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「炎に包まれる兵士」北朝鮮"地上での被害"の衝撃場面

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
北朝鮮「火星15」の発射場面(朝鮮中央通信)

北朝鮮は27日夜、2基目となる軍事偵察衛星を打ち上げたものの、上昇段階で空中爆発して失敗した。夜空を飾った鮮やかな炎をカメラが捉えたこともあり、今回の失敗は人々の目に、いっそう強いインパクトを与えたかもしれない。

だが、北朝鮮の関係者にとって幸いだった点が少なくとも2つある。

金正恩総書記は実験に失敗しても、技術者を処罰していないということだ。これは当たり前のことかもしれないが、あの国ではそうではない。

現に、工場の管理不備の責任を問われた支配人や、会議で「居眠りをした」とされる軍高官は無慈悲に公開処刑されている。

そしてもうひとつは、あの大規模な爆発が地上ではなく空中で起きたことだ。仮に地上で発生していれば、打ち上げ施設が甚大なダメージを受けるだけでなく、人命被害も出ていたかもしれない。

実際、北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)を開発していた段階では、その種の事故が多発していたと見られている。

たとえば米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、北朝鮮が2017年11月29日、移動式発射台(TEL)から大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15」型を発射した際には、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の兵士と思しき人物が、エンジンから噴出された火炎に包まれて死亡したとの情報が出ている。しかも北朝鮮が公開した映像に、その場面が映っていたというのだ。

(参考記事:【画像】「ミサイル発射映像に炎に包まれる兵士」金正恩氏、目撃しながら大喜びか

RFAが当時、北朝鮮国内の複数の情報筋の話として伝えたところでは、北朝鮮の軍内部ではもちろん、テレビでこれを見た人々の間で衝撃が広がったという。ただ、件の映像は公開後すぐに再編集されたとかで、いま問題の場面を探し出すのは難しいという。

また、同年3月22日に弾道ミサイルの発射に失敗した際、発射する前の運搬中か、ミサイルを立てる段階で爆発したとされている。米国の北朝鮮分析サイト「38ノース」は、同月28日に撮影された、東海岸の元山(ウォンサン)にある葛麻(カルマ)空港の衛星写真を分析。その結果、ミサイル発射台に向かう2本目の滑走路において、110メートル大の爆発の跡が確認されたとした。

さらに、2016年10月20日にも、ムスダンと見られる中距離弾道ミサイルの発射実験が失敗に終わっており、このときには直後に起きた火災によって移動発射台が燃えたことがわかっている。

施設の破損を免れ、技術者たちもそのまま残っている以上、金正恩氏は飽くことなく打ち上げに挑戦し続けるだろう。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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