大物を逃し続けたパドレスが獲得したスラッガーは本物なのか。本塁打王は短縮シーズンのおかげ!?
サンディエゴ・パドレスが、ニューヨーク・ヤンキースからルーク・ボイトを獲得した。ボイトは、2020年の本塁打王だ。ポジションは一塁。パドレスでは、DHとして起用され、対戦する先発投手が左腕の場合は、左打者のエリック・ホズマーに代わって一塁を守るはずだ。
トレードは1対1。ボイトと交換に、パドレスはジャスティン・レンジを放出した。右投手のレンジは、2020年のドラフト全体34位。速球の最速は100マイルに達し、そこにスライダーとチェンジアップを交える。課題は制球だ。プロ1年目の昨シーズンは、ルーキーリーグで9試合に先発し、102人中29人から三振を奪ったものの、15人を四球で歩かせただけでなく、4人にぶつけ、暴投も7球を数えた。防御率は6.95だった。
今オフ、パドレスは、前・福岡ソフトバンク・ホークスのニック・マルティネスや前・阪神タイガースのロベルト・スアレスらを手に入れている。それに対し、野手の補強は進んでいなかった。
「41歳のDHが選んだのは、パドレスではなくナショナルズ。昨年は32本塁打。450本塁打まであと1本」で書いたように、MLB.comのマーク・フェインサンドは「クルーズの選択肢はドジャースとパドレスに絞られた」と報じたが、ネルソン・クルーズが入団したのは、ワシントン・ナショナルズだった。鈴木誠也(シカゴ・カブス)については、言うまでもない。また、USAトゥデイのボブ・ナイテンゲールによると、パドレスはフレディ・フリーマンを手に入れようとしていた。フリーマンは、パドレスと同地区のロサンゼルス・ドジャースに入団した。
その上、今月半ばには、左手首の骨折により、フェルナンド・タティースJr.が前半戦をほぼ棒に振ることが判明。パドレスがスラッガーを手に入れる必要性は、さらに増していた。
本塁打王を獲得した2020年に、ボイトは、56試合で22本のホームランを打った。この年、20本塁打以上の選手は、他には誰もいなかった。
ただ、ボイトは、シーズン25本塁打以上を記録したことがない。それどころか、2020年の22本が最も多い。その前の本数は、2017年が4本(62試合)、2018年が15本(47試合)、2019年が21本(118試合)。昨シーズンは、11本(68試合)だ。
各シーズンのホームラン1本当たりの打数は、28.5→9.5→20.4→9.7→19.4と推移している。例えば、昨シーズン、42本塁打のタティースJr.は11.4打数/本、46本塁打の大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)は11.7打数/本だった。このペースは、昨シーズンの各リーグ・トップだ(規定打席以上)。2018年と2020年のボイトは、それらを上回る。けれども、どちらのシーズンも、出場は60試合に満たない。加えて、昨シーズンは故障者リストに4度入ったことも懸念される。
ヤンキースは、今シーズンの一塁をボイトに任せるつもりはなく、昨年の夏にシカゴ・カブスから加わり、オフにFAとなったアンソニー・リゾーと再契約を交わした(「ヤンキースが手に入れた一塁手が、フリーマンでもオルソンでもなく、リゾーだった理由」)。この直後に、ボイトをパドレスへ放出した。
その一方で、こういう見方もできる。2020~21年のボイトは、計124試合で33本のホームランを打った。ペースは12.9打数/本だ。パドレスがボイトに望んでいるのは、この水準だろう。
ジ・アスレティックのデビッド・オブライエンによると、パドレスは、ホルヘ・ソレーアも手に入れようとしているという。ソレーアは、30歳の外野手だ。2019年に48本のホームランを打ち、本塁打王を獲得している。昨シーズンのホームランは、27本だった。
ソレーアを欲しているのは、パドレスだけではない。だが、契約できれば、ラインナップには2019年と2020年のア・リーグ本塁打王が揃い、おそらく、後半戦を迎える前には、2021年のナ・リーグ本塁打王、タティースJr.も戻ってくる。そうなると、相乗効果も期待できそうだ。