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無名のルーキーがデビュー3登板目に19人中13人から三振を奪う。被安打は1本、与四球はゼロ

宇根夏樹ベースボール・ライター
DJ・ハーズ(ワシントン・ナショナルズ)Jun 15, 2024(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 6月15日、DJ・ハーズ(ワシントン・ナショナルズ)は、マイアミ・マーリンズを相手に6イニングを投げて得点を許さず、対戦した19人中13人から三振を奪った。与四球と与死球はなく、被安打はシングル・ヒット1本だけ。各イニングの奪三振は、2、2、3、1、2、3だ。

 ハーズは23歳。今月4日にメジャーデビューした。最初の2登板は、4.0イニングで4失点(自責点4)と4.1イニングで2失点(自責点2)。奪三振は3と5、与四球は2と3だった。

 3登板目は、ナショナルズが4対0で勝ち、ハーズは初白星を挙げた。

 ナショナルズの広報は、ハーズの1試合13奪三振について、今シーズンのナショナルズの投手では最も多く、13奪三振以上は、2021年5月8日に14奪三振のマックス・シャーザー(現テキサス・レンジャーズ)以来、と謳っている。

 MLB.comのサラ・ラングスによると、1901年以降、キャリア最初の3登板のいずれかで、13奪三振以上&与四球ゼロは、2010年6月8日に14奪三振のスティーブン・ストラスバーグに続く、メジャーリーグ史上2人目。ハーズと違い、ストラスバーグは初登板だ。7イニングで2失点(自責点2)だった。ストラスバーグは、キャリアを通してナショナルズで投げた。

 また、3登板目にハーズが記録した奪三振の割合、68.4%(13/19)は、オプタ・スタッツによると、モダン・エラ――1900年あるいは1901年以降――において、1試合に打者15人以上と対戦したルーキーでは、1998年5月6日に20奪三振のケリー・ウッド(69.0%)に次ぐ高さだという。ウッドは、デビュー5登板目。9イニングを投げ、29人中20人から三振を奪った。

 ハーズは、ウッドやストラスバーグのようなトップ・プロスペクトではない。ドラフト順位は、ウッドが1995年の全体4位、ストラスバーグが2009年の全体1位、ハーズは2019年の8巡目・全体252位だ。シカゴ・カブスに指名されてプロ入りし、昨年の夏、ジェイマー・キャンデラリオ(現シンシナティ・レッズ)の交換要員の一人として、ナショナルズへ移籍した。トレバー・ウィリアムズが離脱しなければ、今もまだ、マイナーリーグで投げていた可能性もある。

 ただ、マイナーリーグで記録した奪三振率――こちらは9イニング平均――は、過去3シーズンのいずれも、12.65を超えている。今シーズンの昇格前は、AAAの36.0イニングで42奪三振、奪三振率は10.50だった。6月15日の登板で特筆すべき点は、奪三振よりも与四球かもしれない。今シーズンの昇格前を含め、過去4シーズンとも、与四球率は4.80を下回ったことがなかった。

 スタットキャストによると、4シームは90マイル台前半なので、それほど速くはない。4シームに次いで多く投げるチェンジアップが、6月15日はよく決まっていた。今後の投球も、チェンジアップがポイントになりそうだ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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