■なぜ90%の人は満足する答えを引き出せないのか?

私は知っている。質問した人のうち90%以上は、相手の答えに満足していないことを。

たとえば、次の会話を読んでほしい。

「おいしい焼き肉屋、知ってる?」

「『AAA焼き肉店』がいいよ」

「遠いよ」

「どのあたりがいいの?」

「駅の近く」

「だったら『BBB焼き肉店』がいいんじゃない?」

「けっこう高いでしょ」

「予算はいくら?」

「1人5000円ぐらいかな」

「それなら『CCC焼き肉店』かな」

「チェ―ン店は嫌なんだよ。焼き肉じゃなくてもいいんだけど」

「え、焼き肉じゃなくてもいいの?」

「日本食でも、イタリアンでもいい」

「駅前の『XXXレストラン』は? けっこうリーズナブルだよ」

「もっと雰囲気がいいところじゃないと」

「デート?」

「違う」

「うーん、わかんないな。どういう店だったらいいんだろう」

「ゴメン。自分で探すわ」

「なんか悪いな」

質問された相手が最後に「悪いな」と答えているが、本当にこの人が悪かったのだろうか。

人材紹介会社のコンサルタントも、このような悩みを抱えると聞く。

「いい人、紹介してもらえないかな?」

「いい人とは、どのような人でしょうか?」

「うちの会社で活躍してくれそうな人だよ。即戦力がいい」

「どんな方だと即戦力と言えますか?」

「過去、意外にも即戦力になったのは、ジムのインストラクターだったなァ」

「ジムのインストラクターの方だと即戦力になりそうですか?」

「当社は印刷会社だよ。そんなわけないだろ。ガッツがある人だ」

「ガッツがある人ですか」

「営業で即戦力になる人だから、ガッツがあって、やり抜く人だ」

「かしこまりました。こちら7人のリストをお持ちしました」

「なんかイメージと違うなァ」

企業データを扱う帝国データバンクと昔から付き合いがあるが、担当役員もこのような質問をしてくるお客様が多いと言う。

「帝国データバンクさんには、いい企業データがあるの?」

「いい企業データと仰いますと?」

「うちの商品を買ってくれる会社に決まってるよ」

「御社の商品を買ってくれる会社というのは、どういう会社でしょうか?」

「取引先は製造業が多いね。資本金が1億ぐらいで。関東圏で調べてよ」

「こちら、700社が引っ掛かりましたが」

「おいおい。期待していたのと全然違うなァ」

■「疑問そのまま質問」をしていないか?

なぜ、満足のいく答えが得られないのか。理由は簡単だ。質問の仕方に問題があるからだ。

質問は作るものだ。

にもかかわらず、質問を作ることに慣れていない人が多すぎる。頭に思い浮かんだ疑問をそのままのカタチで質問してしまう人も多い。

「どうして空は青いんだろう?」

と同じ感覚で、

「なんで売上が上がらないんだろうね?」

「君のやりたいことって何?」

「どうしたら部長と仲良くなれるんだろ?」

と質問する人がいる。これでは答えようがないし、無理やり答えても、おそらく質問者が満足する答えは返ってこないだろう。

いっぽう、質問された側が不満を抱くケースもある。たとえば、ある営業が得意先の製造メーカーへうかがい、企画部長にこんな質問をした。

「今月から担当になったSと申します。どうぞよろしくお願いいたします」

「よろしくお願いします」

「以前の担当から、しっかり引き継いでいますので、お任せください」

「それは頼もしいですね」

「さっそくですが、採用を強化するためのWEB戦略をお考えだとか」

「そうなんです」

「ご存じだと思いますが、当社はデザイン力に定評があるWEB制作会社です。そこはお任せください」

「……」

「さっそくですが、どんなWEBサイトにしましょうか?」

「帰ってくれませんか。あなたに話すことはありません」

「え?」

次は、ある社長の講演会での出来事だ。講演後、ひとりの参加者がこんな質問をした。

「本日の講演、大変ためになりました。私の経営にも役立てたいと思います。さて質問ですが、これから10年後、今の会社をどんな会社にしたいと思われてますか。ぜひお聞かせください」

それを問われて、講演者の社長は不満げにこう答えた。

「今と変わらず、社員がイキイキと働く会社であり続けたいですね」

■核心に迫る質問――「勝負質問」とは?

私は、質問した側が、

「それそれ!そういうのを教えてほしかった」

もしくは、質問された側が、

「それそれ!そういうのを聞いてほしかった」

と一発で満足する質問を『勝負質問』と呼んでいる。いわゆる核心に迫る質問だ。

それでは、これまでの会話例を使い、順番に解説していこう。そして、どのようにすれば『勝負質問』を作ることができるか。いくつかのポイントも紹介する。

まず「おいしい焼き肉屋」を尋ねる例だ。

3ヵ月ほど入院していた父が久しぶりにわが家へ戻ってきた。その父に会いに、遠くへ嫁いだ姉が戻ってくる。父と母、姉と自分。久しぶりに4人が顔を合わせる。だから外食でもしようという話になった。

年金生活の母は質素な生活を続けており、できればこの機会に少しばかりの贅沢な気分を味わってもらいたい。そこで、父の好きな焼き肉でも食べにいこうと考えた。