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178人の男女が過去半年に職場でセクハラを体験 ノルウェーのメディア業界の実態 #MeToo

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員
連日、各業界でのセクハラ文化問題が新聞で報道される Photo: Abumi

各職場でのセクハラ・性暴力被害の実態調査が進むノルウェー。メディア業界で働く人を対象に行われた調査結果が、15日に発表された。

調査期間は今年の11月21日から12月1日。5741人が回答。ノルウェーのジャーナリスト連盟や編集者連盟など、メディア労働組合5団体によっておこなわれた。回答者の51%は女性、49%が男性。

実態

  • 過去半年の間に業界内でセクハラやレイプ被害にあったと答えたのは3,1%。そのうちの18~30歳が占める割合は7,9%、31~45歳が4%、46~60%が1,1%。性別の割合は男性が1%、女性が5%
  • フリーランサー(3,6%)以上に短期契約者がセクハラを体験(7,5%)
  • 過去半年にセクハラをされたという3%の数は178人。女性は149人、男性は29人。
  • 過去半年以上にさかのぼるセクハラ体験は全体で28%。半年~1年未満が2%、1~2年前が4%、3~4年前が6%、5~10%が9%、10年以上前が12%
  • 他の人が被害にあっていたケースを知っていると答えたのは14%
  • セクハラをしてきた人の64%は社内の人間、18%は他社
  • セクハラが起きた場所の38,3%は社交の場、32,3%は職場、会議など外の現場で12%、デジタルメディアで4%、答えたくない人は5,4%
  • セクハラ被害を話さなかった理由の46%は「言うことではないと思ったから」、19,4%は「自分のキャリアにどう影響がでるか怖かったから」、15,8%が「自分に起きたことを恥ずかしいと思ったから」、8,6%が「誰に・どこに言えばいいのか分からなかったから」
  • 被害を報告して対応してもらえたと答えたのは42,3%、何もしてもらえなかったのは38,6%

セクハラを受けた人に起きた現象

  • 恥や罪の意識を背負った
  • 仕事を辞めることや転職を考えた
  • 周囲との人間関係が悪化した
  • 仕事にも支障が出た
  • うつや後悔の念に悩まされた
  • 職場で目立たないようにするようになった

提案された対応策

回答者は、職場のセクハラ文化改善のためのアドバイスも問われた。その中には、このような提案が含まれていた。

  • リーダーがもっと責任をもつこと
  • 職場での性的・差別的な発言や冗談を受け入れないこと
  • #MeToo運動を職場でバカにしないこと
  • 男性の数が女性より多い場で、男性たち特有の冗談は避けること
  • お酒がある職場関連のパーティーやディナーのリスクを、もう一度考え直すこと
  • リーダーは夜のイベントの場に参加し、セクハラ文化を自身の目で確認すること
  • リーダーや雇用者は#MeTooのニュースを真剣に受け止めること

この調査結果は、現地の大手報道機関で大きく取り上げられた。

現場からは「非常に深刻な数字」として、若い女性の10人に1人がセクハラ被害を受けていることや、セクハラをされてもどうしていいか分からない人が多いことなどが特に注目を浴びた。

回答者のうち「3%」という数字を「低い」とみるのではなく、半年で「178人もの人が」望まないセクハラ行為をされたことは、大きな問題だと認識されている。

Photo&Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信15年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。ノルウェー国際報道協会 理事会役員。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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