女子大生が泣き叫ぶ…北朝鮮「見せしめの刑」のエスカレーション
北朝鮮の相次ぐ挑発に、韓国が反発を強めている。統一省は先月31日、北朝鮮が汚物風船を大量に飛ばしたり弾道ミサイルを発射したりするのは「非常識な挑発」だと非難し、こうした行為を止めなければ「耐えられないようなあらゆる措置を取る」と警告した。
北朝鮮のキム・ガンイル国防次官は2日夜に出した談話で、風船を韓国に飛ばすことを暫定的に中断すると明らかにしたが、韓国側からのビラ散布があれば再開するとしており予断を許さない。
北朝鮮が「耐えられない措置」とは何があるだろうか。そもそも、脱北者団体が北に飛ばす政治宣伝ビラが耐えられないから、北はこうした行動に出ているわけだ。ほかにも、北が嫌がることは色々と考えられる。最たるものはやはり、韓流コンテンツなどの外部情報を大量に送り込むことだろう。
しかしこれは、北朝鮮国民への「負担」に転じる危険性がある。北朝鮮当局は、韓流コンテンツを視聴したり流布したりした人々への処罰の度合いを、ますます強めているからだ。
たとえば昨年3月、咸鏡北道(ハムギョンブクト)の清津(チョンジン)師範大学の学生6人が韓国映画を見ていた最中に、同級生の密告を受けた清津市安全部(警察署)により現行犯逮捕され、半年後に見せしめとして公開裁判にかけられた。
(参考記事:北朝鮮の15歳少女「見せしめ強制体験」の生々しい場面)
そして、2人には無期労働教化刑(無期懲役刑)が、残りの4人には10~15年の労働教化刑(懲役刑)が言い渡された。北朝鮮の法では本来、韓国映画などの単純所持や視聴は有期刑であり、広範囲に流通させた場合などにのみ死刑や無期刑となる。
この件は流通の事実が指摘されておらず、恣意的な政治的判断による「加重処罰」である可能性が高い。
判決を聞いた同じ大学の女子学生たちは、「彼らと二度と同じ道を進めなくなった」泣き叫んで悲しんだという。
韓国軍が韓流コンテンツの大量送り込みを作戦として展開すれば、北朝鮮当局にとっては相当に面倒なことになるかもしれない。しかしそうなれば、視聴した人々に対する処罰が強化されるのは火を見るよりも明らかだ。
ビラの大量散布も同様だ。たまたま拾ってしまった人や、回収作業に当たる兵士の中からも、そこに書かれた内容をつい口外してしまう人が出てくるだろう。そればバレた場合にも極刑となる可能性がある。
だからかどうかはわからないが、韓国政府は軍事境界線付近に設置した拡声器からの対北放送の再開を考えているようだ。これも北朝鮮が激しく嫌うもののひとつだ。だが、2015年には北が拡声器を銃撃するなどしたことで、軍事的緊張が激化した。今回もそうならないとは限らない。そして忘れてはならないのは、北朝鮮は当時とは異なり、核兵器を実戦配備している可能性が高いということだ。