Yahoo!ニュース

この投手の6年5300万ドルは高いのか安いのか。メジャーリーグ1年目の昨シーズンは防御率4.44

宇根夏樹ベースボール・ライター
ハンター・グリーン(シンシナティ・レッズ)Apr 17, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 4月18日、シンシナティ・レッズは、ハンター・グリーンと6年5300万ドルの延長契約を交わしたことを発表した。期間は、2023年から2028年まで。7年目の2029年は、年俸2100万ドルの球団オプション。レッズがオプションを破棄する場合の解約金は200万ドルだ。

 レッズは金額の内訳を公表していないが、MLB.comのマーク・フェインサンドらによると、サイニング・ボーナス(契約金)が200万ドルで、年俸は、2023年が100万ドル、2024年が300万ドル、2025年が600万ドル、2026年が800万ドル、2027年が1500万ドル、2028年が1600万ドルだという。契約金、2023~28年の各年俸、オプション破棄の解約金を合計すると、5300万ドルとなる。

 グリーンは、23歳の右投手だ。2017年のドラフトで、レッズから全体2位指名を受けた。昨年4月にメジャーデビューし、先発24登板で125.2イニングを投げ、奪三振奪三振率11.75と与四球率3.44、防御率4.44を記録した。今シーズン、ここまでの4登板は、17.0イニングで奪三振率12.71と与四球率3.18、防御率4.24だ。

 サービス・タイム1年以上2年未満の投手が手にした契約のなかで、ハンターの6年5300万ドルは、スペンサー・ストライダー(アトランタ・ブレーブス)の6年7500万ドルに次ぎ、総額の歴代2位に位置する。ストライダーとブレーブスは、昨年10月に契約を交わした。期間はグリーンと同じ。20192029年が球団オプションという点も共通する。こちらのオプションは、年俸が2200万ドル、解約金は500万ドルだ。

 24歳のストライダーは、2020年のドラフト4巡目・全体126位。2021年10月にデビューし、昨シーズンは、救援11登板と先発20登板で計131.2イニングを投げ、奪三振率13.81と与四球率3.08、防御率2.67を記録した。今シーズンの4登板は、22.0イニングで奪三振率14.73と与四球率4.50、防御率2.45だ。

 ストライダーもグリーンも、4シームとスライダーの2球種が投球のほとんどを占める。2人とも、わずかながらチェンジアップも投げる。

 契約の年平均額は、ストライダーが1250万ドル、グリーンは883万3333ドルだ。ここまでの奪三振率はストライダーのほうが高く、与四球率と防御率はストライダーのほうが低い。

 もっとも、4シームの平均球速は、グリーンが上だ。スタットキャストによると、昨シーズンの4シームは、ストライダーが平均98.2マイル、グリーンは平均98.9マイルだった。また、100マイル以上は、ストライダーの77球に対し、グリーンは337球を数えた。

 ここから、グリーンが順調に伸びれば、6年5300万ドルの契約は、ストライダーとの比較においてだけでなく、レッズにとって高くなかった、ということになり得る。サンプル数としては少なめだが、昨年7月からシーズン終了までの9登板は、51.2イニングで奪三振率12.37と与四球率2.79、防御率2.61を記録している。

 なお、ブレーブスとレッズは、状況が異なる。地区5連覇中のブレーブスは、ストライダー以外の選手とも長期契約を交わしている。それについては、「王朝再び!? 3ヵ月に3人の若手と延長契約を交わす。合計額は3億5900万ドル」「ブレーブスの方針はブレない。昨オフに続き今オフもトレードで獲得直後に延長契約」で書いた。

 一方、2014年以降の9シーズン中、レッズのポストシーズン進出は、短縮シーズンの2020年しかない。レッズでは、今シーズンが終わると、ジョーイ・ボトーの10年2億2500万ドルの契約と1月に解雇したマイク・ムスタカス(現コロラド・ロッキーズ)の6年6400万ドルの契約は、ともに満了を迎え(どちらも2024年は球団オプション)、複数年契約の選手はグリーンだけとなる。

 グリーンに続き、レッズは、どの若手と延長契約を交わすのか。その見極めは、今後の浮沈を左右することになりそうだ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

宇根夏樹の最近の記事