革新させた「ストロベリー・エンジェル」、2015年11月6日から12月25日は「くるみ割り人形」をテーマにして「お菓子の王国」と「雪の王国」に焦点を当てた「クリスマスデザートブッフェ」が行われ、どのフェアもラデュレ出身のエグゼクティブ・ペストリーシェフ ダヴィッド・ギマレス氏らしい極めて印象深いプレゼンテーションでした。1品1品のデザートがインパクトを持っていることに加えて、ブッフェ台全体では統一した物語を紡ぎ出しています。

ヒルトン東京お台場「ラウンジ&シャンパンバー ベランダ」では2016年6月から8月にかけて「真夏に雪が降る!? 不思議なデザートブッフェ ~Summer Snow~」という前代未聞のデザートブッフェが行われており、総料理長 水口雅司氏をもってして「真夏に雪を降らせるという、非常に難しいデザートブッフェに挑戦した」と言わしめています。

ヒルトン東京ベイ「Lounge O」は2015年7月10に「ベイラウンジ」からリニューアルして、ブッフェでの利用を見越した改装を施しました。その結果、引き続き行われているブッフェは、以前よりも格段にプレゼンテーションが美しくなっています。

ヒルトン小田原では「ザ・ロビーラウンジ」でデザートブッフェが行われています。ペストリーシェフの柏木英里子氏が女性なので、デザートやプレゼンテーションはどれも女性目線であることに加えて、2015年12月26日から2016年3月13日にかけて行われた「ストロベリー&チョコレートデザートブッフェ」では、希少なホワイトストロベリーを提供したり、ショコラの食べ比べを行ったりと、面白い試みも行っています。

以上のように、ヒルトンの各ホテルでは、どこも知恵を絞って、興味を引くデザートブッフェを行っています。こういったデザートブッフェであれば、訪れて食べてみたい、そして、写真を撮影し、SNSに投稿して知人や親類に伝えてみたいと思うのではないでしょうか。

デザートブッフェのヒルトンへ

ヒルトン東京「アリスからの招待状」
ヒルトン東京「アリスからの招待状」

マーケティング統括本部長 日本・韓国・ミクロネシア地区担当 ベンジャミン ホルト氏はメディア向け発表会の場で「ヒルトンはホテル業界の中で様々なイノベーションを行ってきた。客室に水道を付けたり、エアコンを設けたりしたのはヒルトンが初めてであった。空港にホテルを作ったり、館内にソムリエを配置したりしたのも、ヒルトンが最初。日本でデザートブッフェを始めたのもヒルトンであり、カレーブッフェを始めたのもヒルトンであると言われている」と淀みのない極めて流暢な日本語で話します。

ヒルトンが日本で成功したことによって、外資系ホテルに対する認知度やブランド力が向上し、1990年代の外資系ホテルの成功につながって「ホテル新御三家」という言葉が生まれるに至ったこと、さらには、1990年から放送されていたTBSの人気ドラマ「HOTEL」の舞台となる「東京プラトン」のロケ地として、ヒルトン東京ベイが主に使用されたことなどを鑑みれば、日本における外資系ホテルの根幹を形成したのはヒルトンであることは明白ではないでしょうか。

今回の「#ヒルトンスイーツ」は、日本の外資系ホテルの始まりであり、デザートブッフェの父であり母であるヒルトンが、これまで以上にデザートブッフェに力を入れていくという強いメッセージであり、たくさんの素晴らしい体験がSNSの写真を通して共有されていけば、ヒルトンのみならず、ホテル全体のデザートブッフェがますます賑わっていくのではないかと、私は期待を寄せています。

元記事

レストラン図鑑に元記事があるので、ご参考にどうぞ。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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