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2020年マネー10大事件簿発表。コロナ禍の1年を振り返る。

山崎俊輔フィナンシャル・ウィズダム代表/お金と幸せについて考えるFP
あなたのマネー、今年もいろんなことがあった1年でした。(写真:アフロ)

2020年、マネーも激動の年

2020年が終わろうとしています。今年はマネーの世界でも激動の年となりました。

新型コロナウイルスは、私たちのお金の世界にもたくさんの影響を及ぼしています。また、イノベーションや法改正などもたくさん起きた年でもありました。

年末最後の試みとして「2020年、マネー10大事件簿」をまとめてみます。

どちらかといえば「個人」の目線で、私が思いつく事件は以下のとおりです。

  1. ドコモ口座の不正出金騒動
  2. キャッシュレス消費者還元事業終了、マイナポイントスタート
  3. 株価急落から急上昇の1年
  4. 給与減少、ボーナスカットの厳しい年に
  5. 家計簿アプリに大変動 API接続に各社の差
  6. 転職市場冷え込む 正社員は1.1倍から0.7倍へ急落
  7. 新NISA法律改正実現
  8. iDeCo規制緩和法律改正実現
  9. 東証システムダウン 一日取引できず
  10. QRコード決済「Origami」撤退

それでは見てみましょう。

1.ドコモ口座の不正出金騒動

9月以降大騒ぎとなったのは「ドコモ口座」と「地方銀行やゆうちょう銀行口座」を本人に無断で紐つけて行われた不正出金騒動でしょう。

ドコモ口座がメールアドレスのみで作成できること、一部の地方銀行やゆうちょ銀行などが口座番号、氏名、暗証番号のみで出金をOKとする仕様であった隙をつかれた犯罪でした。

すでに被害は収束し、被害者への支払もほぼ終了しています。また現在では、ドコモ口座(d払い)側の二段階認証が義務づけられています。他の電子決済も同様の対応を進めており、同様の不正は今後は生じにくいものと思われます。

ただし、犯罪者とのいたちごっこは今後も続くと思われ、資金管理については意識を高める必要はあります。

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2.キャッシュレス・ポイント還元事業終了、マイナポイントスタート

中小店舗でお会計をするとき、キャッシュレス決済を選択した人に対し、5%ないし2%を還元する消費者還元事業も、ずいぶん遠い昔のことのように思えますが、2020年のトピックスです。

中小企業の多くがこれを期にキャッシュレス決済端末をレジに導入、また多くの国民がキャッシュレス決済を利用しました。当初予算が枯渇し補正予算が確保されたほど人気を呼びましたが、予定通り6月末で終了となりました。

9月からスタートしているのは、マイナンバーカードの発行を前提としたマイナポイントの提供です。こちらは2万円のチャージないし利用に対し5000ポイントを付与する仕組みですが、決済業者が1000ないし2000ポイントを上乗せするような競争も起きています。

2021年3月末までの予定でしたが、9月末まで取り組みを延長する予定となっており、まだ未登録である方は今から検討しても間に合うでしょう。

総務省 マイナポイント 

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3.株価急落から急上昇の1年

今年は、株価の急落から急上昇のあった1年になりました。四半期ごとの運用成績を公表している国の年金運用機関GPIFのニュースを見ると「3月末が過去最大レベルのマイナス運用」と報じられ、コロナショックと言われるほどでした。日経平均株価は16358円まで下落しました(3/19)。

一方で「6月末は過去最大レベルのプラス運用」となっています。また、秋以降も上昇が続いており、日経平均株価はバブル崩壊以降の最高値を10月以降記録しています。執筆時点では今年の最高値は12月21日の26905円です。なんと1万円もの上昇があったことになります。

3月の値下がりに焦って売ってしまった人が大損を出した一方で、のんびり構えて回復を待てた長期投資家は何もせずとも大きなリターンを出したことになります。毎月積立投資をしていた人はさらに大きな収益確保につながりました。

もちろん、この株価がこのまま推移するとは思えませんが、極端な値動きのあった1年として記憶されることになるでしょう。

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4.給与減少、ボーナスカットの厳しい年に

新型コロナウイルスの流行に伴う外出自粛や外国人の来日制限は、多くの企業に影響を与えました。観光旅行業、飲食業などは大打撃を受けています。

ここ数年、給与やボーナスの統計データは好調な数字を示していましたが、2020年は暗転、毎月の給与については時間外給与のダウンなどから平均支給額が下がっています。

また、ボーナスについては冬ボーナスが平均8%以上のダウンと報じられ、大幅ダウンやゼロ支給の会社がニュースの話題となりました。

2021年についても給与、賞与とも見通しは厳しく、前年比マイナスの流れはまだ続くものと思われます。

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5.家計簿アプリに大変動 API接続に各社の差

銀行やクレジットカード、ECサイトや電子マネーのアカウントを接続すると、自動的に資産状況が把握され支出額を記帳できる「アカウントアグリゲーション」機能のある家計簿アプリが人気を呼んでいます。

しかしこの便利な接続状況に、2020年に大きな変化がありました。API接続の契約上の問題などから、一部の家計簿アプリが金融機関の接続を縮小する発表を行い、利用者の不満が生じました。メインバンクや所有しているクレカのデータが連係しなければアプリの良さはほとんどゼロになってしまうからです。

一方で、Zaim、マネーフォワードMEなど接続を維持しているアプリもあります。

アカウントアグリゲーション対応の家計簿アプリも、群雄割拠の様相がありましたが、2021年の家計簿アプリの利用状況は大きな変化がありそうです。

家計簿アプリが接続を縮小した例 http://kakeibo-blog.line.me/archives/23574571.html

家計簿アプリが接続維持を公表した例 https://zaim.co.jp/news/archives/6147

6.転職市場冷え込む 正社員は1.1倍から0.79倍へ急落

新型コロナウイルスの影響で仕事を失った人が増えています。また、新しい採用については企業の手控えモードとなっています。

総務省の労働力調査では令和2年11月のデータとして前年同月比55万人、就労者が減っているとしています。厚生労働省の一般職業紹介状況(令和2年10月分)では、有効求人倍率を1.04倍としており、今年の頭では1.6倍に近づこうとしている状況が一気に冷え込んでいます。正社員での求人に限れば、0.79倍まで落ち込んでいます。

この傾向は2020年も続くと思われます。今ある仕事はできるだけ辞めず、しかし会社がヤバいと思ったら早めの転職活動で(チャンスが減ったとはいえ)無職にならないよう動きたいものです。

総務省 労働力調査(令和2年11月) 

厚生労働省 一般職業紹介状況(令和2年10月分) 

7.新NISA法律改正実現

投資の収益が非課税で手元に残る少額投資非課税制度(NISA)は、2020年9月末段階で約1500万口座に達しています。一般NISAは5年目の年末まで、つみたてNISAは20年目の年末まで非課税投資が行えますが、将来も制度が継続されなければいけません。

2019年末に税制改正大綱で認められた内容は、今年の国会で成立し、将来もNISAが継続することになりました(5年分。一般NISAは2024年以降、つみたてNISAは2038年以降の分)。

一般NISAについては2階建て制度に改変されたり、ジュニアNISAについては制度終了される(利用者が少ないため)など、ややこしい部分がいくつかありますが、国民の長期的な資産形成を支援するというスタンスは維持されることになります。

特につみたてNISAについては、若い世代の利用が多く、今年の株価の激変でも口座数は増加を続けました。先ほどの1500万口座のうち275万口座はつみたてNISAになります。今後の普及に期待がかかるところです。

金融庁 NISA口座数(令和2年9月末) 

金融庁 令和2年度税制改正について 

東証マネ部 2024年スタートの「新・NISA」ってどんな制度? 

8.iDeCo規制緩和法律改正実現

個人型確定拠出年金ことiDeCoについても2019年12月の税制改正大綱で規制緩和が認められ、今年の通常国会で法改正が実現しました。

具体的には企業型の確定拠出年金に加入している社員であっても、一定の範囲でiDeCoに加入できるようになります(これまでは制限付きでほとんど利用ができなかった)。実施は2022年になりますが、法改正が実現したことで、実施が確定したことになります(確定拠出年金の法改正はすぐに成立せず、何度も国会をまたいで継続審議されることが多かった)。

また、2020年12月の令和3年度税制改正大綱でも掛金額の規制緩和が認められており、2022年にかけて使い勝手の改善が進むことになりそうです。

9.東証システムダウン 一日取引できず

3月末決算の会社にとっては下半期がスタートする10月1日ですがこの日、東京証券取引所のシステムがダウンし、1日取引ができなくなるトラブルが発生しました。

当初は午前のみの停止で午後の復旧を目指しましたが、これも断念、1日の停止となりました。ニュースではデイトレーダーなどが影響の深刻さを語っていました。

とはいえ、焦って売る必要がない人にとっては祝日のようなものであり、むしろ1日マーケットが閉まって困るほうが資金管理に問題ありではないか、と思います。

システムトラブルの起きる可能性はあるものですし、ゼロにはできません。それは東証自身も復旧計画等であらかじめ示しています。そして2日以上の停止がないようにするとした目標は守られていることは付記しておきます。翌日は問題なく取引が再開されました。

日本証券新聞 東証、過去のシステム障害の例 

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10.QRコード決済「Origami」撤退

QRコード決済は多くの人の利用するところとなりました。PayPay、d払い、auPAY、LINEPayなどなど、各社が覇権を競っています。

その影で、ひっそりとサービス終了となったのがOrigamiPayです。2015年10月にサービスを開始し、一時期はQRコード決済の代表格とみなされた時期もありましたが、PayPay以降の大手各社の本格攻勢の中、勝ち取ってきたシェアを維持できず、メルカリの提供するメルペイに吸収されることとなりました。

一定のサービス終了期間が設けられましたが、利用者にとっては残念なことです。QRコード決済業界の厳しい競争を感じさせるニュースでした。

しかし、すでにキャッシュレス決済は過当競争の感もあります。サービス終了や統合など、2021年にも変化があるかもしれません。

Origami https://origami.com/

inpress watch Origami Pay、サービス終了。6月に全機能

2021年も変化の多い年になることは間違いない

さて、2020年マネー10大事件簿をまとめてみました。「特別定額給付金」や「みずほ銀行 紙の通帳有料化」のテーマも捨てがたいものがありますし、あるいは他にもいくつかランクインするか悩んだテーマもありますが、今回はこんな感じでまとめとしたいと思います。

2021年も、個人のマネーに関するいろんなニュースがあると思います。ニュースウォッチしながら、ぜひ最新トレンドを見逃さないようにしてください。

フィナンシャル・ウィズダム代表/お金と幸せについて考えるFP

フィナンシャル・ウィズダム代表。お金と幸せについてまじめに考えるファイナンシャル・プランナー。「お金の知恵」を持つことが個人を守る力になると考え、投資教育家/年金教育家として執筆・講演を行っている。日経新聞電子版にて「人生を変えるマネーハック」を好評連載中のほかPRESIDENTオンライン、東洋経済オンラインなどWEB連載は14本。近著に「『もっと早く教えてくれよ』と叫ぶお金の増やし方」「共働き夫婦お金の教科書」がある。Youtube「シャープなこんにゃくチャンネル」 https://www.youtube.com/@FPyam

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