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大谷翔平からメジャーリーグを観ようと思っている人へ【その4】クオリティ・スタート(QS)について

宇根夏樹ベースボール・ライター
ダルビッシュ有 Aug 10, 2017(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 先発投手が6イニング以上を投げ、自責点3以下に抑える。これがクオリティ・スタート(QS)だ。ざっくり言うと、一定のクオリティ(質)以上の働きをしたという意味を持つ。

 よく訊ねられるのが、6イニングを投げ終えた時点では自責点3以下ながら、7回以降も投げて自責点が4以上となった場合だ。これはQSではない。他にも、降板した時点ではQSの可能性を残していても、残っていた走者をリリーフ投手が生還させ、先発投手に自責点がついて、QSではなくなることもある。

 例えば、田中将大(ニューヨーク・ヤンキース)は昨年5月2日の試合で、6イニングを投げ終えた時点では自責点2だった。7回表は先頭打者にホームランを打たれたが、それでも自責点は3。ここで降板すれば、QSが記録された。ホームランなので走者は残っておらず、降板後に田中の自責点が増えることはない。

 ところが、田中は続く打者こそ討ち取ったものの、その次の打者にヒットを打たれ、1死一塁としたところでマウンドを降りた。この時点で、QSかそうでないかは、引き継いだ投手次第となった。結局、田中が残した走者をリリーフ投手が生還させ、田中の自責点は3から4に増えてQSではなくなった。

 一方、リリーフ投手のおかげと呼んでもおかしくないようなQSも存在する。田中は昨年4月14日に先発した時、7回1死二、三塁の場面で降板した。この時点で自責点は3。さらに増えそうな気配だった。だが、リリーフ投手は走者をまったく進ませずにイニングを終え、田中にはQSが記録された。

 また、上に挙げた2試合とも田中は白星を手にしたが、QSは勝敗を問わない。田中とダルビッシュ有(当時テキサス・レンジャーズ)が投げ合った昨年6月23日の試合のように、両チームの先発投手が揃ってQSを記録することもある。田中は8イニング、ダルビッシュは7イニングを投げて、どちらも無失点。自責点0で失点1以上はあるが、失点が0なら自責点も0だ。2人には、白星も黒星もつかなかった(試合はヤンキースが2対1で勝った)。

 昨シーズン、田中のQSは30先発のうち17試合。ダルビッシュはレンジャーズとロサンゼルス・ドジャースの計31先発中、19試合でQSを記録した。最多QSは、ジャスティン・バーランダー(デトロイト・タイガース/ヒューストン・アストロズ)とクリス・セール(ボストン・レッドソックス)の23試合。田中とダルビッシュのQS率(QS/先発)はそれぞれ56.7%と61.3%で、メジャーリーグ全体の43.6%を上回り、20先発以上の20位と37位タイに位置した。QS率70%以上は6投手。コリー・クルーバー(クリーブランド・インディアンズ)の75.9%(22/29)が最も高かった。

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ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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