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「FAトップ50」のうち、球団が決まっていないのはこの選手だけ。1年前に断った延長契約は1億ドル

宇根夏樹ベースボール・ライター
マイケル・コンフォート Jul 3, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 今頃、マイケル・コンフォートは、クオリファイング・オファーを却下したことを悔やんでいるかもしれない。FAになったコンフォートに対し、それまで彼が在籍していたニューヨーク・メッツは、1年1840万ドルのクオリファイング・オファーを申し出た。また、SNY(スポーツネット・ニューヨーク)のアンディ・マルティノによると、昨春、メッツはコンフォートに総額1億ドルの延長契約を提示していたという。

 MLBトレード・ルーマーズのティム・ダーケスが発表した「FAトップ50」のうち、48人の球団は決まった。あとの2人は、カイル・シーガーとコンフォートだ。実質的には、コンフォートだけ。シーガーは、選手生活にピリオドを打った(「今年は自己最多の「35本塁打&101打点」ながら34歳で引退。弟は10年3億2500万ドルの新契約」)。

 これは、ファングラフスのベン・クレメンスやCBSスポーツのR.J.アンダーソンによる「FAトップ50」でも、同様だ。顔ぶれは多少異なるが、いずれの50人にもコンフォートは入っている。

 コンフォートは、29歳の外野手だ。2014年のドラフトで全体10位に指名され、翌年の夏にメジャーデビューした。昨シーズンは、序盤に右太腿裏を痛めた影響もあったのか、125試合で14本塁打に終わったが、2017~19年の3シーズンは、それぞれ、27本、28本、33本のホームランを打った。加えて、2016年以降、四球率はどのシーズンも10%を超えている。守備はそううまくなく、左投手も得意ではないとはいえ、ナ・リーグのDH導入により、欲しがる球団はいくつかあると思われた。

 実際、ニューヨーク・ポストのマイク・プーマによると、ロックアウト前には、ニューヨーク・ヤンキースとアリゾナ・ダイヤモンドバックスが興味を示していたという。今月半ばには、NBCスポーツ・ベイエリアのアレックス・パブロビッチが、サンフランシスコ・ジャイアンツは左打者を探していて、コンフォートも候補の一人、と報じていた。だが、その直後に、ジャイアンツはコンフォートと同じ左打ちの外野手、ジョク・ピーダーソンと1年600万ドルの契約を交わした。

 昨シーズンの不振だけでなく、クオリファイング・オファーを申し出られたことも、コンフォートにはマイナスに働いている。例えば、ジャイアンツがコンフォートと契約した場合は、今年のドラフトで持っている上から2番目の指名権を失い、インターナショナル・サイニング・ボーナス・プール(海外のアマチュア選手と交わす契約金の総額枠。一部の海外プロ選手も含む)から50万ドルを減らされる(これらの喪失は、その球団が贅沢税を課されているかどうかと、収益分配金を受け取っているかどうかにより、多少異なる)。

 メッツがコンフォートと再契約を交わせば、こういった喪失は生じないが、今さら呼び戻すことはないだろう。今オフ、メッツは、外野にスターリング・マーテイマーク・キャナを加えた。センターには、ブランドン・ニモがいる。DHは、ロビンソン・カノーが務める予定だ。それらについては「メッツは鈴木誠也に手を出さない!? FAの外野手2人と立て続けに契約」「「ユニバーサルDH」により、DHに転向しそうなナ・リーグの大物たち。薬物違反による出場停止を終え…」で書いた。

 2017年のシーズン終了後に、カンザスシティ・ロイヤルズからFAになったマイク・ムスタカス(現シンシナティ・レッズ)は、1740万ドルのクオリファイング・オファーを却下し、翌年の3月に入っても球団が決まらず、結局、650万ドルでロイヤルズに戻った。今年のドラフトは7月17~19日なので、そうはならないと思うが、なかには、6月初旬のドラフトが終わり、指名権を失わずに済むようになるまで契約を得られなかった、ケンドリス・モラレスクレイグ・キンブレル(現シカゴ・ホワイトソックス)の例もある。

 ちなみに、キンブレルは違うものの、モラレスとムスタカスだけでなくコンフォートも、代理人業務を請け負っているエージェンシーは、ボラス・コーポレーションだ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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