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「話す力」ばかり鍛えると、人が離れていく3つの理由

横山信弘経営コラムニスト
(提供:イメージマート)

■理由①「相手の話を聞けなくなる」

「話す力」は大事だ。特に人と関係を築くときは、盛り上がる会話ができたほうがいい。

しかし「話す力」ばかり鍛えていると、人は離れていく。理由は以下の3つだ。

・相手の話を聞けなくなる

・相手を選ぶようになる

・相手を練習台にする

一つずつ解説していこう。

まず最初の理由――「相手の話を聞けなくなる」について。

私はずっと「話す力」を鍛えている。これまでセミナーや講演で話した回数は軽く2000回を超える。だから、日ごろから鍛えるのは当然だと思っている。

しかし「話す力」ばかり鍛えていると、普段の会話にもその影響が出てしまう。誰かと一緒にいるとき、いつも「何を話せばいいか?」ばかり考えてしまうのだ。

以前の私がそうだ。部下と食事をするときは、必ず「ネタ帳」をチェックしてから店へ行った。会話が途切れたときに活用するためだ。10年以上も前から、雑談ネタをスマホに保存する習慣がある。

「話す力」を気にすると、話すネタのみならず語彙力も気にする。平凡なネタでもワードセンスを鍛えることで、

「面白い!」

「その視点は斬新だ」

と言われるようになるからだ。だが、会話中もそちらにばかり意識が向かうと厄介だ。

「いつ、この話題を持ち出すか」

「どういう味付けで話せば、より興味深い話になるか」

そればかりを考えてしまうようになる。もちろんそんな意識でいたら、相手の話は聞いていられなくなる。

「……それで、お兄ちゃんと一緒にお見舞いに行ったんですけど」

「ふん、ふん」

「思っていた以上に、お母さんの具合がよくって驚いちゃったんです。お兄ちゃんは凄くホッとしたみたいなんですけど」

「へえ。……ところで、あのさ」

「え?」

「先週の話なんだけど、俺、京都へ出張に行ったじゃん」

「あ、はい」

「そのとき、ビックリしたんだよね。京都駅の改札口でさあ、意外な人とバッタリ会っちゃって。誰に会ったと思う?」

「ええっ? それは……わからないですけど」

ろくに話も聞かず、このように自分の話を切り出されたら、誰だって戸惑うだろう。そして、いつもこんな感じだと、「どうせ私の話なんて聞いてくれない」とレッテルを張られる。

「最近どう? 何か話してよ」

と話を振られても、

「いや、別に。話題なんて、何もないですから」

と返されるのだ。話すネタで頭いっぱいになることは避けよう。

■理由②「相手を選ぶようになる」

「話す力」ばかり鍛えると人が離れていく2つ目の理由は、「相手を選ぶようになる」だ。

日ごろから「話す力」を鍛えていると、いつも自分の話を聞いてもらいたいと思うもの。自分で「この話は面白いぞ」と思っても、誰からも

「面白いですね」

「それは興味深い!」

と言われるかどうか、わからない。だからネタの仕上がり具合を確かめたくなるのだ。

「話す力」を鍛えることは、もちろんいいことだ。しかし、このような意識が強すぎると、自分の話を聞いてくれる人とだけ会話したくなる。職場でランチに行くときも、飲み会の席でも、ついつい自分の話を聞いてくれる人に声をかけてしまう。

特に上司にこの傾向が強いと、職場にいい影響はない。

「部長は、自分の取り巻き連としか飲みに行かない」

「課長が一緒にランチする人って、だいたい決まってるよね」

と言われるようになる。

家庭でも、その姿勢のままでいると人が離れていく。職場でも家庭でも「ネタ見せ」は、ほどほどにすべきだろう。

■理由③「相手を練習台にする」

「話す力」ばかり鍛えると人が離れていく3つめの理由は、「相手を練習台にする」だ。

「話す力」を鍛えたい人は、もちろんトーク技術も気になる。「聞き役」にまわったらトーク技術を磨くことができない。

技術向上には日ごろの鍛錬が不可欠だ。

だから、やたらと練習したくなる。研修を受けたり、本を読んでテクニックを知ったあとは、特にそうだ。だけど練習台になった相手は、いい迷惑だ。ひどいケースだと、

「今の間の取り方、どうだった?」

「昔と、声の出し方を変えたんだけど、わかった?」

などと、フィードバックまで求めてくる。

最初から「トーク練習に付き合って」と言われたのならいいが、さんざん話を聞かされてから技術的な感想を聞かれたら相手はどう思うか。

「そんな技術的なことまで気にして聞いてませんでしたよ」

と言いたくなる。

以前、営業トーク研修の講師をした際、こんなことがあった。ほとんどの受講生が研修後、お客様と会うと喋りまくるようになったという。

先方の営業部長から連絡があり、こう言われた

「研修で学んだことを忘れないうちに、試したかったんでしょうね」

と。

一過性のものならいい。しかし、お客様の話を全然聞かなくなったら本末転倒だ。マジメすぎるのも問題だ、という事例である。

「話す力」というのは、ここぞというときに発揮すればいい。とりわけ、まだ関係ができていない相手と会話するときは「話す力」のことは忘れよう。いい関係を築くためには、「何を話せばいいか」ではなく「何を話してくれるか」が重要なのだから。

※「何を話してくれるか」に集中するために質問力を磨こう!

【参考記事】

■【大作】相手を「大河ドラマの主人公」にする質問とは?

■一瞬で相手が「気持ちいい!」と感動する質問の作り方【1万字超の大作記事】

■【大作】「それそれ!それを聞きたかった」「それそれ!それを聞いてほしかった」――『勝負質問』の作り方

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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