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大型契約の1年目。期待に応えたのは、応えられなかったのは。セーブ王を獲得したクローザーは期待外れ!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
ウェイド・デービス(コロラド・ロッキーズ)Aug 19, 2018(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 昨オフにFAとなった選手のうち、ダルビッシュ有(シカゴ・カブス)ら8人は総額5000万ドル以上の契約を得た。

筆者作成
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 彼らのなかで、文句なしの契約1年目だったのは、J.D.マルティネス(ボストン・レッドソックス)だ。前年に続いて40本塁打以上を放ったのに加え、打率と出塁率は25ポイント以上のアップ(.303/.376→.330/.402)。ポストシーズンの14試合でも、打率.300、出塁率.403、3本塁打を記録した。レギュラーシーズンの130打点とポストシーズンの14打点は、どちらも全選手最多。打点を挙げる機会に恵まれたことも要因だが、得点圏打率はレギュラーシーズンが.386、ポストシーズンは.462と高かった。ワールドシリーズ優勝と併せて考えると、1シーズンで総額1億1000万ドルの3分の1相当、もしくはそれ以上の働きをしたのではないだろうか。

 J.D.ほどではないにせよ、ロレンゾ・ケイン(ミルウォーキー・ブルワーズ)も上々の1年目を過ごした。トレードで加入したクリスチャン・イェリッチとともに、1・2番コンビとしてチームをポストシーズンへ牽引した。打率.308&出塁率.395の打撃だけでなく、センターの守備では両リーグ・ベストのDRS+20を記録。自己最多となる30盗塁も決めた。

 一方、エリック・ホズマー(サンディエゴ・パドレス)とアレックス・カッブ(ボルティモア・オリオールズ)の成績は、前年から大きく下降した。ホズマーは「最も打率が上がった選手、最も打率が下がった選手。ア・リーグ首位打者は上昇幅もトップ。前年と同じは2人」、カッブは「最も防御率が下がった投手、最も上がった投手。前年から1点以上悪化した6投手中3人はチームメイト」で書いたとおりだ。

 フィラデルフィア・フィリーズと契約した2人も成績を落としたが、どちらも過去2年と同じく、ジェイク・アリエタは防御率3点台、カルロス・サンタナは20本塁打以上を記録した。ただ、アリエタの防御率は3年続けて悪化している上、過去4年とも8.65以上だった奪三振率は7.19へ急降下した。年齢による衰えの兆候なのか、懸念されるところだ。サンタナは110四球からわかるように、抜群の選球眼も健在。フィリーズは外野の守備に難のあるリース・ホスキンスに一塁を守らせたいようで、サンタナにはトレードの噂が浮上している。来シーズンは、違うユニフォームを着ているかもしれない。

 ダルビッシュも不本意な契約1年目となったが、こちらは故障によるものだ。奪三振率11.04は、前年までの通算とほぼ変わっていない。

 ウェイド・デービス(コロラド・ロッキーズ)は43セーブを挙げ、初のタイトルを獲得した。もっとも、防御率は前年の2.30から4.13へ。打者天国のクアーズ・フィールド以外でも、防御率は3.55だった。さらに、87.8%のセーブ成功率は決して悪くないものの、前年と比べると10%近くダウンした。年平均1733万ドルは、アロルディス・チャップマン(ニューヨーク・ヤンキース)の1720万ドル(5年8600万ドル/2017~21年)を上回り、リリーフ投手史上最高額であることからすると、期待どおりの契約1年目とは言い難い。2018年の最終登板となったディビジョン・シリーズ第3戦では、登板時点で4点リードされていたとはいえ、いきなりホームランを2本続けて打たれ、チームの敗退を決定づけた。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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