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「質問力」は練習が要らないってホント? 3つの理由とは?

横山信弘経営コラムニスト
(提供:イメージマート)

■質問力は練習が要らない唯一のコミュニケーション能力

質問力はとても重要だ。会話を盛り上げるのに、とても重宝するスキルだ。しかし質問力をつけるのに練習は要らないと知っていただろうか。口下手の人でも、会話を盛り上げることができる。

たとえばプレゼンテーション力や、説明力、クロージング力を身につけるには、しっかりとした練習が必要だ。その理由は主に3つある。

・緊張しないため

・流ちょうに話すため

・型を覚えるため

誰かの前で話すとき、しかも関係のできていない人の前でプレゼンしたり説明したりするときは、とても緊張する。

だから緊張しないためにも、話す内容を頭に叩き込んでおく必要がある。

しかも、ただ話すだけでなく、流ちょうに話したほうが相手に与える印象がいい。理解もされやすい。

また、話す順番や話す型を覚えるためにも、何度も練習して確認したほうがいい。説明の型はいろいろある。論理的に話すなら「PREP」とか、ストーリー形式で話すなら「起承転結」を意識するとか。事前にいろいろと考える。

だが質問するときは、それらのことを一切考える必要がない。

大事なことは、自分が何を話すかではない。相手が何を「話してくれる」かである。だから質問は、短ければ短いほうがいい。

「それは、どれぐらいの大きさですか?」

「たとえると、何と同じぐらいですか?」

「それが何個あると受け止めたらいいですか?」

「それは、スゴイですね!」

質問もそうだが、リアクションも短いほうがいい。短く話し、短い反応を示すだけだから、緊張しようがない。

相手が芸能人のような有名人だったら、緊張して頭が真っ白になってしまうかもしれない。しかし日常生活で知り合う人であれば、緊張しようがない。

たとえ相手が大事な取引先の社長であっても、大丈夫。

「先週、出張された東北はいかがでしたか?」

「出張は東北が多いんですか?」

「一回の出張でどれぐらい支店を回られるんですか?」

「支店会議のあとは、よく飲みに行かれるんですか?」

「どんな美味しい料理がありますか?」

相手との会話の流れで、心地よいリアクションをしながら短い質問を繰り返す。そうすれば、相手もドンドン話をしてくれる。

流ちょうに話す必要などない。話す順番も、型などもない。

「支店会議のあとは、よく飲みに行かれるんですか?」

と尋ねても、

「よく飲みに行かれるんですか? 支店会議のあとに」

と尋ねても、

「支店会議のあとは、皆さんとお食事とか、お酒とか行くんですか?」

と尋ねてもいい。話す順番や話す型を意識しないくても、質問の意味は伝わる。

このように知識も要らないし、ましてや練習も要らない。

相手の話をしっかり聞いて、相手が使っているワードを利用しながら短く質問する。それだけだ。事前に練習すると練習の成果を出したくなるので、練習はやらないほうがいいぐらいだ。

だから質問力を身につけるのに練習は要らない。口下手の人でも、会話を盛り上げることができるのだ。

■何でも「話してくれる」関係が信頼のバロメーター

私はバロメーターを意識している。たとえば私にとっての「快眠」のバロメーターは、

・目覚まし時計が鳴るまで、一度も起きないこと

である。

「体調がいい」ときのバロメーターは、

・毎日一回、カタチのいい便が出ること

である。

このように体調に関することなら、人によってバロメーターはさまざまだろう。しかし、多くの人にとって似たり寄ったりのバロメーターもある。

たとえば信頼のバロメーターは、

・相手が、何でも話してくれること

である。

これは誰にとっても共通している。何でも「話してくれる」関係が信頼のバロメーターだ。

以前、自称「聞き上手」の営業がいた。確かに、お客様の前ではあまり話さず、相手の話に耳を傾け、適度にリアクションをとっている。客観的に見ると、話は弾んでいるように見える。

しかし、その割には仕事を依頼されない。だからか、いつも目標を達成できないでいた。

このように、「よく話す人」の前では聞き上手になる『聞き上手モドキ』はたくさんいる。いい表情をしてリアクションしていれば、相手はドンドン話してくれるだろう。

しかしだからといって、何でも「話してくれる」かというと、そうとも限らない。実際に、この営業がそうだった。雑談では、さんざん盛り上がっていたが、

「ところで御社のご予算はどれぐらいですか?」

と核心に迫る質問をした際、

「それは教えられないですよ」

と言われていた。意外な返答に、本人は驚いていた。当然だろう。会うたびに、いろいろな話をしてくれた相手なのだから、どれぐらい予算を確保しているか、それぐらいは教えてくれると信じていたのだ。

この営業は、他のお客様ともそうだった。すでに関係ができているお客様ならともかく、新規のお客様とは、なかなかうまくいかなかった。自称「聞き上手」だったにもかかわらず。

それではなぜ聞き役に徹したのに、信頼関係を築くことができなかったのか。それは、会話の主導権を握っていなかったからだ。

いい関係を築くためには、相手の言いなりになってはいけない。

会話の主導権を握り、相手がいろいろなことを「話してくれる」ように仕向けていくことが大事だ。つまり相手が話したいことを「聞かされている」だけではいけない。

こちらが質問して、その質問に相手が答えてくれる。この状態を続けていると、少しずつ、相手は何でも「話してくれる」状態に近づいていく。

「話す力」など鍛えなくてもいい。話すネタに工夫する必要もない。ただ短い質問を繰り返すだけで、信頼される人になることはできる。

【参考記事】

【大作】相手を「大河ドラマの主人公」にする質問とは?

一瞬で相手が「気持ちいい!」と感動する質問の作り方【1万字超の大作記事】

【大作】「それそれ!それを聞きたかった」「それそれ!それを聞いてほしかった」――『勝負質問』の作り方

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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