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こうしてあなたを騙す!一時期ひどかったSNSの投資詐欺広告が3.7億をだまし取った手口が明らかに

山崎俊輔フィナンシャル・ウィズダム代表/お金と幸せについて考えるFP
画像は筆者がAdobe FireflyでAI作成したもの

※YouTubeでの解説動画のサムネが文末にあります※

一時期ウザいほど多かったSNS投資詐欺広告

一時期、SNS(特にFacebook)を開くと、投資の詐欺広告があふれていました。投資本ベストセラーの著者、ファンドマネジャーなどの著名投資家、証券会社などの名前を騙った広告が、毎日のように表示されていました。

これらの広告の特徴は、数時間あるいは数日で取り下げてはまた別の広告を繰り返し出稿することです。後からチェックが入って広告を取り下げることになってももう広告出稿期間は終わっており、出稿側は困らない方法を取っていたのです(おそらくアカウントも捨て垢を大量作成していたと思われる)。

SNS広告の多くは、誰でも出稿できるという自由度があり(無審査であることも多い)、これは従来の広告が代理店が間に入って高コストであったのと比べて革新的な取り組みでしたが、そこを逆手に取られて悪用された格好です。

とはいえ、SNS運営者側も批判され、最近はずいぶん減ってきた感じがします(もっと早くからやれよという気持ちと、最近は普通の投稿すら削除していないかという疑念もありますが)。

3.7億円が搾取された手口が報道で明らかに

さて、こうしたSNS広告、クリックするとLINEグループの登録を促すものが多く、そこまでいって「これはおかしいな?」と手を止めた人は多かったと思います。

今回、3億7千万円もの被害を受けた人がニュースに取り上げられていますが、その記事で、具体的な手口が紹介されています。

10/28 共同通信 富山市で3億7千万円詐欺被害 村上世彰氏かたり投資勧誘

10/29 読売新聞 50代男性、SNS型投資詐欺で3億7877万円被害…投資家・村上世彰氏名乗る相手信じ計38回振り込む

10/28 テレ朝News 著名人を騙るSNS型投資詐欺で約3億8000万円被害 富山県内で過去最大の被害額

このSNS詐欺広告では、投資情報を無料で教えるとクリックを誘導、LINEグループへの登録をさせ、そこからさらに別アプリのインストールをさせています。

インストール後は、あたかも利益が出たようにみせかけ、出金のために入金を促す(もちろん詐欺ですが)ことを繰り返し、最後は音信不通となったようです。

同じような投資詐欺にだまされないために、この教訓をまとめてみたいと思います。

4つのステップ、いずれの段階で防げた可能性が高い

今回の記事を整理してみると、詐欺に騙されるいくつかの段階があったようです。

第1段階:SNSの詐欺広告を見分けられなかった

最初の段階で気がつきたいのは「無料で、著名投資家や証券会社が、極秘の儲かる銘柄を教えてくれる」のような広告はほぼ100%ウソだということです。

「無料」「必ず儲かる」などはNGワードだと考えましょう。またLINEに移動してグループ登録させるのは典型的な詐欺の手口なので、一度はクリックしたとしても、その手前で踏みとどまってください。

第2段階:詐欺アプリで(おそらく未入金で)売買して利益が出たので入金をしている

第1段階でだまされたとしても、できればこの段階で被害を止めておきたいのが「入金してしまう」ことです。

どうやら別アプリ(架空の投資アプリ)をインストールさせ、自分はまったく入金をしていないのにアプリ上で売買利益が出たと表示されたとするようです(そこで「この株を買おう」のような指南が入るらしい)。

そもそも論として、入金していない段階でのトレードが先にあり、あとからその利益を得るために入金をしろ、というのはおかしい理屈です。真っ当な投資であれば「先に入金して自分のお金で売買」が原則です。

「出金したければ、入金せよ」というのは、投資詐欺のみならず、振り込め詐欺でもよくある手口です。ここで絶対に入金しないことです。

第3段階:税負担が生じるといわれて、追加の入金を求められて応じている

一部の報道で触れられていましたが、どうやら「利益に課税されるので、その分を入金してほしい」というような指示があって、これまた追加入金していたようです。

株の譲渡益にかかる税金は「売買した利益」から引くわけですから、そこで追加入金をする、というのもおかしな話です。これも絶対に入金しないことです。

第4段階:何度も入金を繰り返してしまう

ここまでの段階で、被害を食い止めればいいのですが、一度だまされると、相手はいいカモだ、とばかりに何度も入金を求めてきます。

出金してほしいのに入金するばかりで、出金(自分の口座にお金が入ってこない)がないのはおかしいわけですが、ここでおかしさに気づいてほしいところです。

本記事の被害者も38回にわたって億単位の金額を振り込んでしまったわけです。ここでも、なんとか食い止められなかったのか、という後悔が残ります。

資産がある人ほど、止めてくれる相談者を持ちたい

今回のケースで、SNS詐欺広告の手口がかなり具体的に示されています。この流れを知れば、同様の失敗を避けることはできると思います。ぜひ参考にしてください。

一方で、「これだけの資産をお持ちの方が、高額出金をしたことについて、誰か歯止めをかけてくれなかったのだろうか」ということが問題として残ります。これはなんとかならないものでしょうか。

先ほどの段階でいえば「第3段階」まで失敗してしまっても、「第4段階」に入る前に問題発覚すれば、せいぜい数百万円の被害で終わったはずです。せめてここで食い止めたいところです。

資産管理に関してアドバイザーがあれば「それはおかしいですね」と早期に食い止められたかもしれません。少なくとも億以上の個人資産を持つ人は、そうしたアドバイザーを持ちたいところです。

高額の振込について、親族や金融機関が確認できる仕組みを取るようなことも考えられます(これだけの高額振込をオンラインで全部やっていたとは考えにくいですが、店頭振込でまったくチェックが入らなかったのかは不思議な感じがします)。

いずれにせよ、被害を食い止める対策があり得た中で、これだけの被害があったことは残念です。おそらく、この被害額を回収することは困難でしょう。できれば、同様の失敗を私たちは繰り返さないようにしたいところです。

フィナンシャル・ウィズダム代表/お金と幸せについて考えるFP

フィナンシャル・ウィズダム代表。お金と幸せについてまじめに考えるファイナンシャル・プランナー。「お金の知恵」を持つことが個人を守る力になると考え、投資教育家/年金教育家として執筆・講演を行っている。日経新聞電子版にて「人生を変えるマネーハック」を好評連載中のほかPRESIDENTオンライン、東洋経済オンラインなどWEB連載は14本。近著に「『もっと早く教えてくれよ』と叫ぶお金の増やし方」「共働き夫婦お金の教科書」がある。Youtube「シャープなこんにゃくチャンネル」 https://www.youtube.com/@FPyam

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