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船井電機のように「出社したら倒産」とならないため「すぐ逃げるべき5%の会社」を見極めるシンプルな方法

山崎俊輔フィナンシャル・ウィズダム代表/お金と幸せについて考えるFP
倒産しそうな会社は早く逃げ出したい(画像はAdobe Fireflyで筆者作成)

朝、出社したら会社が倒産していた!

船井電機倒産のニュースが世間を驚かせています。破産手続きを開始したのですが、全従業員2000人がいきなり解雇されることになった、というものです。

2024/10/25 FNNプライムオンライン 「破産です。給料は払えません。即時解雇です」 船井電機が破産手続き 突然の知らせに従業員「あと数年、数ヶ月はもつと思ってた」

事業継続を図るのではなく、いきなり全員クビというのも驚きですが、当事者としては人生の一大事です。

Yahoo!ニュースのコメントでも指摘したのですが、いきなり倒産、となるとどうなるでしょうか。まず、理屈としては「給与と退職金は優先扱いで銀行等の債権より先に支払われる」ことになります。ただし報道では25日の給与振込は行われていないとしており、いつ、どれだけ戻ってくるかは不透明です。

雇用保険の求職者給付(いわゆる失業給付)は2カ月の待期なしにすぐにもらえる」ことになります(7日待期のみでよい。自己都合退職の場合、2カ月+7日待たないと受けられない)。これはまさに倒産時の社員を助ける仕組みなわけですが、手続きに行くのも大変ですし、そこから転職活動をはじめることになります。すでに転職活動中の人たちに交じり、また同じ会社の2000人もライバルとなっての就職活動は苦労することになるでしょう。

できることなら、「つぶれる、予兆」に気がついて、先に逃げ出したいものですが、そんなシグナルはあるのでしょうか。

倒産予備軍の会社を見極めることはできるか

よく確認したいのは、社内の雰囲気です。特に社長と役員クラスの動きには注意したいところです。

小さな会社であれば社長の部屋の雰囲気(社長がピリピリしていて、しょっちゅう外出している。やたらと電話が鳴っていてお詫びしている声が聞こえてくるなど)である程度「ヤバさ」を察することができるはずです。

そこそこの企業規模であれば、社長や役員の入れ替わりが相次いでいたら危険なサインです。外部の支援を得て、なんとか会社を存続させる取り組みなのですが、上手くいっていない可能性があります。特に銀行から役員がやってきて、ピリピリしているようならこれも危険信号です。

職場で新入社員はなく、辞める社員が増えているとしたらこれも危険なシグナルでしょう。自分以外の同僚は、「この会社ヤバいから先に出るわ」と判断しているからです。かといって補充をする余裕はない(採用すれば人件費がかかるのでできれば増やしたくない)わけです。

人員不足により業務に支障が出始めているなら、これはもう赤信号といってもいいでしょう。

たとえ、会社が社員に対して「わが社は大丈夫」と説明したとしても、これ自体を安心材料とみないことです。

もうひとつ注目したい「ヤバい5%」の目印

「お金系のトラブル」も会社のヤバさを示すサインのひとつです。特に給与、賞与の支払いに問題が出始めたら、会社の寿命はあまり長くないと考えてください。

給与の遅配が一度でもあったら、転職活動は絶対にスタートしましょう。安定的な生活が成り立たなくなります。一度あったら何度か続く可能性が高いです。

昔はくれていたのに最近は賞与がゼロ、あるいはちょっとしか出ないというのも黄色信号です。近年の会社は業績に賞与を連動する傾向がありますが、給与を遅配する前に、ゼロ支給としてしのぎたいのは賞与です。賞与ゼロは「ヤバい」サインでしょう。

そしてもうひとつ、給与、賞与は今のところ出ているけど、「実はヤバいかも」の目安が「賃上げ」です。

先日公表されたばかりの厚生労働省の調査によれば、2024年の平均賃金の上昇率が4.1%となっています。引き上げ額の平均は1万1961円だったそう。

もちろん中小企業のほうが上昇率は低くなりますが、「賃金を引き上げた・引き上げると答えた企業は91.2%」となっていて、今年給料が上がらなかったのは全体の8.8%しかないのです。

2024/10/28 朝日新聞デジタル 今年の賃上げ率は平均4.1% 過去最高を更新 厚労省調査

ここ数年、賃上げできないということは「実質マイナス」と考えよう

「賃上げはないけど、給与をちゃんと払えば大丈夫じゃないの?」と思うかもしれませんが、実はこれ「実質マイナス」です。

ここ数年、物価が上昇しているのはご存じのことでしょう。モノの値段が上がったのなら相応の給与アップがなければ同じモノが買えないことになります。ちなみに昨年度と一昨年度の物価上昇率は以下のとおりです。

2023年度 +2.8%

2022年度 +3.0%

今年に限らず「去年」と「一昨年」も含めて3年間一度も給料を上げてない会社は全体の5%以下と思われます

ざっくり言って、この3年間くらいで給料が5%くらい上がっていなければ、会社は物価に見合う賃上げをする力がない(あるいはしなくてもいいと思っている)会社ということです。十分に転職活動をする理由といえます。

逆に危なくないかも、のサインは「早期退職募集」です。退職金に賃金1年分あるいは2年分の年収を上乗せして○百名の退職を募集、なんて聞くと「この会社ヤバい?」という気がしますが、本当にヤバいと、会社は上乗せ退職金なんか出せないからです。むしろ余裕のあるうちに、事業と人員の整理をしたくて、自分から手を挙げる人を待っているのが早期退職募集といえます。

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――いくつか会社がつぶれるかもしれない「ヤバい感じのサイン」を紹介してみました。何かひとつでも気になることがあったら、転職活動は始めておきましょう。

「出社してみたら、会社はつぶれてクビになった……」というのはやはり辛いですからね。

フィナンシャル・ウィズダム代表/お金と幸せについて考えるFP

フィナンシャル・ウィズダム代表。お金と幸せについてまじめに考えるファイナンシャル・プランナー。「お金の知恵」を持つことが個人を守る力になると考え、投資教育家/年金教育家として執筆・講演を行っている。日経新聞電子版にて「人生を変えるマネーハック」を好評連載中のほかPRESIDENTオンライン、東洋経済オンラインなどWEB連載は14本。近著に「『もっと早く教えてくれよ』と叫ぶお金の増やし方」「共働き夫婦お金の教科書」がある。Youtube「シャープなこんにゃくチャンネル」 https://www.youtube.com/@FPyam

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