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【Yahoo!ニュース 個人】8月の月間MVAとMVCが決定

(写真:アフロ)

■Yahoo!ニュース 個人、8月の「月間MVA(Most Valuable Article)」と「月間MVC(Most Valuable Comment)」が決定しました

社会の課題を伝えている・議論を喚起している・読者の心に響く……などの観点で選出している「月間MVA」。記事のアクセス数ではなく、目指す世界観「発見と言論が社会の課題を解決する」「文化の発展に寄与する」を体現している記事を、編集部を中心とした運営スタッフがアナログで選出しています。あわせて、Yahoo!ニュース 公式コメンテーターによるニュースへの理解が深まるコメントとして「月間MVC」も選出しました。厳選5本の記事と4本のコメントを、筆者の受賞コメントとあわせてご紹介します。

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8月のMVA

■注目度ではトップクラス「ちむどんどん」は新型の朝ドラ?(境治)

筆者による受賞コメント:「ちむどんどん」は奇妙な見られ方をしている朝ドラです。「反省会」のハッシュタグが毎日盛り上がり、悪口を寄せ合うために見ているようです。それもありだと思いこの記事を書きました。ところが、9月に入るとさらにエスカレーションし、煽り記事が乱立したりTwitterでも粗探しの傾向が加速しました。記事はネットの空気を左右します。だからこそ空気に乗っかるだけの記事にならないよう気をつけたいと思います。MVAは何年ぶりかです。選出ありがとうございました。(境治

選出理由:Twitterで「#ちむどんどん反省会」のハッシュタグが立つなど、ネット上で批判の声もある朝ドラ「ちむどんどん」について、数字やデータをもとにして再評価した記事です。ネット上にある誤った言説を、事実をもとに正し、「注目度」の基準ではトップクラスであることを指摘しています。近年、変化しつつある「テレビ視聴」への態度なども分析し、テレビ業界の今後に懸念も示しつつ、愛ある提言になっている内容です。

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■日本でなぜ蕎麦文化が花開いたのか:蕎麦と火山との密接な関係(巽好幸)

筆者による受賞コメント:日本は地球上で最も火山が密集する火山大国です。先人たちは火山噴火による災害や、国土の30%以上を覆う不毛な火山性土壌に悩まされてきました。そんな中で痩せた土壌でも育ち、比較的冷涼な気候にも適応するソバは、人々にとって米の代用、またはバックアップである救荒作物として育てられてきました。蕎麦をはじめとして日本の伝統料理は、地震や火山噴火などの試練に耐えながら、恩恵でもある多様な食材を用いて調理し、感謝を持って頂いてきたものです。このような食と日本列島の素敵な関係を紐解く「美食地質学」を、今後も進めてゆきたいと思っています。ありがとうございました。(巽好幸

選出理由:「関東は蕎麦(そば)、関西はうどん」と今でも言われることがありますが、なぜなのか、その訳をルーツとともに解き明かしました。江戸(東京)から広がったそば文化は、実は火山と関係があり、関東平野の火山性耕作不適、いわゆる「痩せた土壌」をなんとか活用しようと、ソバを栽培したのが始まりだといいます。そばを食べながら、誰かにちょっと話してみたくなる。そんな、江戸文化らしい、粋な記事でした。

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■人工知能の無料配布は、パンドラの箱か、新しい世界変革のはじまりか(徳力基彦)

筆者による受賞コメント:月間MVAへの選出ありがとうございます。正直、AIの可能性について今まで自分ではあまり良く腹落ちしていなかったのですが、画像生成AIを実際に自分で使ってみて、そのあまりの衝撃に慌てたのが正直なところです。そこで、自分の勉強のためにも、現時点での状況や思いをまとめておかなければという気になって、いろいろと調査して書いた記事がこちらでした。特に今回の画像生成AIの無料配布は、後から歴史の転換点として振り返ることになるのではないかと思いますので、今後の展開にも注目したいと思います。(徳力基彦

選出理由:ネット業界を中心に大きな話題となった人工知能、AIを使用した様々な画像生成サービスについて、今後の影響や活用方法などの見解をまとめた記事です。自身でも実際に使用し、生成された画像も例示しています。画家やイラストレーターといった既存の仕事がどうなるのかといった懸念だけでなく、音声や映像の分野への派生、新しい創作活動への発展などにも触れ、AIによる変革の現在地がよくわかる内容です。

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■事実であっても真実とは違う印象 戦争中の台風報道と終戦の年の冷夏(饒村曜)

筆者による受賞コメント:このたび、月間MVAに選出していただき、ありがとうございます。この記事は、毎年8月15日頃の画一的に報道される事実が、年月がたつにつれて真実とは違う印象を与え、多大な犠牲を払って得た教訓が、後世で活かせる教訓にはなっていないのではと思ったからです。記事掲載後「初めて知った」という反応を多数いただきましたが、図書館ではインターネットで過去の新聞記事が検索できる時代になっており、自然災害が大きかったのは「報道管制で気象情報がない」ことではなく、「特別の時だけに発表する情報は機能しない」ということがわかります。ネット情報にある日々の気象情報を早期から意識することが大切ですし、また、そのネット情報も特別な時には拡大しますので、ネット社会が防災に果たす役割は大きくなっています。(饒村曜

選出理由:終戦の日にあわせ、気象防災について考えさせてくれた1本です。戦時中、敵に気象情報を利用させないため天気予報の発表が中止されたことを知っている方は多いのではないでしょうか。実は、台風等による暴風警報の発表は特令で行われていたそうですが、具体的な原因は言わず危ないことだけを知らせるものだったため、効果はあまりなかったようです。現在内閣府の「避難情報に関するガイドライン」では、5段階の警戒レベルを明記して防災情報が提供されることになっていますが、筆者は「特別の時だけに発表する情報は機能しない」と、日々の気象情報を早期から意識することの大切さを説いています。

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■井上尚弥に最後に勝った男は今? カザフ人ボクサーが語るモンスターとの遭遇(三浦勝夫)

筆者による受賞コメント:月間MVAに選出していただきありがとうございます。アマチュア時代に井上尚弥が負けた相手には日本の林田太郎氏やキューバ選手がいますが、やはり最後の敗戦ということでジャキポフ氏に興味が湧きました。4月、ゴロフキンvs村田諒太の直後、カザフスタンの反応を伝える記事の翻訳を担当したことで現地の記者アレクサンドル・ストレルニコフ氏の連絡先を入手。英語の達者な同氏の尽力によってジャキポフ氏の近況がわかり井上戦の背後の事情を知ることができました。そしてモンスターに勝った男は母国でポピュラーな存在であることが伝わってきました。ストレルニコフ氏のサポートには心から感謝しております。(三浦勝夫

選出理由:日本人初PFPランキング1位、世界3階級制覇、バンタム級3団体統一など伝説を書き換え続ける井上尚弥選手。プロでは負けなしの井上選手最後の黒星は、10年前アマチュア時代のことでした。本記事はその勝者であるカザフスタン人選手を取材。五輪に出るもアマのまま終えた彼のキャリアを振り返りながら、若き日の“モンスター”の姿を探ります。拳を通して一瞬人生を交えた二人の物語からボクシングという競技の奥深さを感じることができる1本です。

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8月のMVC

■『【速報】行方不明から7日 熊本・八代市の国見岳で遭難していた男性を発見(RKK熊本放送)』の記事へのコメント(加藤智二)

筆者による受賞コメント:登山や自然に入る行為は昭和の未知と憧れの開拓期に比べると、他人へのSNSアピールと健康志向の側面がより強く評価されてきています。自然であるからと言って無所有物ではなく個人であれ、公有であれ、その利用を善意のもとに利用しています。準備不足や思い違いによって発生する遭難は地元に大きな負担と不安をかけていることにも目を向ける必要があります。誰しも起こしたくて起こす遭難はありません。しかし、地域社会と分離していくわけにはいきません。他人のSNSなどと比べるのではなく、他人の批評を気にするのではなく、自分の肉体と精神に向きあい、失敗を肥やしに前進してほしいという気持ちを込めました。命を懸けるほどの失敗ではなくとも自らの決断によって生じる結果に寄り添うことで、必ず次のステップに進むことができると信じています。早く多くの失敗を経験することが重要です。前進してほしい、山登りを続けてほしいと願って書きました。(加藤智二

選出理由:下山中に遭難していた男性が南側にある山の山頂近くの林道で発見されたと報じる記事へのコメントです。下山始めの小さな誤りが大きな方向違いにつながるケースは多く、引き返すために必要なのは勇気ではなく体力と時間であると解説。報道により危険に対する意識が高まった機をとらえ、登山を安全に楽しむために有益な情報を提供しました。

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■『大谷翔平104年ぶり偉業ついに達成!“野球の神様”ベーブ・ルースに並ぶ“2桁勝利&2桁本塁打”、イチロー超え25号で祝砲(TBS NEWS DIG Powered by JNN)』の記事へのコメント(菊地慶剛)

筆者による受賞コメント:まずはMVCに選出して頂いたYahoo!ニュース 個人の皆さんに感謝します。昨今大谷翔平選手の活躍が日々注目を集める中、日本で報道される記事について、さらに付加価値の高い情報を読者の方に提供することを目的にコメントに取り組んでいます。今後もその目的を忘れずにコメントしていきたいと思います。(菊地慶剛

選出理由:大谷選手がベーブ・ルース氏が記録した「2桁勝利&2桁本塁打」に104年ぶりに並ぶ偉業達成。ルース氏が記録した1918年当時と今回の達成について、投手陣やチーム状況を比較しながら、記録の重みの違いを解いています。同時に、「2年連続で前人未踏の25本塁打&150奪三振を達成」に触れ、現在の大谷選手の「二刀流」がいかにすごいものかを伝えたことで、見ている方たちもより誇らしい思いになれたように思います。

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■『特攻隊の『覚醒剤チョコ』最後の食事だったのか...記録には残されず「食べた瞬間にカーッときました」食料工場の女性や軍医の証言(MBSニュース)』の記事へのコメント(宮本聖二)

筆者による受賞コメント:なぜ戦争をするのか、なぜ国家あるいは権力者が、その国あるいは敵とした国の人々の命を軽く扱うのでしょうか。今もその問いに解が与えられていません。だからこそ、戦争のあらゆる側面を見つめ、戦争の本質である倒錯性をあらわにして行く営みを続けなくてはならないと思うのです。今後も、戦争に関するドキュメンタリーやコンテンツ、研究論文を作り続けようと思います。(宮本聖二

選出理由:戦時中の特攻隊が出撃前に「覚醒剤チョコ」を口にしていた可能性について、専門家や軍医の証言をまとめた記事へのコメントです。特攻隊の若者が残した遺書や手紙からうかがい知れる面だけでなく、その背景にある「作戦」としての特攻。その遂行のために非人間的な準備をしていた側がいることに目を向けさせてくれる内容です。

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■『有人潜水船、最深9801m到達 小笠原海溝、日本記録を更新(共同通信)』の記事へのコメント(山田吉彦)

筆者による受賞コメント:ジュール・ヴェルヌが、海洋冒険小説「海底二万里」を発表したのは1870年。世界中の人々が深海への冒険を夢みてから、140年以上が過ぎています。近年、ようやく深海調査が進められ、深海には、資源、エネルギー、食、医療など地球の未来を支える可能性があることが伝えられるようになりました。深海底は、人類共通の財産です。多くの人が未知の世界「深海」に興味を持っていただいたことを嬉しく思うとともに、MVCに選出いただき感謝の気持ちでいっぱいです。(山田吉彦

選出理由:日本人による有人の最深潜航記録を60年ぶりに256m更新を報じた記事へのコメントです。日本の深海探査の実績について、地球にある海洋の海底最深部のマリアナ海溝のチャレンジャー海淵を1984年に日本の調査船が測定していることなどを紹介。さらに、深海研究が注目されているポイントにも触れられており、深海に馴染みがない読者の理解がより深まる内容になっています。

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