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「終わった男」は、やはり薬物の力を借りての勝利だった

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
(写真:REX/アフロ)

 4月20日に、3.2パウンド(1.45kg)のオーバーウエイトでリングに上がり、デヴィン・ヘイニーを判定で下したライアン・ガルシア。スポーツ医学研究所によって行われたB サンプルの検査でも陽性反応が出た。

 ヘイニーの代理人であるパット・イングリッシュ弁護士は「ガルシアvs.ヘイニー戦の前日と当日に行われた薬物検査のBサンプルから、禁止薬物オスタリンの使用が認められた」と報告した。

 同弁護士は、Bサンプルの検査後、5月23日に結果を知らされたと述べた。VADA(アンチ・ドーピング協会)から委託されたうえで、スポーツ医学研究所が検査を実施している。

写真:REX/アフロ

 ガルシア側の弁護団は、オスタリンの陽性反応はサプリメントの衛生問題に起因すると主張。弁護団は「ライアン・ガルシアはリングにおいて、クリーンで公正な競争をしており、禁止薬物を意図的に使用したことは一度もない。彼は陽性反応の通知を受けてすぐ、自発的に毛髪を採取し、毒物学と毛髪サンプル分析の第一人者であるパスカル・キンツ博士に送っている。ライアンの毛髪サンプルの結果は陰性だった。毛髪検査は、ガルシアが一定期間にわたってオスタリンを摂取していなかったことを証明している」なる声明を出した。

 弁護団は更に言及した。

 「ガルシアはサプリメント汚染の被害者であり、微量のサプリメント摂取では、パフォーマンス向上の恩恵など受けていなかったことが明らかにされた。正確な発生源を特定するためにサプリメントの検査を行っているところだ」

 ライアンは積極的に検査を受けているものの、ルール違反を告げる結果ばかりだ。それでも敏腕弁護士を雇って、世論に戦いを挑めるのは、人気選手であり、カネを生むからだ。

 イングリッシュ弁護士は、ヘイニー戦はニューヨークで催されたため、この問題は今後ニューヨーク州アスレチック委員会に提出されるだろう、停職処分が下される可能性があり、ガルシア陣営が公聴会を開くかもしれないと付け加えた。

 今後、ボクシング界は、このお騒がせ男をいかに扱うのか。彼のような存在は、ボクシングの発展にけっしてプラスにはならないと、筆者は感じる。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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