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【Yahoo!ニュース 個人】9月の月間MVAとMVCが決定

(写真:アフロ)

■Yahoo!ニュース 個人、9月の「月間MVA(Most Valuable Article)」と「月間MVC(Most Valuable Comment)」が決定しました

社会の課題を伝えている・議論を喚起している・読者の心に響く……などの観点で選出している「月間MVA」。記事のアクセス数ではなく、目指す世界観「発見と言論が社会の課題を解決する」「文化の発展に寄与する」を体現している記事を、編集部を中心とした運営スタッフがアナログで選出しています。あわせて、Yahoo!ニュース 公式コメンテーターによるニュースへの理解が深まるコメントとして「月間MVC」も選出しました。厳選4本の記事と3本のコメントを、筆者の受賞コメントとあわせてご紹介します。

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9月のMVA

■浴槽内の浮き輪使用について考える(坂本昌彦)

筆者による受賞コメント:この度は栄えある賞をいただき嬉しく思います。この記事はSNSで首浮き輪が話題になったのを機に、その使用方法など早急に注意喚起を出す必要があると考えて大急ぎで執筆しました。記事を出した9/24は、多くの小児科医がSNS(Twitter)上で一斉に首浮き輪のリスクについて同じ方向を向いて発信し、子どもの安全を守るために自分たちに何ができるのかを議論した1日でした。その熱量にも押される形で執筆しましたので、先生方と一緒にいただいた賞と感じており、ひときわ嬉しく思います。溺水の治療は非常に難しく、予防に勝る治療はありません。適切な予防策で少しでも尊い命が守られるよう、熱い心で冷静な情報発信を心掛けていきたいと思います。(坂本昌彦)

選出理由:乳幼児向け首浮き輪・足入れ浮き輪の浴槽内利用に警鐘を鳴らした記事です。子どもの事故予防に強い課題意識を持つ筆者だからこそ、SNSで話題になったタイミングでの迅速な記事発信につながりました。「子どもは溺れるときは静か」という意外と知られていない事実にも触れた、育児をするすべての人に届いてほしい1本です。

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■〝命の音が聞こえない!〟とは。騒音苦情への対応姿勢を考える(橋本典久)

筆者による受賞コメント:視覚障碍者と音の問題を含めて、世の中には様々な意見があり、それは相互に対立します。問題なのはその場合の優先順位ですが、私は次の4つの順番を考えるべきだと思っています。①ハンディキャップ者が最優先、続いて、②公共の利益が優先、③個人的な事情の考慮、④配慮の必要性の判断、です。なぜ、ハンディキャップ者の利益が最優先かといえば、それは、ハンディキャップ者の利益を否定すると公共的、社会的な意識におけるマイナス面が大きいからです。ハンディキャップ者を社会が支えるという意識の醸成は、様々な面で社会によい果実をもたらすと私は考えています。しかし、現実の順位はどうでしょうか。この4つの順番が逆になってきています。今回の受賞が、日本社会の意識の変化を考える一つのきっかけになれば幸いだと思っています。月間MVAへの選出、有難うございました。(橋本典久)

選出理由:騒音苦情によって必要な音までをも止めてしまうことによる悪影響について丁寧に解説し、うるさいと苦情が寄せられたその音は「視覚障碍者の命の音」なのか「騒音」なのかを改めて考えさせてくれた1本です。ダンプカーがバックする時の警報音や交差点に設置された音響信号機の案内音などといった、視覚障碍者にとってなくてはならない音でさえも苦情によって消されてしまう今だからこそ、音を止める前に適切な対処法かどうかを今一度よく判断してほしいと筆者は説いています。

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■「助けは来ない。だから自分たちでやる」軍事政権に挑むミャンマーの若者たちの希望と苦悩を聞け①(舟越美夏)

筆者による受賞コメント:ある日突然、思い描いていた未来が消え、自由や権利が奪われる。武力弾圧に国際社会は沈黙している。こんな状況の中で、武装闘争を決意したミャンマーの10代や20代は、普通の若者たちです。希望や恐怖、悩みと共に成長していく彼らを描くことで、ミャンマーの悲劇を肌感覚で捉えてもらえるのではないか。そう考えて始めた取材でした。若者たちにはそれぞれに異なる物語がありますが、共通しているのは呆れるほど強固な意志と「他者への思いやり」です。しかし、「人生これから」という時期に「次世代のために」と命をかけなければならない事実は痛ましく、あってはならないことです。こんな事態を長引かせないためには、国際社会がミャンマーの悲劇に関心を示し続けることが不可欠です。中でも歴史的、政治的に深い関係がある日本の役割は重要なはずです。大手メディアでは滅多に取り上げられることがなくなったテーマに光を当てて下さった、ヤフー個人の担当者の皆様にも感謝します。ありがとうございました。(舟越美夏)

選出理由:クーデターから1年半が過ぎ、報道量も減っている中で、ミャンマーで国軍に挑み続ける若者たちの実情を伝える連載です。本記事では、武力闘争と無縁だった26歳の医師にフォーカスし、どんな経緯で抗議デモのリーダーとなり武器をとったのか、彼の心情の変化と取り巻く状況の変化を丁寧に描きながら伝えています。読み手が自然と引き込まれ「自分事化」してしまう筆致に筆者の腕が光ります。

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■深夜、濁流が町を襲った しかし報道もない、市の支援もない、だから助け合うしかない、静岡市葵区のSOS(堀潤)

筆者による受賞コメント:ありがとうございます。被災された住民の方、実家のある方、現場からの切実な一報を受けいてもたってもいられなくなった方、そうした皆さんからのSOSが私の元に寄せられ取材が始まりました。共に考え、憤り、慮り、発信したのが今回の一連の「静岡台風15号被害報道」です。またYahoo!での発信をはじめ今回の記事を見て下さった方々が直接ボランティアに参加したり、あらたな発信を始めたりと、アクションの輪が広がっていったことにも感激しました。「伝われば、必ず応答する人がいる」それが支えになりました。災害時には私のLINEアカウント junhori1 を解放しています。これからも共に発信を。現地での取材、支えて下さった地元の皆さんにも本当に感謝です。(堀潤)

選出理由:台風15号による記録的豪雨に襲われた静岡市。この記事はいまだ残る生々しい被害の爪痕と、住民の「いま必要なもの」をていねいな取材ですくいあげています。複数の自治体の被害報告を検証し、行政の水害対応を考える上でも貴重な内容となっています。加えてこの水害を巡る筆者の一連の発信は、被害報道からこぼれ落ちた地区の窮状を伝えることに力点を置いており、被災者に寄りそう眼差しは災害報道の経験豊かな筆者ならではのものと言えます。

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9月のMVC

■「中国離れ」進むリトアニア 経済圧力屈せず台湾接近(時事通信)の記事へのコメント(小笠原欣幸)

筆者による受賞コメント:台湾関連の記事について背景を解説する地味なコメントばかりなので,月間 MVC受賞と聞いて驚きました。編集部のみなさんには台湾-リトアニア-中国の関係という細かいところまで見ていただいて大変うれしく思います。台湾の国際ニュースが日米中だけでなく,遠く離れたリトアニアにまでつながる時代となりました。今後も,台湾が何を考えているのかを常に念頭におきながら,台湾情勢を理解するのに役立つようなコメントを発信していきたいと考えております。(小笠原欣幸)

選出理由:台湾をめぐるリトアニアの動向、それに対する中国の姿勢の双方が良く分かるコメントです。リトアニアの貿易統計の変化が指摘されており、リトアニアの動きを受けた中国の対応を具体的に把握できます。また、専門家として最新の情報にも言及されており、よりタイムリーな情報を読者に届けています。リトアニアと台湾との関係を詳しく知らない読者も含め、今の世界情勢を理解するための情報価値が高いコメントです。

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■「動員令」に反発し出国のロシア人保護せず、ラトビア外相(CNN.co.jp)の記事へのコメント(鶴岡路人)

筆者による受賞コメント:コメントを読んでくださる方々がいらっしゃるのは嬉しいことです。「動員逃れ」で国外を目指すロシア人について、コメントした当時は、欧州でもとりあえず受け入れるべきか否かという議論でした。ただしこれは、今回の戦争に関して責任を負うべきなのはロシア政府のみなのか、それとも一般のロシア人にも責任があるのかという、重い大きな問題に直結しています。「集団責任」の考え方をとるか否かということです。日本にいるロシア人が母国に帰るのを拒んだときに、日本はどう対応するのでしょうか。決して欧州だけの問題ではありません。引き続きよろしくお願いします。(鶴岡路人)

選出理由:ロシアの隣国のラトビアが動員令から逃れるロシア人の入国を禁止する方針を示した記事についてのコメントです。人口の少ないバルト諸国でロシア人の大量の受け入れは安全保障上のリスクに関わることや、EU加盟国でもあることからEUにとっても難しい問題に発展する可能性があることなど、専門家の視点から背景を丁寧に解説してくれました。

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■中国製の激安「偽造品」のせいで「売上減った」、アマゾンに2億円の賠償求め提訴…正規品パルスオキシメーター業者(弁護士ドットコムニュース)の記事へのコメント(牧野和夫)

筆者による受賞コメント:「模倣品」がECサイトで増加して新製品が販売の影響を受ける対策として、商標など知的財産権の侵害を根拠として損害賠償請求を行う伝統的な手法ではない、営業妨害(不法行為)を根拠とした「新しいタイプの法的措置」と専門的な視点から指摘した点を評価していただき、非常に嬉しいです。今後も難しい法律問題を読者のみなさまに分かり易く解説して行きます。(牧野和夫)

選出理由:大手ECサイトを相手取り損害賠償を求めて提訴した記事へのコメントです。従来の知的財産権の侵害を根拠として損害賠償請求を行う対応ではなく、今回は「相乗り出品」や「偽造品」に対するECサイトにおける販売システムなどについて損害賠償請求をする新しいタイプの法的措置であることを、専門家ならではの知見をもとにわかりやすく解説してくれました。

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