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「ユニバーサルDH」により、DHに転向しそうなナ・リーグの大物たち。薬物違反による出場停止を終え…

宇根夏樹ベースボール・ライター
ロビンソン・カノー(ニューヨーク・メッツ)Sep 24, 2020(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 メジャーリーグの開幕がいつになるのかは、まだわからないが、今シーズンから、ナ・リーグもDHを導入する。昨シーズンは主に外野を守り、現在はFA市場に出ている選手、カイル・シュワーバーニック・カステヤノスホルヘ・ソレーアらを、DHとして迎え入れるようとするナ・リーグの球団もありそうだ。彼らの守備は、お世辞にもうまいとは言えない。

 また、在籍している選手をDHに転向させる方法もある。例えば、ニューヨーク・メッツの場合、二塁手のロビンソン・カノーがその候補だ。ちなみに、昨シーズンはプレーしていない。2020年のオフに2度目の薬物違反が発覚し、162試合の出場停止を科された。

 カノーは、ゴールドグラブを2度受賞している。ただ、その2度目は10年前。現在の年齢は39歳だ。10年2億4000万ドルの契約は、あと2年分が残っている。2022年も2023年も、年俸2400万ドルだ。それを支払うメッツとしては、額面どおりとまではいかずとも、それなりの働きをしてもらうため、打撃に専念させるのではないだろうか。ちなみに、MLB.comのアンソニー・ディコモが、DHになることに否定的なカノーのコメントを報じたのは、2年前の夏だ。今も同じ気持ちかどうかはわからない。

 直近とはいえ、2020年は短縮シーズンなので、判断材料として十分ではないものの、この年のカノーは、49試合でホームラン10本と二塁打9本を打ち、打率.316と出塁率.352、OPS.896を記録している。また、350本塁打と600二塁打のマイルストーンまでは、それぞれ、あと16本と29本。かつてのカノーなら、オールスター・ブレイク前に到達してもおかしくない本数だ。

 二塁には、ジェフ・マクニールが入るだろう。打撃不振の昨シーズンは、夏に加入したハビア・バイエズ(現デトロイト・タイガース)に二塁を譲り、以降はレフトを守った。それまでの3シーズンは、いずれも打率.310以上と出塁率.380以上を記録している。2019年のホームランと二塁打は、23本と38本を数えた。

 一方、シンシナティ・レッズでは、これまで三塁と二塁を守ってきたマイク・ムスタカスがDHになりそうだ。こちらは33歳。4年6400万ドルの3年目を迎える。

 三塁は、エウヘニオ・スアレスの定位置だ。二塁には、昨シーズンの新人王、ジョナサン・インディアがいる。一塁は、ジョーイ・ボトーが守る。ムスタカスに外野の経験はなく、遊撃も、プロ入り当初にマイナーリーグで守っただけだ。

 ロックアウト前に、レッズはFAとメジャーリーグ契約を交わしておらず、先発投手の3人、ルイス・カスティーヨタイラー・マーリーソニー・グレイには、トレードで放出の噂が出ている。ただ、ムスタカスの場合、昨シーズンの不振と故障からすると、売りに出しても買い手がつくかどうかはわからず、現れたとしても安く買い叩かれる。レッズとしては、スラッガーとして復活を遂げた後、夏のトレード市場や次のストーブリーグで売れば、見返りは大きくなる、と考えているのではないだろうか。

 ユニバーサルDHについては、こちらでも書いた。

「ナ・リーグのDH導入で「投手による最多本塁打」は不滅の記録に!? それとも大谷翔平が塗り替える!?」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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